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生成AIの活用が急速に進み、身近なテキスト、画像、音楽などの生成からビジネスプロセスの革新まで、幅広い分野で利用されている。具体的に生成AIは企業において、どのように活用されているのだろうか。その活用事例と今後の展望について、NRI AIコンサルティング部 シニアコンサルタント 橘 優太朗氏、NRIデジタル エキスパートデータサイエンティスト 松崎 陽子氏、Google Cloud AI事業本部 執行役 事業本部長 橋口 剛氏が語った。
執筆:ビジネス+IT編集部 玉田萌、撮影:濱谷幸江
執筆:ビジネス+IT編集部 玉田萌、撮影:濱谷幸江
本記事は2024年4月24日-26日に開催された「Japan IT Week 春」の講演内容をもとに再構成したものです
生成AIブームの現在地
1950年代から始まる人工知能の発展は、2020年代に入り第4次ブームを迎えている。
それぞれの年代を振り返ると、1950年以降の第1次ブームでは、人工知能が登場。人間が決めたルールに従い、人間と同様のタスクを遂行した。1980年以降の第2次ブームでは、人が定義した特徴から機械が結果を判別・予測する機械学習、2010年以降の第3次ブームでは、機械が特徴を定義し判別・予測する深層学習が登場した。
「2020年以降の第4次ブームでは、機械が独自のアウトプットを生成する生成AIが台頭しています。生成AIは汎用(はんよう)性が極めて高いため、市場からの支持率・期待値が高いです」(橘氏)
モルガンスタンレー、大和証券…企業における生成AI導入状況
日本企業における生成AIの導入状況は、特に大企業を中心に活用が進んでおり、大企業における導入率は25%に達している。将来的な導入割合は、RPAと同等レベルとなる見込みだという。
生成AIを利用することで、非構造化データの有効活用や業務の自動化、効率化が見込まれる。社内データの大半は画像・文章等の非構造化データであり、活用価値は極めて大きい。
また、平均で現状業務の25%が自動化・効率化の対象となる。生成AI活用のインパクトが特に大きい業種はソフトウエアエンジニア、マーケティング、営業の3種。実際、企業が生成AIを活用することで、生産性は平均40%向上するというデータもある。
実際の企業の導入事例は以下のとおりさまざまだ。
- モルガンスタンレー:GPT-4を活用したファイナンシャルアドバイザー向けQAチャットボットの開発。
- 大和証券:音声データから要約を生成するAI「Speech2Summary」の開発。
- メルセデス・ベンツ:GitHub Copilotを導入し、ソフトウェア開発の品質向上。
- 伊藤園:「お~いお茶 カテキン緑茶」のパッケージリニューアルデザインに生成AIを活用。
- Toyota Research Institute:工学的制約を考慮した車両デザインツールの開発。
- NRI:1万人アンケートの集計・分析・示唆抽出ツールの開発。
今後1~2年で業務に生成AIが自然に溶け込んでいないと他社に劣後するという。この波に乗り遅れてはいけないだろう。
生成AIモデルの1つであるClaude3がIQテストで人間の平均値であるスコア100を超えたという報告もあり、いわゆる"シンギュラリティ"の到来がこれまで想定されていた2045年より大幅に早く訪れる可能性がある点も注意だ。
言語モデルを組み込んだアプリケーション開発の現在
続いて、大規模言語モデル(LLM)を活用したアプリケーション開発の未来について見ていこう。
LLMの技術は、試験的な段階から実用段階へと進化している。LLMは多岐にわたる知識を持ち、さまざまな質問に応答できる特性を持つ。しかし、その知識は英語中心の学習データに限定されるため、日本固有の知識に弱い上、最新の情報を反映できない。
「また、ハルシネーション(誤った情報の生成)というもっともらしい誤りを生成してしまう現象も起こりえます。LLMが得意とする部分を理解し、どのような指示だしをするとうまくいくかを考えることが重要です」(松崎氏)
さらに、ルールの整備がされていないまま社員が勝手にLLMを使うことで、機密状況の流出につながりかねない。機密情報の流出を防ぐための対策が必要だろう。
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