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  • 2021/03/05 掲載

データで見る「ネット炎上」 炎上事案はどれだけ増えたか?メディア側の変化も影響

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コロナショックにより激動だった2020年だが、実は“デジタル・クライシス”拡大の年でもあった。デジタル・クライシスとは、これまであったWEB上のリスク(デジタルリスク)、ネット上の風評被害、SNSでの炎上がさらに進み、企業の社長交代や業績悪化、株価下落、果ては廃業といった、正に“クライシス”を招いてしまっている現状のことを指す言葉だ。2020年は1400件以上発生し、その拡大傾向は2021年になっても続いている。今回は最新のリスク傾向について、2021年1月に筆者が所属する「シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所」が発行した「デジタル・クライシス白書2021」(以下「白書」と記載)の調査結果から、考察していく。

2020年4月は「前年同月比3.4倍」の“炎上”発生

 シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所の調査によれば、2020年は年間で1,415件の炎上事案(SNS上で100件以上の言及がなされたネガティブ事象と定義)が発生している。そしてそのうち約25%が従業員300人未満の企業であった。これは、前年比で約15%増の数字だ。

 世間で話題になっている炎上事案は芸能人や大企業のものが多いが、実はその裏ではさまざまな規模の企業に多くのリスクが生まれ、クライシスに行き着いてしまう可能性があったということだ。そういった意味では、本記事を読んでいる皆さんの会社にも、例外なくそのリスクが存在しているとも言えるだろう。

 月ごとの傾向を見ていくと、特に国内において最も社会的不安が高まった4月においては、前年同月比で3.4倍(72件→245件)にも増加している。

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2020年4月は、国内でも不安が高まった時期だった
(出典:シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所「デジタル・クライシス白書2021」より)

 ここで1点補足しておくと、炎上事案発生件数の「前年比15%増」という数字だけ見ると「思ったより増えていない」という感想を抱かれるかもしれない。しかしながら内容を吟味してみると、5月以降は企業側が世の中の空気を察して積極的なプロモーションやPR活動を自粛しており、「キャンペーン」等の実施が少なかった夏~秋はコロナの第二波が到来したにもかかわらず炎上件数は少なかった。

 一方で、企業のキャンペーンが再開し始めた秋以降は再び炎上件数が伸び始めたという傾向が見られる。もし企業側が例年通りにキャンペーンやPR活動を行っていた場合は、15%よりも多くの増加になっていたと推測されるということは留意しておきたい。

芸能人死亡に端を発する“不寛容な空気”が炎上を加速させた

 では、なぜ4月はこれほど炎上が発生したのか。実は2020年の日本において、コロナ関連のTwitter投稿において最もネガティブな投稿が増えたタイミングというのが、3月末に国民的タレントの志村けんさんが死去されたタイミングであった。その際に国民の不安が最高潮に達し、そのまま1回目の緊急事態宣言へと進んでいく。

 そう考えれば、4月がこれだけの炎上件数となったのは、やはり社会的不安の高まりが影響したと言えるだろう。ネット上でもネガティブな雰囲気が蔓延し、またリアルにおいても“コロナ差別”や“自粛警察”も登場し始めたタイミングでもあった。

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TDSE提供のソーシャルアナリティクスツール「Netbase」を使用し「コロナ」が含まれるTwitter投稿を分類
(出典:デジタル・クライシス総合研究所調べ)

 そうした環境においては、ちょっとしたことが怒りにつながり、極端な反応を誘発させる。また10年前の東日本大震災の時とは違い、「みんなで乗り越えよう」といった団結を呼びかけるメッセージも、批判の対象となった。

 とある有名アーティストの一致団結を呼びかける投稿は、「いい子ぶるな」という言葉によって削除に追い込まれた。このように“不寛容な空気感”は企業や有名人とユーザーとの分断を生み、これまでの常識では到底理解できない「言いがかり」のような絡まれ方に発展してしまったのだ。

 これらを踏まえると、やはり社会的不安が炎上件数の増加、つまりはデジタル・クライシスのリスクの高まりを生んでいると言えるだろう。そのような状況の中で、企業は難しい経営を強いられることになる。売上を安定させるためには販売促進が必要であり、また従業員の労働力確保が必要であるが、そこにはこれまで想定していなかったリスクが存在するということを忘れてはならないのである。

 果たして2021年の残りの期間は、企業としてはリスクと販売促進のてんびんをどのように考えるべきだろうか。なかなか答えは簡単には出ないだろう。

半数が発生から24時間以内に記事化、“営業日”は関係なし

 白書のデータを紐解くと、炎上事案が発生した後に何らかのメディア(ネットメディアも含む)で記事化や放送されたスピードを調査したところ、調査対象の48%が24時間以内に記事化・放送されたことが分かった。

 つまり炎上事例の約半数がたった1日でメディア掲載されるということである。2019年の同調査では21.4%だったことを踏まえると、2020年にかなり加速したと言えるだろう。つまり企業が炎上リスクに対応するためには、リスクとなる炎上の芽をなるべく早く発見し、そしてその対応を1日以内にすることが求められるということだ。

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無作為に抽出した100件の炎上事案を分析
(出典:「デジタル・クライシス白書2021」より)

 もちろん、土日祝日などの「営業日」の概念は存在しない。その前提でリスクに対する体制を構築していなければ、担当が気づいたころにはネットニュースなどに取り上げられてしまい、消費者や株主などから「どうなってるんだ」という声が殺到する事態となり、後手に回り続けた挙げ句には経営陣による記者会見といった危機的な対応に行き着いてしまう可能性もある。

 なぜメディア側のスピードが速まっているのかをさらに深掘りしてみると、メディア側の苦悩も見えてくる。コロナによる巣篭もり需要を見越して、よりユーザーの興味を惹いて自社Webサイトのアクセス数を増やすため、最新の話題を素早く記事化しようと試みているのだ。

 その結果、記事化や放映までのスピードが速まっただけではなく、「非実在型炎上」と呼ばれるように、実際は批判投稿が少ない事象においても「〇〇に批判が殺到!」といった見出しで記事化し、アクセス数を稼ごうとするメディア側の姿勢も目につくようになった。これは「フェイクニュースの増加」にもつながっている。

 この実態を踏まえると「火種をすぐに察知できるモニタリング体制の構築」と「リスク発生時にすぐに配信できるプレスリリースやSNSでの投稿などのスタンバイコメントの事前準備」が必須となるだろう。

 事案が記事化される前に企業側の発信をしておくことで、記事化後に広く拡散することになるメディアの記事内に「企業側はこのようにコメントしている」と対応状況を記載してもらうことができ、「企業は何もしていない」といった印象を避けることができるのだ。これは加速する炎上リスクに対するその後の対応において、非常に効果が大きいと言える。

【次ページ】5000人のアンケート調査からの気づき、2021年の最新トレンドは?
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