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- 2024/01/17 掲載
「AIにより仕事が奪われる」の大誤解、複数の実験結果からわかる真実とは
機械化・AI化によって「仕事が奪われる」とは限らない
私は「AIによって仕事が奪われる」という表現はしないことにしています。議論しているのは、特定の職業がAIの影響を受けやすいか、受けにくいかというものです。ここでは「機械化による影響を受ける」という事象についてもう少し詳しく考察していきます。生成AIなどの技術による労働への影響を考える場合、その技術が「労働補完型」の技術なのか、「労働置換型」の技術なのか、分けて考える必要があります。
労働補完型の技術とは、人間の労働を補助し、その労働自体を楽にしたり、生産性を上げたり、新しい仕事を生み出すきっかけになるような技術です。一方の労働置換型の技術とは、文字通り人間の労働を完全に置き換え、人間が介在する余地をなくしてしまうような技術です。
労働がある技術の影響を受ける場合、その技術が労働補完型であれば、単純に現在の仕事を奪われるという事態にはなりません。むしろ、その技術によって労働が効率化され、賃金が上昇する可能性があります。仮に現在の労働がほとんど機械に置き換わってしまった場合でも、その技術自体が新たな労働を生み出すことで、そのマイナスの影響を打ち消すことができます。
第二次産業革命で登場した電気や、それを応用した大量生産技術などは労働補完型の技術であったとされ、実際に当時の雇用は増え、賃金も上昇したという研究結果が出ています。
逆に、産業革命初期に登場した紡績機、力織機などは労働置換技術であったとされ、スキルを持った労働者が不必要になり、そのような労働者が就ける代わりの仕事も生み出さなかったようです。
なお、この労働補完型か労働置換型かという議論は、あくまでも影響を受ける労働者の視点からの問題となります。どちらの技術であっても、最終的に産業発展が起きれば、それらの技術を採用した資本家や後世の人間は、その発展の利益を享受できます。初期の産業革命で生まれた技術はほとんど労働置換型でしたが、人類の産業の発展という観点で見ると、すさまじい恩恵をもたらしました。
生成AIは労働補完型か? 労働置換型か?
それでは生成AIは労働補完型の技術なのでしょうか。それとも労働置換型の技術なのでしょうか。実は、その技術がどちらであるかは、技術そのものだけを見てもわかりません。仕事の一部を自動化するのは補完型/置換型のどちらでも同じですが、人間が介在する余地が残るかどうかは、その仕事の元々の複雑さに依存します。元の仕事が一定以上複雑な場合、技術を投入しても、その技術自体をコントロールする人材や最終的な出力を責任を持って選択する人材は、依然として必要です。
現時点では、研究者の間でも意見が分かれています。どちらかというと、生成AIは労働補完型の技術であり、既存の労働をより生産的に、より快適で質が高いものにするという説が多い印象です。
ただし、完全に今の雇用が維持されるという楽観的な考えもまた少ないようです。新たなスキル獲得に向けた教育の提供や、雇用が失われた場合のセーフティネットの整備など、社会的、政治的な取り組みの必要性が強調されています。 【次ページ】生成AIによる影響を示す複数の実験結果
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