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- 2022/05/11 掲載
メタバース集客のカギは「クリエイター」? サンリオのバーチャルフェスが成功したワケ
セカンドライフ隆盛時と現在のメタバースの決定的な違いとは?
冒頭、三井物産の押尾 太一氏は、メタバースなどのバーチャル空間とリアルを結びつける「窓口」をテーマに据えた。テンセントは、日本国内ではゲーム会社としてのイメージが強いものの、中国ではミュージックやカラオケといったSaaSサービスを手がけており、さらにそれらのサービスを裏側で支えるPaaS、IaaSなどのビジネスを展開している。そして、強力なユーザー基盤として、コミュニケーションプラットフォーム「WeChat(微信:ウィーチャット)」を有している。「こうしたプラットフォームの存在が、バーチャル空間への窓口として機能しているのではないか」と押尾氏は指摘する。
また、同氏は「たとえばセカンドライフが注目された時期には、バーチャル空間に入るために、ハイスペックのゲーミングPCが必要だった」と述べ、ユーザー、端末に依存していた環境をいかにオープンにするかが、メタバース利用のカギを握っていると主張する。さらに「プラットフォームからバーチャル空間にシームレスに移行できることは大きな武器になる」との見解を示した。
その意見にHIKKYの角田 拓志氏も同調する。「セカンドライフのときは、ヘッドマウントディスプレイは30万~40万円するのが普通だった。現在は3万~4万円で入手可能になり、5Gなどの通信インフラやデバイスの進化もあり、よりアクセスしやすくなっている」と語る。さらに、ユーザビリティの面では「1クリックでバーチャル空間にアクセス可能な裏側のエンジンや、導線の作り方が出てきている」と述べる。
さらに角田氏は「バーチャル空間の価値、楽しさとは『人と一緒にいられる双方向性』にある」と分析する。
「今後、バーチャル空間は、テクノロジーの観点、ユーザー体験の観点でも日進月歩の領域であるため、今後、多くの人にとって『入口が広く、中身が楽しい』世界を実現していけるだろう」(角田氏)
メタバースは「可視化できない楽しさ」がある
続いて、メディアとしてバーチャル空間に関する啓発、情報発信を続けるMoguraの久保田 瞬氏は「オンラインでのイベントは、場の盛り上がりが見えない側面がある」と指摘する。たとえば、1000人の参加者があった場合、その場の盛り上がりはリアルのイベントであれば一目瞭然だ。一方、オンラインでは、視聴する側は一人で見ているため盛り上がりが可視化しにくい。つまり、「バーチャル空間では臨場感の演出が大きな課題だ」と同氏は説明する。
また、久保田氏は、多くのユーザーがバーチャル空間にゲームで親しんだ経験を持っており、操作の感覚にも慣れている点に触れた。さらに、こうした体験をベースに、ゲームだけでなく、イベントなどのさまざまなサービスが生まれているという。現在のバーチャル空間には、消費を喚起して買い物ができるサービスなど「ワイワイ盛り上がりながら体験することができるサービスがある」(同氏)。
しかし、そうした場の盛り上がりは、どうしても外からは見えにくい。メタバースは「アバターが自由に動き回ってゲームっぽいもの」という解釈をされやすいため、その先入観をいかに払拭できるかが重要なテーマだとの見解を示す。そして、メディアとしては、日々進歩を続けるバーチャル空間の動向を愚直に伝えることが大事だと語った。
角田氏、久保田氏の話を受けて、押尾氏は「ビジネスの側面からは、誰にとって楽しいのか、マスなのかニッチなのかという面から見て、これまでの一部のニッチなターゲットから、どんどん利用者の裾野が広がっている印象を持っている」と述べた。
続けて、サービス面、インフラ面の充実によって「バーチャル空間は一部の限られた人向けのサービスではなくなりつつある」と話した。
【次ページ】サンリオのバーチャルフェスが成功した理由
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