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  • 2021/04/07 掲載

今はもう「部下を育ててはいけない」と言い切れる理由

連載:部下を「育てない」マネジメント術

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新入社員も数多く入社する4月。コロナ禍の終息が見通せない中、会社組織におけるリーダー層へのプレッシャーは高まる一方だが、ハラスメントへの恐れから部下に厳しくあたるのもためらわれる。果たして、「成果」と「育成」の両立は可能なのだろうか? 悩めるリーダー層に対して、「部下を育ててはいけない」と断じているのがリクルートやライブドア、ZOZOなどで活躍した後、現在は「田端大学」の塾長を務めている田端信太郎さんである。『部下を育ててはいけない』を上梓した田端さんにこれからのリーダーのあり方を聞いた。

田端 信太郎

田端 信太郎

オンラインサロン「田端大学」塾長。1975年石川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。NTTデータを経てリクルートへ。フリーマガジン「R25」を立ち上げる。2005年、ライブドア入社、livedoorニュースを統括。2010年からコンデナスト・デジタルでVOGUE、GQ JAPAN、WIREDなどのWebサイトとデジタルマガジンの収益化を推進。2012年NHN Japan(現LINE)執行役員に就任。その後、上級執行役員として法人ビジネスを担当し、2018年2月末に同社を退社。その後、ZOZO コミュニケーションデザイン室長に就任。2019年12月退任を発表。

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部下にどう接すればいいのかと悩むリーダーは多い
(Photo/Getty Images)

上司は限りある時間を何に使うかをよく考えろ

 まず大前提として、「部下を育てるのは成果をあげるための手段ではあっても目的ではない」というのが田端さんの考え方だ。たしかに「ものづくりは人づくり」とも言われるように長い目で見れば良き人を育てることが良きものづくりにつながるのはたしかだが、ビジネスの現場で「部下を育てることに一生懸命のあまり目標を達成できませんでした」という言い訳は絶対に通用しない。

 上司の役割は「部下を通して成果をあげる」ことだけに、そこには「部下を育てる」ことも含まれていると誤解されがちだが、大事なのは「部下のアイデアを引き出し力を結集する」ことであり、「すべての部下を育てる」必要はない。今の時代、上司はとても忙しい。部下も育て、成果もあげてなどとあれもこれもやるほどの時間がない以上、限られた時間をどのように使えばいいかをよく考えることが大切だ。

 そもそも「部下を育てる」ことと、「組織の目標を達成する」ことはトレードオフの関係にあり、両立しにくいものだけに、「部下を育てる」にしても、自分の限りある時間をある程度割いてでも指導する価値がある人間かどうかを選別して、その価値ある人間だけを育てるというのが正しい選択となる。

 上司に求められているのは成果をあげることだ。部下が成果をあげるうえでのボトルネックなら部下を育てることも必要だが、育てることが無理な部下がいるなら、選別すればいい。そのうえで見込みのある部下には「環境」を用意する。そうすれば自分で考え動くことのできる部下は「自分で育つ」ことになる。

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見込みのある部下は「自分で育つ」ことになる
(Photo/Getty Images)

「千本ノック」が人をプロにする

 では、部下が自分で育つためには何が必要かというと、田端さんによると「まずはひたすらに量をこなすこと」だという。田端さんが大学を卒業して最初に入社したのはNTTデータだが、配属されたメディア業界向けのデジタル放送システムの営業を担当する部署には信じがたいほど大量のやるべき仕事があった。

 日中は顧客などとのアポを数件こなし、帰社して会議に出る。夜になってようやくデスクワークだが、終電で帰れたらラッキー、会社の応接室のソファで寝ることもしばしばという生活だった。

 結果的に同社は2年で辞めることになるが、そこで「千本ノック」のような大量の仕事をアウトプットし続けた経験は田端さんにとって本当に貴重な時間だったという。

 限界を超えるほどの仕事を続けることで、自分のキャパは確実に広がる。「こんな量は絶対無理だ」というレベルの仕事を必死にやり続けていると、1週間前には不可能に思えた仕事さえこなせるようになっている自分に気づくことができる。圧倒的な努力で、大量の仕事をこなしていると、量をこなせるようになるだけでなく、質も格段に上がることになる。

 もちろんこんな生活を何年もダラダラと続ける必要はないが、プロのアスリートが人間の限界とも思えるような滅茶苦茶な練習を経て一流になっていくように、ビジネスパーソンもがむしゃらに量をこなす時期が何年かあって本物のプロに成長できる。

 中には「そんなブラック企業のような生活はできない」と反論する人もいるだろうが、田端さん自身は当時を振り返って「会社に収奪された」的な意識や被害者意識はまるでなく、「貴重な蓄積を得た時機だった」と捉えており、それどころか「今の基礎体力のトレーニングがぬるい若い人に、おっさんでも負ける気がしないな」と言い切れるほど若い時にしゃにむに働いた経験は今に生きている。

【次ページ】部下に楽をさせる上司は本当に部下思いなのか

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