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  • 2020/06/11 掲載

神田昌典氏が解説、なぜデジタル時代は「言葉」と「構成」が重要なのか

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ビジネスパーソンにとって、「言葉」は最大の武器だ。人の気持ちを動かし、その行動を変えることも可能だからだ。ただし、デジタル時代になり、情報があふれかえる今は、その使い方が極めて重要になる。「言葉」という縦糸は、「構成」という横糸を伴って初めて、価値を生み出す──こう語るのは『売れるコピーライティング単語帖』を上梓した、経営コンサルタントの神田昌典氏、コピーライターの衣田順一氏だ。両氏に「言葉」の使い方と「構成力」を身に着ける方法について解説してもらった。
執筆:神田昌典、衣田順一

執筆:神田昌典、衣田順一

神田昌典(かんだまさのり)
経営/創造的課題解決コンサルタント
アルマ・クリエイション 代表取締役
日本最大級の読書会『リード・フォー・アクション』発起人
特定非営利法人 学修デザイナー協会 理事
上智大学外国語学部卒。ニューヨーク大学経済学修士、ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営学修士。大学3年次に外交官試験合格、4年次より外務省経済局に勤務。戦略コンサルティング会社、米国家電メーカーの日本代表として活躍後、1998年、経営コンサルタントとして独立。『GQ JAPAN』(2007年11月号)では、“日本のトップマーケター"に選出。2012年、アマゾン年間ビジネス書売上ランキング第1位。2018年、マーケティングの世界的権威のECHO賞・国際審査員。現在、ビジネス分野のみならず、教育界でも精力的な活動を行っている。

衣田順一(きぬたじゅんいち)
アルマクリエイションズ コンテンツ戦略室 ディレクター

鉄鋼メーカーの住友金属工業(株)(現・日本製鉄(株))入社。国内・海外の自動車、大手家電など製造業向け営業を15年。営業企画部門で、新規のビジネスモデル構築とシステム構築を6年。会社合併後の営業系の業務システムの統合を6年。営業室長、企画部上席主幹(部長級職位)として組織をリード。脳性麻痺の子供への対応からテレワーク(在宅勤務)を志向。時間と場所の自由が効く、セールスライターという仕事に出会う。商品の魅力を文章で表現し、クライアントと買った人両方に喜んでもらえる点に惹かれ、同時に営業と企画の仕事との共通点も多く、これまでの経験も活かせると考え、セールスライターになる。現在は、アルマ・クリエイション株式会社及びクライアントのLP(ランディングページ)のライティングやアルマ・クリエイション株式会社のコンテンツ戦略の立案・実行を担当)

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経営コンサルタントの神田昌典氏
(2019年1月撮影)

営業職から大統領まで誰でも「稼ぐ言葉の技術」が必要

 世界的ベストセラー作家の、ダニエル・ピンク氏の調査によれば、「他人を説得し、影響を与え、納得させること」という広義のセールスに、職種を問わず、仕事時間の40%がとられており、しかも年齢が高くなるほど、その重要性は増している。つまり自分自身がセールスという仕事に関わっていると自覚していない人たちも、言葉の力の使い方をマスターすることは、仕事で成功を収めるうえで、もはや誰にとっても不可欠になっているのだ。

 そして、今や政治分野でも、コピーライティング技術は、選挙戦の決定打を握るほどになっている。2008年の大統領選で、オバマ陣営は、ウェブサイト上の申込ボタンのコピーを「Sign Up(登録する)」から「Learn More(もっと情報を知る)」に変えることで、18% 多くの購読者を獲得した。また2016年の米国大統領選で、トランプ陣営は得票数の確保に効果の高い言葉を見極めるため、56,000パターンもの広告テストを行っていた。

 人を動かす言葉は、通信販売ビジネス分野で蓄積してきた、約100年におよぶ広告テストの実証結果にもとづいていて、その効果測定が、デジタル革命によって精緻化されたことで、飛躍的に成否がコントロールしやすくなった。

 デジタル変革の時代に、誰でも擦れる「魔法のランプ」があるとするなら、それは、すでに私たちが日常で使っている言葉の力を、最大限に引き出すコピーライティングの技術である。

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コピーライティング力は、このデジタル時代に成功を収めるための“魔法のランプ”だ
(Photo/Getty Images)

人を動かす、文章の最小単位

 コピーライティングは、デジタル時代に数値が把握しやすくなり、結果に直結することが明確になったものの……、残念ながら、この技術を仕事に役立てている人は、あまりにも少ない。それには、理由がある。

 コピーライティングの世界は、奥深い。私は、25年ほど前に、外資系企業の代表をしていた際に、売上目標を達成しなければ、クビという状況下に置かれ、必要性に迫られて、コピーライティングを学び始めた。当初は、この技術はあくまでテクニックで、そこで活用される知識も、セールスやプロモーションといった営業分野に限定されると考えていた。

 しかし結果を上げようとすると、ありとあらゆる分野の知見が、面白いほど紐づいてくる。あるときには、「神田さんのセールスメッセージを読んでいたら、うつ病が治った」という連絡が入り、臨床心理士に理由を尋ねてみると、言葉の使い方が、カウンセリングとほぼ同じであると指摘された。

 またノーベル経済学賞の受賞で注目が高まる行動経済学の事例には、コピーライターの間で昔から指摘されてきた原則がたくさんある。たとえば、「顧客は意思決定の際に、合理性だけでなく、感情を重視する」という視点は、すでにコピーライターの間では常識だったことだ。

 このように学び始めたら、膨大な資料の山に埋もれながら、広告メディアの急速な進化に合わせて、コピーライティングの技術自体を進化させていかなければならない。これは、かなり複雑なプロセスだ。その結果、求道者以外には、敷居が高かった。

 しかも、比較結果を数値で出しやすいため、多くのマーケッターは、穴埋め式の見出し文やテンプレートに飛びついた。「売れる言葉」さえ手に入れば、それで仕事をしたつもりになり、本質を掘り下げて考えることがなかった。その結果、「言葉」と同様──いや、もしかして、それ以上に──「重要な要素」を、見逃してしまったのである。

 「言葉」と同様に、「重要な要素」とは、何か? その答えは──、「構成」である。「構成」とは、「何を」「どの順番で」言うか? それに対して、「言葉」とは、「何を」「どう」言うか? つまり読み手の反応を上げる、文章の最小単位は、

構成×言葉=反応率

となる。

 この縦糸と横糸を紡ぎ、販売する商品をわかりやすく提示できたとき、「売り手」のもとに、ぴったりの「買い手」が集まることになる。

【次ページ】人を動かす構成力につながる「PASONAの法則」とは
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