フューチャーブリッジパートナーズ 長橋 賢吾
2005年東京大学大学院情報理工学研究科修了。博士(情報理工学)。英国ケンブリッジ大学コンピュータ研究所訪問研究員を経て、2006年日興シティグループ証券にてITサービス・ソフトウェア担当の証券アナリストとして従事したのち、2009年3月にフューチャーブリッジパートナーズ(株)を設立。経営コンサルタントとして、経営の視点から、企業分析、情報システム評価、IR支援等に携わる。アプリックスIPホールディングス(株) 取締役 チーフエコノミスト。共著に『使って学ぶIPv6』(アスキー02年4月初版)、著書に『これならわかるネットワーク』(講談社ブルーバックス、08年5月)、『ネット企業の新技術と戦略がよーくわかる本』(秀和システム、11年9月)。『ビックデータ戦略』(秀和システム、12年3月)、『図解:スマートフォンビジネスモデル』(秀和システム、12年11月)。
ホームページ: http://www.futurebridge.jp
サーフィンやスキー、ダイビングといったスポーツをしている方なら、カメラを製造・販売しているGoPro(以下、ゴープロ)という企業をご存じかもしれません。カメラといっても、ただのカメラではありません。頭部などに装着し、サーフィン、スキー、ダイビングなどのアクティビティをプレイヤーの視点で録画し、録画した動画を簡単に動画共有サイトYouTube、Instagramなどにアップすることができるカメラで、ウェアラブルカメラやアクションカメラ(アクションカム)などと呼ばれています。ゴープロは、まったく新しいカメラを“再発明”したメーカーとして世界中から脚光を浴び、2014年6月には鳴り物入りでIPO(新規株式公開)しました。
ネットフリックス(Netflix)という企業をご存じでしょうか?世界最大のインターネットを介したテレビ・ビデオサービスを提供する企業ですが、日本ではまだサービスを展開していないので、Hulu(フールー)のような企業といったほうがわかりやすいかもしれません。この企業が大きな注目を集めたのは2011年、同社サービスが北米の全ネットワーク(下り)の約3割を占めて大きな波紋を呼びました。2位はHTTPのWebサイト(18%)、3位はYouTube(11%)なので、いかに膨大なトラフィックを集めたのかがおわかりいただけると思います。新しい映像配信時代の申し子とも言うべき同社ですが、2014年10月中旬に株価が一時25%近くも下落。11月中旬になっても、元の水準には遠い状況です。この背景には何があるのか、そして、同社はどう進むのかを見ていきましょう。
ツイッターは、言わずとしれた140字のマイクロブログ(つぶやき)サービスです。2006年にサービスを開始し、今や月間利用者数は2億4100万人にのぼります。何年も前からIPO(新規株式上場)の噂が絶えませんでしたが、2013年11月にようやく晴れてIPOの運びとなりました。2012年のフェイスブック以来の大型IT企業の上場に株式市場も好感、IPO価格26ドルを大幅に上回る44.9ドルで取引を終えました。しかし、2014年2月6日に発表された最初の四半期決算を境に株価は24%下落、その後も株価は大幅な回復も見られないまま現在にいたります。投資家は、ほんの数年前に“~なう”ブームを引き起こしたツイッターが、早くも“オワコン(終わったコンテンツ)”になってしまうとみているのです。
2013年7-9月期の米ハイテク企業の決算が一通り出そろいました。その中で最も良かった決算の一つが、今回取り上げる「マイクロソフト」です。9月のノキアの携帯電話事業の買収発表で一時的に株価は大きく下落しましたが、今や年初から41%も上昇。1999年につけた高値40ドル台を回復しそうな勢いです(図1)。マイクロソフトといえば、言わずと知れたパソコン向けのWindowsとOfficeで世界を制覇した企業ですが、昨今のスマホ・タブレットの台頭でパソコンの出荷台数も減少、“過去の企業”とも揶揄されています。さらにスティーブ・バルマーCEOの後継者問題も世間を騒がせていますが、投資家はマイクロソフトのいったい何を評価しているのでしょうか。
Amazon.com(以下、アマゾン)という会社は、掴みどころがない会社です。もともとは本のオンライン販売からスタートしましたが、今や世界一のオンラインストアになり、本に限らず、生活用品や工具、食品なども販売しています。さらには、そのWebサイト構築に用いられたノウハウやリソースをもとに、企業・個人向けにクラウドサービス(AWS: Amazon Web Services)を展開し、この分野でも大きな存在感を持つに至っています。8月には同社のジェフ・ベゾスCEOが個人で米新聞大手ワシントン・ポスト紙の新聞事業を買収したことも大きな話題を集めました。急速に存在感を増しているアマゾンですが、実は同社がM&Aを本格化させたのは5年前からなのです。