- 2006/05/22 掲載
【連載】ITと企業戦略の関係を考える[第3回/全5回](2/2)

ソフトウェアにとってより深刻な問題
オーバーシューティングの問題は、将来的にはハードウェアよりソフトウェアの方がより深刻になるだろう。なぜなら、ハードウェアは物理的な老朽化という問題があり、ある程度長い期間利用すれば更新されることになるが、ソフトウェアは朽ち果てることがないからである。
仮に、現在利用しているソフトウェアの機能に不満がないのであれば、そのソフトウェアは、それに対応するハードウェアなどのプラットフォームがある限り未来永劫使いつづけることができる。つまり、そのソフトウェアが、売り切りのパッケージソフトであれば、二度とそのソフトウェアにお金を払う必要はない。
これをベンダー側からみれば、利用者が十分に満足するパッケージソフトを開発して販売してしまえば、それをどれだけ改良して新しいバージョンをつくっても商売にならないということを意味している。これはパッケージソフト・ベンダーにとっては致命傷になる。
ソフトウェアのサービス化
ソフトウェア・ベンダーは、オーバーシューティングが自分たちのビジネスにどのような影響をもたらすかを十分認識している。
対策は、パッケージ・ビジネスからの脱却である。一つの方策はライセンシング・モデルへの転換である。つまり、利用者からライセンス料を毎年徴収する代わりに、ライセンス期間中はその製品のサポート、バージョンアップを行うというビジネスである。しかし、これは抜本的な解決になりえない。同種のソフトウェアを提供しているベンダーがすべてライセンシング・・モデルを採用すればよいのだが、パッケージによる提供を並行的に行っていたり、ライバル企業がパッケージを販売している場合には、利用者がパッケージを選択するかもしれないからである。
そこで現在注目されているのが、ソフトウェアのサービス化(SaaS, Software as a Service)である。SaaSとは、ソフトウェアをオンラインで提供するASP(Application Service Providor)サービスの一種であるが、ユーザがウェブブラウザを通して利用する形態であること、ユーザがそのソフトウェア機能をウェブサービスコンポーネントの一部としても利用することができる点がASPと異なる。
SaaSによって、ソフトウェアのサービス化が進展することは間違いないが、それがソフトウェア・ベンダーの救世主となるかどうかはまだ分からない。ともあれ、ITにおけるオーバーシューティング現象が、ITのコモディティ化に拍車をかけることは確かである。では、次回はITの戦略的価値について考えてみよう。
関連コンテンツ
PR
PR
PR