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  • 2024/12/09 掲載

AGI(汎用人工知能)とは何かを解説、従来型AIとの違いや法規制の必要性とは

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ChatGPTをはじめ、昨今はAI(人工知能)が身近な存在になりつつある。現在はAGI(汎用人工知能)にも注目が集まっているが、従来のAIと何が違うのか。AGIにより、世界はどう変わるのか。本記事では、AGIの基本情報をはじめAGIの能力によって何が期待されるか、また社会にどのような影響を与えるかについて、起業家・AIエンジニアの安野 貴博氏の解説と合わせて紹介する。
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AGIとは何かを安野氏の解説と併せて紹介する

AGI(Artificial General Intelligence)とは何か?

 AGIとは「Artificial General Intelligence」の略で、定義は諸説あるが、自己学習を繰り返しながら成長する、人間のような汎用的な知能を持つ人工知能を指す。いわばAIの発展形であり、知能水準は人間と同等、もしくはそれ以上とも言われている。

 では、AGIの特徴や従来のAIとの違いについて見ていこう。

■汎用的な知能を持つ人工知能
 AGIには、3つの特徴がある。1つ目は、汎用性の高さだ。

 従来のAIは、特定のタスクを処理する能力に長けていた。AGIは特定の領域に特化していない代わりに、多種多様なタスクや問題に対応できる能力を有しており、活躍できる場面が多い点が特徴だ。

 2つ目は、学習能力と適応力にある。従来のAIは、あらかじめラーニングした範囲でしか成長できなかったが、AGIは自主的に学習ができる。また、取得した情報やデータをもとに自己進化もできるため、変化する環境に適応する能力が高い。

AGIとASIについて、安野氏が動画でも詳しく解説しています

 3つ目は、判断と意思決定能力だ。自律思考や状況判断が可能なAGIは、人間が介入せずともスムーズに作業を進められる。将来的には、人間の労働時間を減らす、アシスタントとして従業員の仕事を手伝うなどの活躍も期待できるだろう。

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AGIは自主的に学習ができる
(Photo/Shutterstock.com)

■AGIとAI、ASIの違い
 AGIと混同されがちな存在として、AIやASI(人工超知能)の2つが挙げられる。両者はどちらも人工知能に分類されるものの、詳細は異なっている。

 AGI・AI・ASIの具体的な違いは、下図のとおりだ。

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AGIとAI、ASIの違い
(出典:各種資料をもとにビジネス+IT編集部作成)

 安野氏によると、ASIとAGIに大きな違いはないとしつつも「AGIが人間並みの知能を持つとされるのに対し、ASIは人間を超える知能を有するとされます。つまり、AGIよりもさらに高度な能力を持つ存在としてASIは定義づけられています」という。

強いAIと弱いAI

 AIは、強いAIと弱いAIに区分けされることもある。主に人間のような知能レベルを有するか否かが判断基準だが、より詳細な両者の違いについて以下で解説しよう。

■強いAI
 強いAIとは、人間と同等の知能や認知力を有しているAIを意味する。人間のような学習能力があるため、自発的に行動、学習し、知識と経験を蓄積することが可能だ。また、高い判断力があり、物理的な作業を含むさまざまなタスクをこなせる。

 そして感情を理解できる点も、強いAIの特徴だ。具体的には、第三者の表情から相手が悲しんでいるのか、それとも怒っているのか判断し、相手の感情に寄り添った適切な対応を選択できる。鉄腕アトムをはじめとする、フィクションの世界のロボットをイメージするとわかりやすいだろう。

■弱いAI
 弱いAIとは、人間のように自発的な行動を起こす意識や感情を有していないAIのことだ。会話型AIサービスであるChatGPTや、チェス専用プログラムであるディープ・ブルーなど、これまでに登場したAIが該当する。知能や認知力が人間に劣り、あらかじめプログラミングされた範囲でしかラーニングをしないため、汎用性が高いとはいえない。

 また、強いAIと異なり、人間の感情も理解できない。ChatGPTをはじめとする対話型チャットボットも、相手の感情を理解しながら会話しているように見えるが、あらかじめ取り込んだデータからそれらしい反応を返しているだけである。事実、ChatGPTと対話をしていると、こちらの発言の意図をまったくくみ取れていない返事をもらうことも少なくない。

 将来強いAIが実現された場合、弱いAIの役割も担う可能性が高いと言えるだろう。

AGIを構成する3つの要素

 残念ながらAGIは、今のところ実現にいたっていない。AGIを実現するためには、機械学習と認知アーキテクチャー、そして認知ロボティクスの発展が不可欠である。

 機械学習とは、コンピューターが自動で学習し、ルールやパターンを発見する手法だ。機械学習の中でも、AGIの学習では深層学習と強化学習の2種類が用いられる。

 深層学習は、ディープラーニングとも呼ばれる機械学習の手法だ。深層学習を実施する場合、大量のデータを用意する必要がある。

 たとえば、自動運転が可能な車を開発するためには、複数の種類の静止画を数百万枚、運転中の動画を数千時間分用意しなければならない。また、膨大な量のデータを処理する関係上、高度なコンピューターの処理能力も必要不可欠である。

 一方の強化学習は、AI自身がトライアンドエラーを繰り返し、精度を高める学習方法だ。深層学習と異なり、環境さえ用意できれば、データが不足していても実施できる。そして、状況に適した行動を学ぶため、人間らしい思考や行動パターンの獲得が可能だ。

 次に認知アーキテクチャーとは、人間の総合的な認知機能をモデル化したものだ。AGIを実現するには、人間が物事を認知する仕組みを学習させなければならない。知覚・感情・運動制御などのプロセスを統合した認知機能を構築することで、AGIの特徴である人間らしい意思決定や思考法を実現できる。

 人間の認知の仕組みを学習させる方法には、記号主義的なアプローチと分散表象的なアプローチ、そして両者の折衷的なアプローチの3種類が挙げられる。記号主義的なアプローチは、プログラミング言語を用いるのが特徴だ。プログラムコード内にある、外界のものごとを表す「記号」を操作することによって、知能を実現する。

 一方の分散表象的なアプローチは、ベクトルを用いる方法である。神経回路網からヒントを得たコネクショニストアーキテクチャーは、このアプローチの典型例だ。

 最後、認知ロボティクスとは、ロボットや計算モデルによるシミュレーションを駆使して人間の思考を学び、周囲の環境を理解することを指す。人間は生まれてから幼児期に、外界のものを認識して行動する能力や、言語を話し理解する能力を獲得する。

 一方のAIは、人間のような認知の発達はほとんど実現できておらず、現状はあらかじめプログラミングされたデータをもとに擬似的な反応を返すのがせいぜいである。認知ロボティクスが発展し、将来的に人間との自然な対話や協調性を獲得できれば、より人間らしい知能や人間と共生する自律的な行動能力の実現が可能だ。

 認知プロセスを獲得するためのアプローチの手段はさまざまで、外部環境からのセンサー情報の解釈、行動の選択と実行、そして目標設定および計画実行能力などが挙げられる。 【次ページ】AGIの登場で期待されること
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