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- 2023/02/08 掲載
Web3の活躍が期待できる「究極のアプリケーション」とは?
中島聡氏が語るWeb3の未来
前編はこちら(この記事は中編です)
Web3による究極のアプリケーションとは?
だからといって、Web3には意味がないと考えるのも早計です。
誰にでも情報にアクセスできる透明性と、管理者がいなくても動き続ける永続性、そしてスマートコントラクトの自動処理による厳密性。
これらの特徴をすべて兼ね備えた仕組みは、今のところWeb3以外には存在しません。
そう考えていくと、Web3が本質的な意味で最もその力を発揮するのは、国や自治体がかかわる公的な分野であると私は考えています。
先に挙げた不動産ビジネスにしても、不動産登記を国がブロックチェーンで管理しているのであれば、取引はより信頼でき、スピーディなものになります。現在の不動産ビジネスは手数料が高く、時間もかかりますから、流動性は株式などに比べてはるかに低くなっています。しかし、ブロックチェーン上で不動産情報を扱えるようになれば、安くなった土地を自動で買うといったアルゴリズム取引(注1)も不可能ではなくなるでしょう。
ほかにも、住民台帳がブロックチェーンに記録されていれば、民間企業もそのデータを元にして本人確認を行えますし、引っ越しの際の手続きも格段に簡素化できる可能性があります。公文書もブロックチェーンに記録していけば、黒塗りなどをする余地はありません。
そして何より、お金の流れです。2021年に開催された東京2020夏季オリンピックは閉幕後、次々と問題が明らかになりました。電通出身の大会組織委員会元理事が複数の企業から多額の賄賂を受け取って便宜を図っていたとの疑いで逮捕されましたが、本来であれば、公金が投入される大規模プロジェクトこそ、透明性が最も求められるもののはずです。
国の根幹にかかわる事柄こそ、Web3を活用すべき分野だといえます。もっとも、今Web3を推進しようとしている政府関係者が、自分たちのクビを絞めるかもしれない透明化を今後力強く進めていくかどうかは疑問ですが。また、無理矢理にWeb3を使ったシステムを官公庁に導入したとしても、透明化の文化が根付いていないのであれば、結局従来どおりブロックチェーン外の根回しで物事が決まってしまうだけかもしれません。
とはいえ、システムの確立された国がWeb3に移行することは困難
しかし正直なところをいえば、すでにシステムの確立された国がWeb3に移行することは相当に困難だと思われます。逆にいえば、小規模な新興国であれば国家システムをWeb3で作ることもできるのではないか。私はそう期待しています。
私たちが馴染んでいる民主制は、Web3どころかインターネットも存在しない時代に生まれたものです。日本の選挙においては、候補者の名前を紙に書くという前時代的な仕組みがいまだに残っているほどです。
Web3をはじめとするテクノロジーによって、一から「国家」や「民主制」を作ったら、どうなるのか。
選挙も今のような形ではなくなるでしょう。人に投票するというよりも、個々の政策について有権者一人ひとりが投票することができます。今は投票するにもガス代がかかりますが、Polygonのように、もっとガス代がかからないブロックチェーンを作ろうと動いている人たちもいますから、いずれ技術的には実現できるようになるでしょう。
もっと進めば、「社会保障4:教育政策4:軍事費2」などと、個々が自分の税金を何に使うのかを自分で決めて、政府はそれによって配分された予算に則って政策を動かす、ということもできます。
そもそも政治に参加しようとしたときに、今の自民党一強では、誰も出馬しようと思いませんし、政治家になったとして自分が考えていることが実現できるとは思えません。
もし、国の設計をソフトウェアで行うような国が実現できるのであれば、それなら加わってみたいと思えます。もちろんソースコードはオープンになりますので、私が得になるようなコードを書けば、すぐばれてしまいます。
国民投票による政策の選択、透明な予算配分、迅速な不動産取引、確実な本人確認、暗号資産を用いた公平な税制とスピーディな給付金―。これまでどんな国でも実現できなかった、新しい民主制を実現できる可能性があります。
この「Web3民主制」がいったんローンチしてしまえば、旧態依然とした仕組みに後戻りすることは不可能でしょう。
同じようなことを考えている人たちはいるもので、“The Network State”というサイトでは、Web3を用いた新たな国の形についてさまざまなアイデアが提言されています。
小さなオンラインコミュニティから始めて、クラウドファンディングでリアルな住宅や街の建設も進める。世界中にできたこうしたコミュニティをネットワークで結び、ブロックチェーン上で国勢調査を実施。外交的な認知度を高めて、真のネットワーク国家を建設する、というビジョンにはワクワクさせられます。
【次ページ】GAFAM的企業から、価値の提供を純粋に目指すDAOへ
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