- 2006/06/19 掲載
【連載】ITと企業戦略の関係を考える[最終回/全5回](3/3)

ITケイパビリティの重要性
これは、「ITケイパビリティ」の問題である。ITケイパビリティとはITを使いこなす能力であり、ITあるいはITそのものに関連する資源、ITを活用する人に関する資源、ITを活用する組織に関する資源の3つの構成要素に分解できる。
カーが主張するようにITそれ自身とその利用方法は、標準化されコモディティ化し、誰でも容易に入手できるので、問題は人と組織に関する資源である。ITを活用できるスキルを持った技術者とITとその活用方法を理解している経営者がいて、組織の構造や企業文化がITを活かせるものであることが重要なのである。こうした人的・組織的資源は模倣が困難であることを考えると、ITケイパビリティは競争優位の源泉になりうる。
まとめ
ニコラス・G・カーが2003年5月に”IT doesn’t Matter”という論文を発表してから、企業におけるITの価値について活発な議論が巻き起こった。反論の中にはカーがITの必要性を否定したとの誤解もあったが、カーが言いたかったことは「ITは、技術的成熟にあわせて誰でも入手可能なものになりつつあり、持続的競争優位の源泉にはなりえない」ということであり、最近の企業戦略論からみて、それほど突飛なものではない。
カーは、ITの利用方法についてもソフトウェアの中に埋め込まれるようになっており、利用方法も含めてITはコモディティ化していると述べているが、ITを実際にビジネスや経営に活用する能力(ITケイパビリティ)は、企業の抱える人材や組織形態、企業のカルチャーに依存しており、これは簡単に模倣できるものではない。つまり、ソフトウェアを含めたITはどんな企業でも容易に入手可能なものとなっているが、それを十分に使いこなせるかどうかは、個々の企業によって大きな差があると考えられる。このITを活用できる組織能力こそが競争優位の源泉の一つとして重要になっているのである。
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