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動画ストリーミングDisney+の不調や新作映画の不発で、過去2年ほど低調であった米ウォルト・ディズニー・カンパニー。ここにきて、業績が好転し始めた。2期目のCEOを務める同社の総帥ボブ・アイガー氏は自身の2026年末までの任期中で、4本柱の施策を進めてディズニーの「完全復活」を目指す。ウォール街にもウケが良いこれらの改革で、この先10年のディズニーはどのような企業に変貌するのだろうか。
1.1兆円のコスト削減などで「危機を脱した」
東京ディズニーランドなどを運営するオリエンタルランドが絶好調だ。2023年10~12月期の売上は前年同期比32.8%増の4,462億円、営業利益に至っては65.4%アップの1,416億円で、日本企業の中でも群を抜く
強さである。2024年1~3月期も大幅にアナリスト予想を超過する業績になると期待されている。
一方、本国の米ディズニーは、ボブ・チャペック前CEOによる無理なDisney+拡大路線が年間数十億ドル規模の大赤字を生んでいた。2023年10~12月期も売上が235億ドル(約3.5兆円)と前年同期比横ばいで、市場予想の236億ドルを下回っている。だが、事業全体では同(第1)四半期に5億ドル(約750億円)のコスト削減を達成し、2024年9月期(通期)中のコスト削減目標である75億ドル(約1.1兆円)を超過達成できる見込みという。
またディズニーの経営陣は半期の配当を50%増やす一方で、2024年9月期中に30億ドル(約4,500億円)の自社株買いを、2025年9月期にはさらに追加で30億ドルの自社株買いを
承認するなど、業績回復の果実を株主に還元している。自社株の買い戻しは2018年以来、初めてのことだ。
こうした復調を受けて、一時は80ドル近辺で低迷していた株価は決算発表直後に一気に110ドル辺りまで戻しており、投資家の信頼が戻っていることを裏付けている(図1)。
アイガーCEOは決算発表で、「弊社は危機を脱した(turned the corner)」との
見解を示した。
モノ言う投資家から受け続ける「圧力」
実は同社は、アクティビスト(モノ言う投資家)であるネルソン・ペルツ氏が率いるトライアン・ファンド・マネジメントや、ブラックウェルズ・キャピタルから、会社立て直しのためにテーマパーク・ホテル不動産をスピンオフ(分離)させることと、組織をスポーツ、娯楽、リゾートの3会社に分割することを
要求されてきた。
事実、ディズニーの不動産は775億ドル(約11.5兆円)の
価値があり、同社の株式時価総額の44%に相当する。
これに加えて、トライアンとブラックウェルズはそれぞれ自社が推薦する2~3人の取締役を選任して改革を進めるよう迫っている。対するディズニーのアイガーCEOは会社分割と不動産分離を拒絶しており、現在の組織と資産を維持したまま株主に報いることができると主張してきた。
そのため、株価を急上昇させた2023年10~12月期の好調と増配・自社株買いは、モノ言う投資家を一時的にでもはね返す効果があったわけだ。「危機を脱した」というアイガーCEOの見方は、その側面も反映していると見られる。
しかし、ペルツ氏らモノ言う投資家は、要求の攻勢を緩めたわけではない。アイガーCEOは2026年末までの任期中にさらなる結果を出して、ディズニーの組織形態を守る課題を背負っている。
では、モノ言う投資家の圧力をかわし、ディズニーの組織を現在の形で残すために、アイガーCEOは具体的にどのような手を打っているのだろうか。
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