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  • 2020/07/06 掲載

デンソーがKubernetesを自動車に載せる「Misaki」発表、OSSで公開予定

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自動車部品大手のデンソーは、自動車向けにKubernetesを実行するためのソフトウェア「Misaki」を、6月13日に行われたオンラインイベント「KubeFest Tokyo 2020」で発表しました。

新野淳一(本記事は「Publickey」より転載)

新野淳一(本記事は「Publickey」より転載)

ITジャーナリスト/Publickeyブロガー。大学でUNIXを学び、株式会社アスキーに入社。データベースのテクニカルサポート、月刊アスキーNT編集部 副編集長などを経て1998年退社、フリーランスライターに。2000年、株式会社アットマーク・アイティ設立に参画、オンラインメディア部門の役員として2007年にIPOを実現、2008年に退社。再びフリーランスとして独立し、2009年にブログメディアPublickeyを開始。現在に至る。

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Kubernetesを自動車に載せる、デンソーが「Misaki」を発表
(Photo/Getty Images)
 自動車は現在スマート化やネットワーク化が急速に進んでいます。自動運転を目指した自動車の進化を見るまでもなく、今後多くのコンピュータリソースが自動車に搭載されるようになり、そこで実行されるアプリケーションの重要性が高まっていくことは間違いありません。

 デンソーが発表した「Misaki」は、このようなアプリケーション実行環境としての自動車をクラウドを中心としたネットワーク化された分散アプリケーション環境のエッジと位置づけ、その基盤をKuberenetesで実現するためのソフトウェアです。

 Misakiによって、自動車向けアプリケーションがコンテナで開発、実行できるようになり、またMisakiが提供するサービスメッシュ機能により、アプリケーションは自動車の不安定なネットワーク環境を意識せずに開発でき、アプリケーションの自動車へのデプロイやアップデート、削除なども集中管理可能となります。

Misakiのアーキテクチャ

 Misakiのアーキテクチャは以下の図のようになっています。図の右から、Misakiのユーザーインターフェイスがあり、ここでデプロイしたいアプリケーションのHelm Chartを選択すると、その左にあるGoで作られたAPIが呼び出されます。

 ここでKubernetesのManifestファイルが生成され、それがEclipse dittoで作られたデジタルツインに展開されます。

 デジタルツインとは直訳すればデジタルな双子という意味で、一般にはなんらかの対象をコンピュータ上の論理的な存在として再構築する、というものです。ここではManifestファイルの展開先のデジタルツインが用意されているようです。


 dittの左側にあるのがCloudおよびEdgeとしての自動車の上で稼働しているKubernetesクラスタです。このKubernetesクラスタはマスターノードがクラウド上で稼働しており、VPN接続されたワーカーノードが自動車の上で稼働している、という状態になっています。

 そしてマスターノード上にはMisakiのエージェントが稼働しており、デジタルツインのステートが変化すると、それを反映してManifestファイルを取得します。

 するとそのManifestファイルに従って、自動車の上で稼働しているKuberntesのワーカーノードにアプリケーションがデプロイされる、ということになるわけです。

 KubeFest Tokyo 2020でMisakiのプレゼンテーションを行ったデンソーのソフトウェアエンジニア Kenta Suzuki氏は、自動車のアプリケーション基盤にKubernetesを採用した理由として、リソースを柔軟で効率的に管理できること、そして今後の自動車ではアプリケーション実行環境が高性能なECU(Electronic Control Unit)に集約され、そこではワーカーノードを実行できるようになると予想しているからだと説明しています。

クラウドとのあいだでワーカーノードを柔軟に。サービスメッシュ機能も

 コンピューティングリソースの柔軟で効率的な管理については、自動車のコンピューティングリソースの不足分をクラウドで補う仕組みもMisakiに持たせる予定であることが説明されました。

 たとえば、ABCの3つのワーカーノードを実行する能力がある高性能なECUを搭載した自動車(下図の上)がある一方で、ワーカーノードを1つしか実行できない能力のECUしか搭載されていない自動車など、自動車のコンピューティングリソースは車種やグレードによって異なることが予想されます。

 このときMisakiでは、コンピューティングリソースの乏しい自動車でのアプリケーション実行時には、自動車のECUでは実行出来そうにないワーカーノードをクラウド上で実行することで、全体としてアプリケーションの実行を可能にしようとしています。


 自動車とクラウドの間のネットワーク回線はつねに安定した通信ができるとは限りません。そこで、Misakiにはサービスメッシュの機能も持たせ、ネットワークが不通の時には自動的に通信内容をキューイングし、接続が可能になれば自動的に転送を行うようにすることで、自動車の上で実行されるアプリケーション側でネットワークの接続状態を気にせずに実装できるようにしています。

【次ページ】将来、自動車の多くにKubernetesが搭載されるか
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