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政府はこれまで補助金などの莫大(ばくだい)な税金を投入し、大学など研究機関の設備整備などをサポートしてきましたが、勢いの目立つ他国と比べ、日本の研究力はパッとしません。2023年の技術革新指数は世界13位という結果でした。なぜ、さえない研究開発状況が続いているのでしょうか。
技術革新指数は世界13位、パッとしない日本の現状
次の世代に我が国のかせぎ頭となる事業・産業を生み出すようなイノベーション。確実に生み出す魔法はこの世に存在しないものの、技術革新を目指すことができる環境と人材が存在しなければ、何も始まりません。
政府は競争的資金制度、拠点形成支援制度などさまざまな政策を通じて、研究開発に必要な設備の購入、更新を含めた環境整備をサポートしてきました。
莫大な国費が投じられたにもかかわらず、残念ながら、日本の研究開発の動向を世界中が注目しているとはいえない現状です。国連の世界知的所有権機関(WIPO)が公表した2023年の技術革新指数は、世界13位。「創造的な成果」などの項目で低得点が目立つ結果となっています。
さえない研究開発状況が続いているワケ
なぜ、この国の研究開発はさえない状況が続いているのでしょうか。有識者会議(文科省設置の
科学技術・学術審議会「人材委員会」)が「
シン・ニッポンイノベーション人材戦略」として取りまとめた報告書をもとに、日本の研究力の現状と課題、今後の展望を探ってみましょう。
背景を探ると、問題は設備不足というよりむしろヒトの育成のほうにあるようです。国は最近、第一線で活躍する博士人材の不足を問題視しています。
もちろんドクターという肩書を持っているからといって、イノベーションにつながる研究が必ずできるかは分かりません。反対に、博士や修士などといった肩書を持っているかにかかわらず、柔軟な発想で技術革新を生み出す人材が現れることはあります。
とはいえ、研究の世界に腰を据えて打ち込んでいる人がこの国にどれくらいいるのか、それを考える際、博士人材の頭数は1つの便利なものさしといえるでしょう。
国の調べでは、博士課程修了者の頭数(2021年度)は1万6000人ほどに上ります(図表1)。
それほど少ない人数ではないようにも思えますが、大事なのは博士課程を取った人材がその後、どのような道を進んでいるかです。ポスドクに進むのは10%(1500人)、大学教職員になるのが15%(2500人)。一方、民間企業や公的機関に移るのは33%。そのうち4割近くは、研究開発職以外の仕事に就いています。
また、修士課程修了者(2021年度)の動向に目を向けると、博士課程への進学者は10%に満たない水準です。民間企業・公的機関などへの就職が大半を占め、そのうち、研究開発職についているのは3割程度にとどまります。
つまり、修士課程修了者が博士課程に進むこと自体が珍しいケースになってしまっていて、せっかく博士課程を修了しても、一定割合が研究の場から離れいってしまう……そんな、二重の「宝の持ち腐れ」状態が生じているというのが実状なのです。
では、なぜ、修士課程を終えた多くの学生が、博士に進む道から外れてしまうのでしょうか。
【次ページ】なぜ博士課程は不人気?学生のシビアな本音
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