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企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みの重要性が高まっている中、DXを推進する人材像やデジタル技術の活用などが求められている。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)はこの2月、「DX白書2023」を公開した。今回はこの「DX白書2023」から、DX時代の人材像やデジタル技術の活用などを中心に、解説する。日米DXの差を生む根本的な「データ活用環境」とは何か?
DXを推進する人材に関する取り組みの全体像とは?
IPAのDXを推進する人材に関する取り組みの全体像を以下のように定義している。
【目指す人材像】DXを推進するために自社にどのような人材が必要となるか、具体的な人材像を設定し、それを 社内に周知し、組織として目指す方向性についての共通理解の醸成
【確保・獲得】その人材像に当てはまる人材を社内から発掘・登用、また社外から獲得し確保
【キャリア形成・学び】獲得・確保した人材についてはDXを推進する人材としてのキャリア形成やキャリアサポートの施策、スキルアップするための育成施策や既存人材の学び直しなどにも取り組む
【評価・定着化】DXを推進する人材に対しては既存の人材とは異なった評価基準が必要となるため、新たな評価基準の定義 と定期的な評価の実施・見直しを行い、人材にフィードバックを行うことで人材の定着化を図る
【企業文化・風土】DXが組織に根付いていくためには土壌となる企業風土・文化のあり方も重要であり、 DXにふさわしい姿に変革していくことが求められている
DXを推進する人材の「量」「質」の獲得・確保
人材の確保は、DX戦略を推進する上での重要なテーマの1つであり、自社の人材の充足度を把握し、継続的に人材確保をすることが必要となっている。
DXを推進する人材の「量」「質」の確保についての問いに対して、「量」については、2022年度調査では、DXを推進する人材が充足していると回答した割合が日本は10.9%、米国は73.4%となっている。
「大幅に不足している」が米国では2021年度調査の20.9%から2022年度調査の3.3%と減少する一方、日本では2021年度調査の30.6%から2022年度調査は49.6%と増加し、DXを推進する人材の「量」の不足が顕著となっている。
日本では、DXを推進する人材の「量」「質」ともに、2021年度と比べても不足感が増している。
日本では、「やや不足している」は2021年度調査の55.0%から2022年度調査は34.4%と減少している 一方、「大幅に不足にしている」は2021年度調査30.5%から2022年度調査は51.7%になり明確な不足を回答する企業が半数にまで増加している。
日本の企業でDXを推進する人材の「量」「質」の不足が増加した要因としては、この1年でDXに取り組む企業の割合が増加し、それにあわせてDXの推進に必要な人材に対するニーズが増えていることが考えられるという。
DXを推進する人材の獲得・確保の取り組みの状況としては、日米ともに「社内人材の育成」(54.9%、 42.5%)の割合が一番高い。
日本と米国の差異をみると米国は、日本より「特定技術を有する企業や個人との契約」(42.5%)、「リファラル採用(自社の社員から友人や知人などを紹介してもらう手法)」(24.9%)などさまざまな社外からの獲得手段の割合が高い。
日本企業の場合は社内での人材育成中心だが、雇用の流動化が進む中、社外からの獲得手段を積極的に活用していくことが必要である。
企業文化・風土、まとめ
DXの推進のための企業文化・風土の「現在」の状況についても米国との差が大きい。
日本は「できている」の割合が高い項目として「企業の目指すことのビジョンや方向性が明確で社員に周知されている」(30.4%)、「個人の事情に合わせた柔軟な働き方ができる」(28.0%)が挙げられるが、すべての項目が40%以上の米国との差は大きい。
DXが組織に根付いていくためには土壌となる企業風土・文化のあり方も重要でありDXにふさわしい姿に変革していくことが求められている。
日本企業はDXを推進する人材の質・量は2021年度調査と比べてともに不足が進んでいるなど、今回の調査結果から、全般的に「DXの推進において人材が課題」という状況が顕著にあらわれた結果となっている。
【次ページ】DX実現に向けて求められるITシステム
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