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- 2023/06/08 掲載
【単独】伊藤穰一氏に聞く生成AI、革命的なのに「トレンドを無理に追わなくていい」理由
ジェネレーティブAI(生成AI)とは何か?
入力されたデータをAI(機械学習)により分析、評価して結果を出力するなどの一連の処理を計算式で記述することを「AI学習モデル」といいますが、ジェネレーティブAI(生成AI)は、そのモデルが人間の出すオーダーに答えて、テキストや画像などを合成してつくり出すAIです。生成AIは、すごく新しいものというわけでもありません。OpenAIが開発したGPT-3という自然言語処理向けの深層学習モデル自体は2020年にすでにできていましたが、一般には使われていなかった。
しかし2022年の夏、OpenAIが自然言語の記述によりデジタル画像を生成するできる深層学習モデル「DALL-E 2」を発表、さらに2022年11月に生成AIを用いたチャットサービス「ChatGPT」をリリースしたことで、一般のユーザーが容易に生成AIを扱えるようになり、使ってみるとこれまで想像していなかったような結果を出した。それにみんなが驚いて、今これほどまでに話題になっているのだと思います。
ChatGPTのベースとなっている大規模言語モデルは、情報を「トークン」という単位で処理しています。1つのトークンで一度に処理できる文字数が大幅に増加したことで、過去の会話を覚えて長いストーリーを処理できるようになったことが、従来のAIとの違いの1つです。また、ニューラルネットワークを調整するためのパラメーターの数も大幅に増えたため、処理できるコンセプトの複雑さと情報量が格段に高まり、「頭が良くなった」と感じるのだと思います。
現在は新しいアプリケーションが毎週のように出てきており、生成AIが市場にどのような変化を及ぼすのか、どの程度のインパクトを与えるのかを予測するのは難しい状況です。
シェアを持つ企業の製品に生成AIが組み込まれていく
生成AIへの期待が急激に高まる状況で、市場の勢力図はどのように変わっていくのでしょうか。私の仮説を紹介したいと思います。まず、生成AIのプラットフォームをつくっているOpenAIのような企業は、かなりの技術力と資金が必要であるため、限られたプラットフォーマーが今後も勝ち続けていくと思います。彼らは、たとえばアップルとデベロッパーのように、良いものがあれば資金力と人材の力を自社のものにしてしまう可能性があります。そのため、生成AIのプラットフォームに近いレイヤーで新たなスタートアップが出て来ることは、なくはないけれども難しいと思います。
先日、ChatGPTでサードパーティーのプラグインを提供し始めました。これからアップルとAppStoreのような形で、ミドルウェアのレイヤーにたくさん便利なツールが出てくると思います。ただ、APIを使って割と簡単につくれてしまいますし、コピーされやすい。そのため、競争力を持つのは難しいだろうと見ています。
だから、生成AIのプラットフォーマーとビッグリアルビジネスの層が厚くて、真ん中のレイヤーにいる企業群から“次のグーグル”になるような企業が出てくるのはなかなか難しいのではないか──というのが私の直感的なイメージです。 【次ページ】生成AIは「分かっている」人が使うことでより力を発揮する
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