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ChatGPTの登場を皮切りに、さまざまなジェネレーティブAI(生成AI)が登場している。これに伴い雇用への影響を懸念する声も日に日に高まっているが、現在はこの問題に関して専門家の間でも断定的な意見は出されていない。生成AIが人間の雇用を奪うのか、それとも補完する存在となるのか。最新の調査レポートをもとに、現状と今後の展望を探ってみたい。
ChatGPTの導入による労働市場への影響
ChatGPT人気を追い風に生成AIブームが到来しているが、これに伴い雇用への影響に関心が集まっている。雇用が影響を受けるのは明白だが、人間の仕事を奪ってしまうのかどうかは、現時点では分からず、さまざまな意見が飛び交っている状況だ。
これまでのところ、生成AIと雇用に関連してどのようなことが分かっているのか、いくつか主要な調査レポートで判明したことをまとめてみたい。
まずは、OpenAIとペンシルベニア大学の研究者らが3月27日に発表したワーキングペーパーで明らかになったChatGPTが米国労働市場にもたらす影響について。これは「GPTs are GPTs: An Early Look at the Labor Market Impact Potential of Large Language Models」と題された
報告書 で、ChatGPTが各職種のタスクをどれほどの割合、対応できるのかを分析したものだ。
分析の結果、約80%の米国労働者が、ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)の導入によって少なくとも10%のタスクで影響を受ける可能性が判明した。また、現在のモデルの能力を考慮すると、労働者の約19%が少なくとも50%のタスクで影響を受けることも示された。
この調査では、各職種におけるタスクに対し、ChatGPT(GPT-4)がどれほど対応できるのかを調べ、それらを「exposure(露出度)」として数値化している。この数字が高ければ高いほど置き換え可能という意味になる。
置き換え可能性「100%」の職業とは?
露出度が高い職業としては、通訳・翻訳(exposureレベル=76.5~82.4%)、調査研究者(75~84.4%)、詩人・作詞家・創作作家(68.8%)、動物科学者(66.7~77.8%)、広報スペシャリスト(66.7~80.6%)、作家・著者(82.5%)が挙げられた。
また、「fully exposed」とされる、露出度が100%の職業もピックアップされている。このグループに含まれるのは、数学者、税理士、金融クオンツアナリスト、ウェブ・デジタルインターフェースデザイナー、会計士・監査役、報道アナリスト・レポーター・ジャーナリスト、法務秘書・事務補佐、臨床データ管理者、気候変動政策アナリストなど。一方、運転手や農業機械オペレーター、ガラス取り付け業などでは、露出がないことが明らかになった。
全体的に、GPTの影響はすべての賃金水準の職業に及び、高収入の職業ほど露出度が高いことも判明した。なお、ワーキングペーパーでは、これらの職種は、
GPT-4 およびGPT-4を利用したソフトウェアによって労働者が多くの時間を節約できると推定される職種であり、GPT技術によって完全に自動化される可能性があるとは限らないと指摘している。大規模言語モデルへの露出の増加によって、どのような仕事が失われるかに関する評価は実施していない。
このOpenAIとペンシルベニア大学による調査結果を受け、さっそく専門家らからの意見が寄せられている。
Fortuneは、マサチューセッツ工科大学の労働経済学者ダロン・アセモグル氏の声を
紹介 。アセモグル氏は「(OpenAIとペンシルベニア大学の研究者らによる)新しいワーキングペーパーの予測は合理的であるが、もちろん、誰も未来を予測することはできない」と述べた。その上で、「過去における特定のタスクの自動化では、自動化推進者らが望んだほど生産性は向上しなかった。大規模言語モデルが、より優れた仕事を遂行できるのかどうかは、今後注視する必要がある」と、予測に対してやや否定的な意見を展開した。一方、過去に自動化されたタスクを専門としていた労働者の賃金が抑えられたのも事実であると付け加えている。
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