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  • 2022/09/29 掲載

Trusted Webとは何か? Web3との違いや推進協議会のレポートを解説

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社会全体のデジタル変革が加速する中、インターネットを流れる情報の信頼性を高めるための「デジタル社会インフラの在り方」が問われている。内閣官房のデジタル市場競争本部が8月15日に発表した「Trusted Web ホワイトペーパーver2.0」では、Webで流通される情報やデータの信頼性を担保する「Trusted Web」の概念やアーキテクチャなどが解説されている。本稿ではホワイトペーパーを基に、Trusted Webとは何か、Trusted Webの検討の背景や直面している課題やTrusted Webの目指すべき方向性、Trusted Webのもたらすベネフィットや想定ケース、展望などを解説する。
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Trusted Webとは何か?
(Photo/Getty Images)

Trusted Webとは何か?

 Trusted Webとは、内閣官房 デジタル市場競争本部が2021年3月に発表した「Trusted Webホワイトペーパー ver1.0」の中で提唱される「Webで流通される情報やデータの信頼性を保証する仕組み」に関する概念のことである。

 より具体的には特定のプラットフォーム事業者やサービスに依存し過ぎず、「Trust(ホワイトペーパーにおいて事実の確認をしない状態で相手先が期待した通りに振る舞うと信じる度合い)」のレベルを高めた「デジタル社会のインフラ」を指す。

 Trusted Webが目指すTrustの仕組みは、特定のプラットフォーム事業者やサービスに過度に依存しないことにある。Trusted Webでは、ユーザー自身が自らに関連するデータをコントロールすることを可能とし、データのやりとりにおける合意形成の仕組みを取り入れ、その合意の履行のトレースを可能とする。そして、検証(verify)できる領域を拡大することにより、Trustの向上を目指すという。

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Trusted Webが目指すべき方向性
(出典:Trusted Web推進協議会 Trusted Web ホワイトペーパーver2.0 2022.8)

・Trusted Webと「Web3」の違い
 「Web1.0」「Web2.0」に続く新たなインターネットの潮流として、分散型台帳・ブロックチェーン技術などを基盤とした次世代のインターネットを指す「Web3(Web3.0)」の概念が提唱されている。

 少数のプラットフォーム事業者による寡占構造となったWeb2.0に対して、Web3のサービスは、プログラムやデータをパブリック型のブロックチェーンに登録することで「非中央集権的」を志向する(Web3の厳密な定義についてはさまざまな見解があり明確な定義は定まっていない)。

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Web3時代の概観
(出典:総務省 Web3時代に向けたメタバースなどの利活用に関する研究会(第1回)2022.8.1)

 Web3は、現状のインターネットやWebに対する問題意識や、分散型で検証可能な部分を広げることを志向しているという意味での方向性では、Trusted Webと共通する。

 Trusted Webは、アイデンティティ管理の在り方に重点を置き、技術中立的な取り組みとして進められている。ブロックチェーン技術の活用のみでなく、検証可能性を高めるさまざまな枠組を活用し、組み合わせることにより、Trustのレベルを高めることを目指している。

・Trusted Webの背景とこれまでの検討経緯
 Trusted Webが議論の俎上に上ったのは、2020年6月に内閣官房デジタル市場競争会議で、Society5.0におけるデジタル市場の在り方についてとりまとめた「デジタル市場競争に係る中期展望レポート」からだ。

 「デジタル市場競争に係る中期展望レポート」で書かれているポイントは、以下の通りだ。

 インターネットとWebでは、アイデンティティ管理も含め、データを集中的に管理するプラットフォーム事業者が提供するサービスに依存せざるを得ない。プラットフォーム事業者により中央集権的にデータが管理・利用されている中で、データがどのように使われるかがブラックボックスである点が懸念されている。

 プラットフォーム事業者が提供するサービスを、外部から検証することも難しく、プラットフォーム事業者を「信じるほかない」という状況だ。こういった状況の中、本レポートでは、デジタル市場の目指すべき姿として、「一握りの巨大企業への過度な依存」でも、「監視社会」でもない第三の道を模索することの重要性を示している。

 その実現の方策の1つとして提言されているのが、「データガバナンスの在り方をテクノロジーで変える分散型のTrusted Webの実現」である。

 Trusted Webの実現に向け、多様な主体による競争や、信頼(Trust)の基盤となる「データガバナンス」、そして「Trustをベースとしたデジタル市場の整備」を挙げた。

 内閣官房は「デジタル市場競争に係る中期展望レポート」の提言を受け、「信頼性のある自由なデータ流通(Data Free Flow with Trust:DFFT)」の具現化も視野に、2020年10月に「Trusted Web推進協議会」を発足。2021年3月にはホワイトペーパー Ver1.0をとりまとめている。

 協議会ではホワイトペーパーVer.1.0で示された考え方や構想の具体化を図るためユースケース分析やプロトタイプ開発を実施した。Trusted Webが目指す“信頼”の姿をさらに具体化させ、それを実現するためのアーキテクチャを提示し、あるべきガバナンスを検討して今後の道筋を示したのが2022年8月に発表された「Trusted Web ホワイトペーパーver2.0」だ。

・デジタル社会で直面している課題
 インターネットとWebが世界中に広がっているため多くの情報にアクセスできるだけでなく、さまざまなサービスも生まれている。一方、ユーザーが信頼の多くをプラットフォーム事業者などに依存することで、さまざまな課題にも直面している。

 直面している課題とは、たとえば以下のようなことだ。

  • フェイクニュースや虚偽の機器制御データなど、流れるデータへの懸念
  • 生体情報も含めたデータの集約・統合によるプライバシーリスク
  • プライバシー保護と公益のバランス
  • サイロ化された産業データの未活用
  • 勝者総取りなどによるエコシステムのサステナビリティへの懸念
  • 社会活動を行う上での社会規範によるガバナンスの機能不全

 ここでは、「流れるデータへの懸念」「プライバシーリスク」「産業データの未活用」「サステナビリティへの懸念」について掘り下げる。

【次ページ】Trusted Webのもたらすベネフィットや想定ケース
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