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- 2014/07/02 掲載
大塚商会 たよれーるの伊藤昇センター長が語る、モバイルパワーを引き出す秘訣
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100点満点の機能を備えたモバイル環境が100点の効果を上げられるとは限らない
ただし、「これらの機能で100点満点を取れるソリューションを使えば、効果も100点になるかと言うと、答えはNoです」と説くのは、大塚商会 たよれーるマネジメントサービスセンターのセンター長を務める伊藤昇氏だ。一方で伊藤氏は、このようにも語る。
「では、機能面では求められている内容の60点しか取れないソリューションを利用した場合、その効果も60点しか期待できないのかと言うと、こちらも答えはNoです。上手く使えば、120点の効果を得られる場合もあるのです」
モバイル活用におけるこうした効果の“差異”は、どこから生まれてくるのだろうか。
エンジニアのスキル、知識、経験を均質化し、顧客の本当の要望に応えるサービスを実現
大塚商会が主催するプライベートセミナー「モバイルパワー2014」に登壇した伊藤氏は、大塚商会自身が取り組んできたモバイル活用の事例を通じて、そのポイントを解き明かしていく。まず取り上げたのは、コピー機、複合機、ファクス、パソコン、プリンタなど、同社が販売したさまざまな機器について、ユーザーから障害連絡を受けた際に、訪問可能な状況にあるエンジニアのモバイルデバイスにメールを送信してアサインする、「モバイル・ディスパッチ」のシステムだ。
全国各地のサポートサイトから担当エリアのエンジニアをアサインする、あるいはモバイルデバイスの位置情報を使って最寄りの場所にいるエンジニアをアサインするなど、臨機応変なディスパッチが行われている。この仕組みによってエンジニアは、より短時間でユーザーのもとに駆け付けることが可能となった。
ただ、そこで同社はいったん立ち止まって考えたという。「これは本当にモバイル活用の成果と言えるのだろうか」という疑問が湧き上がってきたのである。
「機器が故障して困っているお客さまが望んでいるのは、エンジニアにすぐに駆けつけてもらうことではなく、少しでも早く直してほしいということです。求められているのは、確実な修理技術の提供です」(伊藤氏)
同社たよれーるマネジメントサービスセンターでは、本部から全国各地のサポートサイトまで含めると、総勢約3,000人のエンジニアが活動している。
当然のことながら、それぞれのエンジニアにはスキルレベルに差があり、さまざまな機器や技術に関する得意分野、不得意分野、修理の経験値も違っている。万が一、ユーザー側で発生している故障に対応できる十分なスキルや経験を持っていないエンジニアを派遣してしまった場合、直るまでにかえって長い時間を要してしまう場合がある。
「エンジニアのスキルレベル、知識レベル、経験値を可能な限り均質化し、より早く、確実に修理を完了してこそ、お客さまの要望に応えることができます。これを実現する仕組みを提供できてはじめて、モバイル活用の成果と言えるのではないでしょうか」(伊藤氏)
こうした経緯から同社が新たに開発し、エンジニアのモバイル環境に展開したのが「ナレッジWeb」と呼ばれるシステムである。簡単に言えば、過去に多くのエンジニアが培ってきたスキルと経験、修理履歴などの情報を一元的に蓄積し、Webインタフェースを介してスピーディに検索することができる知識データベースである。
「故障した機器からネットワーク経由で収集したアラート情報に基づき、可能性が高い故障原因をあらかじめ推定する。お客さまを訪問したエンジニアが、まずどこからチェックすべきか、どんな手順で作業を行えばよいのか、どんなことに注意しなければならないのかといった情報をこのナレッジWebから得られるのです」(伊藤氏)
どの営業担当者が顧客先を訪問した場合も同じ品質でプレゼンテーションや提案を行える
伊藤氏がもう1つ紹介するのは、「デジサインTab」というシステムへの取り組みだ。先のナレッジWebがエンジニアを対象としていたのに対し、こちらは主に営業担当者を対象として外販も行っているシステムである。営業ツールとして利用しているタブレット(iPad)に対して、商談やソリューション紹介の際に必要となる情報やドキュメントをタイムリーに配信することができる。それまで同社の営業担当者は、訪問先に合わせて紙のカタログをセレクトして用意しなければならなかった。複数の訪問先が予定されていれば、その数だけカタログの組み合わせが必要となる。デジサインTabを利用することで、これらのカタログをすべて電子化して持ち歩くことができるわけだ。
また、アプリを起動すれば最新情報が自動的にPush配信されため、古い情報を間違って顧客に伝えてしまうというリスクを軽減できる。 常に最新の情報をチーム全員で共有し、最適なプレゼンテーションを行うことができる。
ユニークなのは、動画や高画質な写真にタイムリーな文字情報を組み合わせ、紙の資料では表現できない臨場感あるPRが可能となることだ。接客時には商品カタログを表示しながら詳細な説明を行うというように、場面に応じた使い方が可能である。
「このデジサインTabの狙いも、営業担当者のスキルレベルや知識レベルを均質化することにあります。当社が扱っている数千から数万アイテムの商品に関するすべての知識を、一人の営業担当者が頭の中に入れることは困難です。結局、自分の得意なジャンルの商品のことしか説明せず、お客さまから聞かれるまで提案も行わなくなってしまいます。デジサインTabはあらゆる商品やソリューションの情報を持ち運ぶことができ、場合によっては動画機能や音声機能を活用し、営業担当者に代わってデジサインTabに商品説明を行わせることも可能です。どの営業担当者がお客さまを訪問したとしても、同じ品質でプレゼンテーションや提案を行うことができます」(伊藤氏)
しかも、デジサインTabは実際に営業現場できちんと活用されているかどうか、リモートから監視・観測を行うこともできる。どのコンテンツが、どの訪問先で、どれくらいの時間をかけて閲覧されているのかを把握するとともに、そのログデータをBIツールなどに渡して分析することも可能だ。もともと同社がデジサインTabを開発したきっかけは、ガバナンスを効かせることができず生産性を向上できないでいた、営業現場の課題を打破することにあったのだという。
このようにモバイル活用の効果を最大限に引き出すためには、機能面とはまったく違った視点からのアプローチがより重要となる。
「モバイルを使いたくなる『仕掛け』、使わないと『仕事ができない仕組み』、使わせるための『工夫』、使わないでいることの『罪悪感』が鍵を握っています。モバイルパワーを最大限に活かして効果を生み出していく源泉は、ビジネス現場への『徹底力』と『浸透力』にあります」と、伊藤氏はポイントを総括した。
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