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  • 2020/12/10 掲載

ロシア発チャットツール「テレグラム」が犯罪に使われるワケ E2EEは両刃の剣だ

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オンライン会議ツールのZoomは、大手企業や政府系機関では利用が解禁されていないことがある。通信が「E2EE」(エンドツーエンド暗号化)で保護されていないことが理由とされており、Zoomは現在E2EEをサポートすべくテクニカルプレビュー版でテストを行っている。対して、ロシア発のチャットツール「テレグラム」はE2EE機能を実装している。にもかかわらず、テレグラムもまた一部の規制当局に目をつけられている。それはなぜか?
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なぜテレグラムは犯罪者が好んで使うのか
(写真:ロイター/アフロ)

犯罪者に利用されるテレグラムとは

 テレグラム(Telegram)というチャットツールをご存じだろうか。国内ではそれほどメジャーではないが、2013年にロシアで開発・リリースされたコミュニケーションツールだ。開発にはロシアの代表的なソーシャルネットワーク「VK」の創設者が関わっており、運営元は非営利団体となっている。

 ダイレクトメッセージやチャット機能だけでなく、音声通話、ファイル交換などの機能も充実しており、無料アプリとあって、現在全世界で4億人のユーザーがいると言われている。ホームページもよくできており、Google Play、App Storeでダウンロード・インストールできる普通のコミュニケーションツールと言える。

 しかし、最近、特殊詐欺や闇バイトのニュースで「犯人はテレグラムで連絡を取っていた」という解説を耳にしたことはないだろうか。近年、犯罪者同士の連絡、詐欺師と出し子の連絡にもっぱら利用されているのがテレグラムだ。また、ランサムウェアで犯人が被害者との連絡にテレグラムのアカウントを指定してくることもある。


ロシアでは一時利用禁止にもなった

 テレグラムが犯罪者にも好んで使われるようになったのには理由がある。高機能で無料ということに加え、本当の意味でのE2EEの通信機能が実装されており、運営側でも通信内容を見ることができない秘密性が確保されているからだ。さらに、通信ログの保存時間を指定できるので、裁判所の命令があったとしても、通信履歴をたどることが難しい場合がある。

 E2EEやログの自動消去は、多くの国において憲法レベルで保証されている「通信の秘密」「プライバシー」の観点からは、まったく問題ない。それ自体は合法的な機能だが、犯罪者にとって都合が良い機能であることも確かだ。

 そのため、ロシアでは2018年から20年6月まで公式には利用が禁止されていた。テロ犯の通話記録の開示を運営が拒んだためというのがその理由だ。現在、運営元(Telegram FZ LLC)の拠点は現在、ロシアを離れUAEにある。UAEの前はドイツに拠点があったこともあるが、拠点の移動はロシアによる規制から逃れるためとの分析もある。

 もっとも、ロシアでテレグラムが禁止された後も、多くのユーザーが使い続けていたそうだ。

違法性はないが監視対象にされがちなテレグラム

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Zoomに求められているE2EE機能こそが、テレグラムが当局から規制・監視される原因となっているという皮肉
(Photo/Getty Images)

 テレグラムが禁止されたり法執行機関の監視対象になったり、企業のブラックリストに載ったりという傾向は、ロシアだけではない。西側諸国にも「テレグラムは犯罪者が連絡用に使っている」という認識はあり、日本でも警察が監視の目を強めている。ツイッターには、街中でテレグラムを使っていただけで警察から職務質問をされたという投稿もあった。

 繰り返しになるが、テレグラムや暗号化通信そのものに何ら違法性はない。にもかかわらず、政府や規制当局にとってテレグラムは、特殊詐欺、児童ポルノ、違法ドラッグ、テロリストに直結したものとして「マーカー」代わりにされている。

 Zoomは、CEOが中国籍でありE2EEに対応していなかったため、政府や軍関係、重要インフラ産業では利用が禁止、または推奨されない状態にある。Zoom側は疑惑を払拭するため中国国内のサーバ利用を止めたりE2EE機能の実装に取り組んでいる。一方テレグラムはE2EE機能を実装しているため当局から規制されたり監視対象となっている。

 まったく皮肉としかいいようのない構図になっている。

【次ページ】テレグラムは禁止すべきか? 各国の考え方
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