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- 2022/08/09 掲載
“郵便局のDX”をどう実現する? 「デジタルデバイド」を解消する思考とは
前編はこちら(この記事は後編です)
入社後わずか1カ月で子会社設立を提言し、すぐに了承される
飯田 恭久氏(以下、飯田氏):私は2021年4月に楽天グループから日本郵政グループに移りました。移籍の発端は、2021年3月の「日本郵政と楽天の大型の資本提携」です。これに伴い、日本郵政グループ側から「DXを推進したいのだが、楽天グループからも人材を出してくれないか」と打診を受け、翌月には日本郵政グループのCDO(最高デジタル責任者)に着任しました。着任当初は、日本郵政グループ本体の中で直接DXを推し進めるつもりでした。しかし着任後、いろいろと内部事情について学ぶうちに、本体の中でDXを推進するとかなり時間がかかりそうだということが分かってきました。
そこでスピード感を持ってDXを進める方法を模索する中でたどり着いたのが、より機動的かつスピーディーに動ける子会社を作るという方法でした。早速、着任して1カ月後に社長の増田に「子会社を作らせてください」と進言したところ快く了承してもらったので、2021年7月にJPデジタルを設立しました。
私のように外から来た人間が入社1カ月後に「会社を作らせてくれ」と言って、その2カ月後にはもう会社が立ち上がったというのは、日本郵政グループとしては前例のないスピード感だったのではないでしょうか。しかし、競合を考えるとDXを推進するにはそれぐらいのスピード感でないとダメですし、もともとデジタルビジネスの世界にいた私からすれば、むしろ遅いぐらいだと感じています。
それに社長の増田も「何かを変えていかないといけない」「そのためにはやはりスピード感を持って取り組まなくてはいけない」という課題感を持っていたはずです。そこにビジネス環境の変化が激しく、スピードを重視するIT業界出身の人間が現れたので、快く承認してもらえたのだと思います。
失敗が許されない組織に「チャレンジ」を持ち込む
飯田氏:日本郵政グループは巨大な組織ですから、DXのような新たな取り組みの意義について、すべての方の理解を得るのはなかなか大変です。そこで郵便局の現場の方々も含めてなるべく多くの方々と直接対面でお会いして説明する機会を設けたり、メディアの取材を受けて外部媒体を通じてメッセージを発したりと、あらゆる機会をとらえ「日本郵政は今こんなことをやろうとしている」と発信しています。1人でも多くの社員にDXを「自分事」にしてもらえるよう、地道な努力を積み重ねるほかないのです。
柴田 彰則氏(以下、柴田氏):私はもともと日本郵政のIT部門の中でデジタル施策の必要性を訴えており、部門横断型の「DX推進室」が創設された際、その立ち上げメンバーに加わりました。その後、DX推進室を中心にさまざまなDX施策を企画したのですが、飯田が入ったことで意思決定や取り組みのスピード感が一気に変わりました。
それまでの日本郵政グループの仕事の進め方は、どちらかというと「絶対に失敗しないよう万全を期して物事を進める」というやり方でしたが、飯田は「失敗を恐れずにまずは1回やってみて、ダメだったら次の手を考えればいい」という方針を提示してくれたのです。
飯田氏:日本郵政グループは極めて公共性の高いユニバーサルサービスを提供しています。「郵便物を届ける」など失敗が決して許されない業務も数多く存在します。そうした業務を堅実に遂行するのはもちろん大切ですが、新たな価値を創造するには、やはりトライ&エラーが不可欠です。
これまで日本郵政グループにはなかったこの新たな価値観を組織に根付かせるために、「失敗を恐れてチャレンジしないことがリスクなんだ」というメッセージを、着任以来、しつこく発信し続けています。
JPデジタルの「本当の役割」とは?
飯田氏:JPデジタルの使命はもちろん、日本郵便グループのDX推進ですが、「JPデジタルがすべて請け負います。グループCDOが担います」ということではまったくありません。その本当の役割は実は「きっかけをつくること」です。今まで日本郵政グループでは各事業がよく言えば集中し、「たこつぼ」というか、サイロの中でいわば盲目的に業務に当たっている状態でした。歴史の長い組織にありがちですが、外部からの刺激が少なく同質性が高いため、「これまでのやり方」を尊重する傾向にあったのです。
そのため、「こういうことをやりたい」と予算を確保しても、「ベンダーさんお願いします」となってしまい、内部の方たちには、経験値がたまらないのです。そうではなく、「自分たちでやれるところはやりましょう」と。
JPデジタルはグループ会社であるため、身内の中でやれることは支援し、手足も動かすのですが、「顧客満足を高めるための気づき」をグループ全体にどんどん促して、デジタル化や効率化の先にお客さまがいることを認識してもらう。そのきっかけをつくることが私の大きな役割の1つです。
【次ページ】内部のビジネス人材と外部から来たデジタル人材の「化学反応」を狙う
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