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論文執筆やコーディングを含め、さまざまな質問に答える能力を持つAI「ChatGPT(チャットGPT)」。この人工知能(AI)を開発したOpenAI(オープンAI)に対し、マイクロソフトなどが100億ドル(約1.3兆円)の巨額投資を行う。マイクロソフトは2019年に10億ドルを投資し、すでにOpenAIのAIをOfficeなど自社プロダクトに活用しており、今回の投資によりAI統合がさらに進むことが予想される。マイクロソフトは、OpenAIのAIテクノロジーをどのように活用しようとしているのか。
マイクロソフト、100億ドルの超大型投資
世界のウェブ検索エンジン市場で圧倒的なシェアを誇るグーグルだが、その地位は安泰ではない。マイクロソフトが今注目されるChatGPTなどOpenAIのAIをフル活用し、同社の検索エンジンBingを大幅にアップグレードしようとしているからだ。
Statistaがまとめた2022年12月時点の世界の検索エンジン(デスクトップ利用)市場のシェアランキングでは、グーグルが84.4%とほぼ独占状態であるが、現時点でBingが8.95%と2位につけている。ChatGPTやDall-E2などOpenAIが開発しているAIの精度や可能性を考慮すると、市場シェアは大きく変化することも考えられる。
マイクロソフトのOpenAIに対する期待は、同社の投資意欲に見て取ることができる。マイクロソフトは2019年にOpenAIに10億ドルを投資し、ChatGPTの前身となる
GPT-3の独占ライセンスを取得した。
マイクロソフトによる投資はこれにとどまらない。ChatGPTが2022年11月にリリースされて以降、マイクロソフトが追加の大型投資を実施するのではないかとの臆測が各メディアで報じられるようになっていた。
そして1月23日、マイクロソフトがOpenAIに100億ドル(約1.3兆円)を投じることが明らかになった。
ブルームバーグらの報道によると、100億ドルの投資は複数年かけて行われるという。この新規の投資により、OpenAIの評価額は290億ドルになる。
マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは発表文で、「最先端のAIの研究を責任を持って前進させ、AIを新たな技術プラットフォームとして民主化させるという共通の熱意のもと、OpenAIとパートナーシップを結んだ」と説明している。
さらにOpenAI側は23日の発表で、手がけるAIのモデルのすべてのトレーニングにおいて、マイクロソフトのクラウド基盤Azureを活用すると声明を出し、AzureはOpenAIの独占的なクラウド提供者と位置付けた。
両社の公式発表では、具体的な投資額や取引額は明らかにされていないが、このスキームで、マイクロソフトは投資を回収するまで、OpenAIの利益を75%取得し、投資が回収できた段階で、マイクロソフトがOpenAIの株式49%、他の投資家が49%、そしてOpenAIの親会社が残りの2%を保持する構造に移行すると
Semaforは報じていた。
マイクロソフト、検索エンジンにAI活用へ
では、マイクロソフトはどのような形でOpenAIのAIを活用しようとしているのか。
まず、
公式の発表として「Azure OpenAI Service」の一般提供を開始した。OpenAIが提供する「GPT-3.5」や「Codex」「DALL・E 2」といったAIモデルをさまざまなアプリケーションの作成に活用できる。また、近いうちに「ChatGPT」へのアクセスも可能になるという。
これらはOpenAIを活用する基盤としてのAzureでのサービス提供となり、これはこれで対Amazon Web Service(AWS)として強力なツールとして期待されているが、マイクロソフトのプロダクトそのものにもより深く関わってくる可能性も指摘されている。
米メディアのThe Informationは2023年1月3日に2人の関係筋の話として、マイクロソフトがBingにChatGPTを統合させ、人間らしい回答を検索結果として返すバージョンをローンチする計画だと伝えている。
もしChatGPTのような機能を検索エンジンに実装することができれば、BingはグーグルのKnowledge Graphに対抗できるようになるとみられる。Knowledge Graphとは、グーグルがウェブクロールとユーザーフィードバックから定期的に更新しているナレッジベースであり、検索を素早く実行するのに欠かせないものだ。
ChatGPTを使うように、AIに質問を投げかけると、その質問に応じ回答を返し、さらに文脈に沿った関連情報を検索結果として提示するようなAI検索エンジンが登場すれば、グーグルにとって脅威となることは間違いない。
たとえば、ジョギングに最適な靴を購入したい場合、グーグル検索であれば「ジョギング シューズ おすすめ」などのキーワードで検索することが多いはず。これに対しグーグル検索エンジンは、さまざまなシューズのレビューブログや動画、また購入サイトのリンクを提示してくる。利用者は、この提示されたリンクの情報をそれぞれ調べ、どのシューズを購入するのかを決めることになる。
一方、ChatGPTのようなAIが搭載された検索エンジンであれば、「ジョギングにおすすめのシューズは?」という質問を投げかけると、AIが具体的な目的や予算を絞り込む会話に誘導し、その上で最適なシューズを提示するといったことなどが可能になると考えられる。
【次ページ】WordなどOffice製品にAI搭載という報道も
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