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- 2024/06/27 掲載
たった10年で漁獲高が半分に…サケ漁“日本一”北海道斜里町による「絶望からの逆襲」
サケ漁「日本一」を誇る斜里町
斜里町の漁業は1790年(寛政2年)より始まったとされる。2023年の漁獲高(金額ベース)は61億円、このうち約51億円をサケ・マス漁が占める。
斜里第一漁業協同組合 総務管理部長の前川 裕也氏は「サケの水揚げ量は2003年に2万トンを超えるなど、18年連続で漁獲高日本一を続けてきました」と話す。2021年に連続日本一の記録が途絶えたものの、2022年、2023年は再び日本一となっている。
同組合は、組合員として163名の漁師が所属、サケ定置網の漁業法人として計15法人が所属している。漁場から水揚げされた魚は、規格ごとに選別され、北海道漁連と共同販売という形で、斜里市場にて買受人に販売され、北海道をはじめ全国に流通されている。
しかし、日本各地で一次産業が衰退しているように、斜里町も課題が山積し、難しい局面に立たされている。
選別は「ほぼ手作業」…漁業が抱える3つの課題
まず「手作業による煩雑な選別作業」が挙げられる。前川氏は、「サケ・マス漁では基本的に選別作業を漁業者自ら行います」と説明。1つの漁船で何十トンもの漁獲量があるが、「1トンずつ入るタンクに集約した上で、水揚げの量を計測します。そして市場での入札、販売を経て仲買人がトラックに積み込みますが、これらの一連の作業は、すべて手作業です」。加えて、選別する量の多さも問題だ。1隻で30トン、40トンと水揚げされる中で「40トンの船で1~2時間を要する作業」(前川氏)が繰り返されることになる。定置網の中にはサケのほかにも、ブリやフグといった別の魚種が混獲されるケースがあり、より選別作業に時間を要することになる。
しかし、「選別はスピードの速さが求められ、別の魚種も紛れるといった要因もあって、現状は機械化が難しい領域」とのことだ。
このような労働集約的な作業が多い中で、人材確保の難しさも課題として挙げられる。
「水産白書」(令和3年度)によれば漁業就業者数は全国的に減少傾向にあり、新規漁業就業者数も2019年が1729人、2020年は1707人と減少傾向にある。同白書では、「漁業は歴史的に、家業で子供が後を継いできた構造があった」とした上で、今後は漁業に関心を持つ都市部出身者を担い手として確保、育成する重要性について指摘している。
一方で、前川氏は「実際には漁業者の確保は依然として難しく、斜里町では若い層の就業はあるのですが、増えているとは言えない状況です」と話す。
それだけでない。物流面の課題もある。市場で仲買人が購入した魚を積載、輸送するトラックは、仲買人自身が手配している。しかし物流の2024年問題をはじめ、トラック不足が顕著となっている。
「斜里町の基幹産業には漁業の他に農業があります。計画的に収穫が見込まれる農業に対し、漁業はどれだけの漁獲高があるか、市場で魚を購入するまで事前に把握する術がありません。そのため、事前にトラックを手配できず、農業に先にトラックを確保されてしまうケースが多くあります」(前川氏)
これらの課題は早急に解決しなければならないことではあるが、中でも大きな問題として捉えられているのが、漁獲高の減少だ。
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