• 2006/06/19 掲載

【連載】ITと企業戦略の関係を考える[最終回/全5回]

ITケイパビリティの重要性

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過去4回にわたり、「ITは基盤技術でありコモディティ化が進んでいるので、もはや持続的な競争優位の源泉にはらならない」というニコラス・カーの主張を吟味してきた。この最終回ではITを企業戦略に活かすために必要な要素を考えてみたい。
【知識・知財】富士通総研 前川徹氏

1978年 3月、名古屋工業大学情報工学科卒、
同年に通産省に入省、機械情報産業局情報政策企画室長、
JETRO New York センター産業用電子機器部長、
情報処理振興事業協会(IPA)セキュリティセンター所長、
早稲田大学 大学院 国際情報通信研究科客員教授などを経て
2003年9月から株式会社 富士通総研 経済研究所主任研究員。

おもな著書として、『ネットバブルの向こう側 ECビジネスの未来戦略』
『ソフトウェア最前線』(ともに(株)アスペクト)などがある。



ITに戦略的価値はまったくないのか

 ITそのものが競争優位の源泉にはなり得ないからと言って、直ちにITには競争戦略上の価値がないと結論することはできない。ITは、競争戦略を実行に移す際に必要な道具の一つだからである。

 カーに対する反論の中にも、ITの価値は利用方法によって異なってくることを指摘するものがある。たとえば、ジョン・シーリー・ブラウンとジョン・ヘーゲル 3世は、ITをテコとして新しいビジネス手法を生み出そうと徹底的に考える企業経営者が少ないから、ITがコモディティとしてみなされるようになったのだと主張し、「差別化は、ITそのものにあるのではなく、それによって可能となる新しいビジネス手法にある。とはいえ、ITなくしてそれは不可能なのである」と述べている。

 しかし、カーは論文の中で、ITシステムと密接に関係したプロセスは、ITがコモディティ化し、標準化されるにつれて、ライバル企業に模倣されやすいものになるという議論を展開している。また、著書 ”Does IT Matter” の中では「論文に寄せられたコメントの中には、ITそのものが競争優位の源泉ではなく、ITの使い方にこそ競争優位の源泉があるのだという意見がある。」と書いた上で、アメリカン航空のSabreの例を再び取り上げ、差別化につながるどのようなITの利用方法であっても、ライバル企業にコピーされてしまう運命にあるだけでなく、ライバルはより進んだシステムを導入することになると指摘している。

 したがって、ITの新しい利用方法を見つけ出した企業は、その利用方法による優位をできるだけ早期に他の持続的な優位をもたらす何かに転換する必要がある。しかし、技術の複製サイクルはどんどん短くなっているため、ITの斬新な利用方法によって得た一時的な優位を持続的なものに展開するチャンスは少なくなっているとカーは主張している。

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