• 2024/05/31 掲載

焦点:試される世界の国債需要 6月純発行額は今年最大 利下げ期待後退

ロイター

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Harry Robertson

[ロンドン 30日 ロイター] - 国際金融市場では、これまでのところ国債に旺盛な需要が見られるが、6月の国債純発行額は今年最大となる見通しで、利下げ観測が後退する中、国債の需要が試されることになりそうだ。

BNPパリバのデータによると、米国、ユーロ圏、英国の6月の国債純発行額は3400億ドルに拡大するとみられる。償還が減ることや、中央銀行が保有国債の圧縮を続けていることが背景だ。

アナリストは、新発国債が市場で吸収されると予想しているが、利回りに一段の上昇圧力がかかるリスクがあり、今年の債券市場が利下げで上昇すると期待していた投資家の間に不安が広がる可能性がある。

28日の2件の米国債入札は低調な結果に終わったが、強い経済指標を受けて利下げ開始が遅れるとの見方が広がる中、国債に対する楽観姿勢が揺らいでいることを示す初期の兆候ではないかとの指摘も出ている。

BNPパリバの欧州のG10金利戦略担当、カミーユ・ドゥ・クールセル氏は「吸収しなければならない供給がたくさん残っている」とし、ユーロ圏の6月の純発行額は今年に入ってから2番目の高水準になるとの見通しを示した。

同氏は、欧州中央銀行(ECB)が利下げを実施するとみられるが、景気回復と高水準の供給を踏まえて期間の長い債券を6月に購入することには慎重姿勢を示し、「6月にかけて(利回りが)上昇するリスクを強く意識している。特に欧州ではそうだ」と述べた。

先進国は新型コロナショックやロシアのウクライナ侵攻に起因するエネルギー危機で打撃を受けた景気の回復を促すため、依然として多額の借り入れを行っている。

今年は米国、英国で選挙があるほか、欧州連合(EU)でも欧州議会選が実施されるため、支出継続への圧力が強まっている。

一方、中央銀行は量的引き締め(QT)で保有債券を減らしている。米連邦準備理事会(FRB)は6月から保有国債の縮小ペースを減速するが、現在は月950億ドルのペースで国債と住宅ローン担保証券(MBS)の保有を減らすことが可能。イングランド銀行(英中央銀行)も保有国債を積極的に市場に売却している。

これまでのところ、投資家の需要は旺盛だ。英国で3月に実施された30年物の物価連動債入札では応札額が記録的な水準に達した。BNPパリバによると、ユーロ圏もこうした需要を利用して今年の国債発行予定額の約53%をすでに販売している。昨年の同時期は45%だった。

ラザード・アセット・マネジメントのグローバル債券部門共同責任者、マイケル・ワイドナー氏は「ユーロ圏の国債は正気とは思えないほど順調に消化されている。やや驚きだ」と指摘。こうした旺盛な需要の背景には、何年にもわたってゼロ付近の利回りが続いたことや、中銀の利下げサイクルが始まれば国債価格が上昇するとの期待があると述べた。

6月の純発行額の増加は、満期を迎える国債の減少によるところが大きい。投資家は元本償還がないため、発行市場に再投資する手元資金が不足する。

ワイドナー氏は「こうした(ミスマッチは)これまで大きな問題になったことはない。銀行は翌月の償還が増えることを十分承知しており、総発行額のかなりの部分を購入するだろう」と述べた。

政府の借り入れに対する懸念では、米国をはじめ各国の債務水準の長期的な増加に注目が集まる傾向がある。米議会予算局(CBO)は3月、同国の公的債務の対国内総生産(GDP)比が今年の99%から2054年に166%に上昇すると予測した。

プリンシパル・アセット・マネジメントの債券部門グローバルヘッド、マイケル・グーセイ氏は「各国の財政赤字がこの水準で膨らみ続ければ、投資家はある時点で、特に長期の国債に対して、これまでより高いリスクプレミアムを求めることになる」と指摘。

「ただ、短期的には中銀がある程度まで最後の買い手となり続けることや、景気減速懸念に伴う利下げの必要性が、市場の取引を左右する」と述べた。

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