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- 2020/12/01 掲載
「PACS」とは何か?基礎知識、市場動向、主要製品・メーカーを一挙解説
「PACS」とは何か?
「PACS」とは、「Picture Archiving and Communication System」の略称で、日本語では「医用画像管理システム」「医用画像ネットワークシステム」「医用画像伝送システム」などと呼ばれている。一言で表すと、医療現場の検査画像をデジタルデータで保存・管理し、必要に応じて情報を参照・共有できる仕組みのことだ。医用画像とは、X線(レントゲン)検査やCT(コンピュータ断層診断装置)、MRI(磁気共鳴診断装置)などの医療機器で撮影された検査・診断画像のことを指す。
CT/MRIをはじめ「DR(デジタルX線撮影装置)」や「CR(コンピュータ・ラジオグラフィ)」、「XA(血管造影X線診断装置)」、「US(超音波診断装置)」など医用画像の撮影装置は「モダリティ」と総称される。
撮影室でモダリティを用いて撮影されたデジタル画像はネットワークを通じてデータベースサーバ(DICOM(注)サーバ)に保管される。医療従事者は、読影室や診察室などさまざまな場所でビューア機能を備えたクライアント端末(PCやタブレット)からリアルタイムに画像を閲覧・参照できる。
PACSは、このように医療機関で発生するすべての検査画像をデジタルデータで保存し、その配信から診断までの一連のワークフローを総合的に管理するシステムであると言える。
PACSのメリット
物理的なフィルムで画像を管理すると、フィルムの取り違えや紛失が発生するリスクもあるが、PACSでは画像をIDとひも付けてデータとして保管するため、人的なミスを回避できる。医療機関にとっては、フィルム保管スペースを削減でき、画像媒体を搬送するための煩雑な業務を効率化できると言える。また、画像媒体の紛失や経年劣化などが少ないというメリットもある。
また、画像データを患者と見ながら診察したり、診断画像をメディアに保存して患者に渡すことも可能だ。同一患者の過去の画像との比較も容易となり、患者への説明や確度のより高い診断にも役立てることができる。
PACS普及の背景
PACSの重要度が増した背景として、近年、医療現場における医用画像のデジタル化とネットワーク化が進んでいることが挙げられる。従来はX線(レントゲン)フィルムによる画像診断が基本的に行われてきたが、医療機関でモダリティが普及するに伴い、デジタル画像診断が主流となっているのだ。
今後は、PACSを起点とする画像情報の共有や参照容易性を生かした「遠隔画像診断」のニーズも高まることが予想される。
日本のCT、MRIの人口10万人当たりの保有台数は世界1位で、検査数は増加傾向にあるが、慢性的に放射線科の専門医師が不足しており、その早期の解決が望まれている。遠隔画像診断の普及には、PACSの力は欠かせないものになるだろう。
拡大する「クラウド型PACS」
デジタル化された医用画像は、モダリティの機能が向上するとともに高詳細、大容量化してきた。そのため、保管データの量が増大するにつれて、管理コストや運用負荷の増大なども懸念されている。そこで中小規模の病院や診療所での導入が進んでいるのが、「クラウド型PACS」である。クラウドサービスの利用形態としては、PACS画像をクラウド上の外部データセンターに保存・保管する「外部保管型サービス」、地域医療における「情報共有連携サービス」、緊急時に外部画像を参照するサービス、画像読影のサービスなどがある。
PACSの市場規模動向をまとめているシード・プランニングでは「クラウドサービスには他施設との連携が容易、自前で保守管理をする手間がない、価格が安いなどのメリットがある。PACS導入においても、クラウド基盤は確実に浸透して市場を拡大している」と説明する。
さらに、「2010年ごろからクラウドコンピューティングが本格普及し、厚生労働省の『診療録等の保存を行う場所について』の一部改訂通知などで民間事業者への外部保存が認められたことを契機に、PACSは現在、第4世代を迎えている」との見解を示す。
【次ページ】PACSの市場規模、主要ベンダー、アナリストによる将来予測
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