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  • 2020/03/06 掲載

日本ではイメージ良好のGAFA、なぜ世界中で嫌われているのか

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GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)に代表される巨大プラットフォーム企業が隆盛を誇るなか、世界中で「反GAFA」勢いを増している。新著『After GAFA 分散化する世界の未来地図(KADOKAWA刊)』を上梓した小林弘人氏が指摘する、日本ではイメージが良いGAFAがこれほどまでに嫌われている理由とは。
執筆:小林 弘人
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小林弘人氏が指摘するGAFAがこれほどまでに嫌われている理由とは

ドイツでのキャンパス建設を諦めたグーグル

 ドイツ、ベルリンのフリードリヒスハイン=クロイツベルク区(以下、クロイツベルク) は、さまざまな意味でいま、もっともホットなエリアといっていい。

 1990年以降、シュプレー河畔のベルリンの壁跡には、世界各国のアーティストが描いた100点以上の壁画が、1.3キロメートル以上にわたって続く。多くの学生やアーティストが暮らしていることもあり、センスのよいショップやカフェが立ち並ぶ。

 その一方、昔からトルコ系移民がトルコ人街をつくり、最近ではシリア系移民が増えていることもあって、ドイツのなかでもとりわけ東西・新旧文化の混淆(こんこう)が進んでいる。クロイツベルクを含め、ベルリンには高感度の若者や起業家、ベンチャーキャピタル(VC)や投資目的に事業支援を行なうアクセラレーター(投資などを目的に起業支援する者・組織)、さらには大企業のラボがヨーロッパ中、いや世界中から集まっている。

 そのベルリンのクロイツベルクで2017年末から、激しい住民反対運動が起こった。対象となったのは、トルコやシリアからの移民だったのか? 否、反対運動の矛先が向かったのは、グーグルだった。

 グーグルは同地区の工業用建物などを改築し、自社名を冠した「キャンパス」と呼ばれる起業家支援を行なうインキュベーション・ハブやコワーキングスペース、カフェなどをつくる計画を進めていた。それに市民団体が激怒したのである。

 理由はいくつかあるが、その一つに不動産価格の高騰がある。再開発によって高所得の人々が流入し、不動産価格が上昇、別の地域へと移り住まねばならない人が急増するという懸念だ。街中には、“Let’s stop the Google campus”などの文言が書かれたチラシが貼られ、「反グーグル」を売りにしたカフェまで登場。あまりの反対運動の激しさに、グーグルはキャンパスの建設を諦めた。

 しかし、日本人の感覚からすれば、これほど激しいグーグル反対運動が起こったのは、腑に落ちないのではないか。日本の大学生が就職したい企業ランキング(2019年2月28日付、マイナビニュース)で、グーグルは堂々の3位。日本の原宿や代々木、湾岸エリアあたりにグーグルがお洒落なキャンパスをつくるとなれば、みな諸手(もろて)を挙げて賛成し、そのキャンパスで働きたいと思うにちがいない。

 グーグルは新技術や新製品を開発する拠点を世界中に設けており、イスラエルのテルアビブやイギリスのロンドン、韓国のソウル、スペインのマドリード、ブラジルのサンパウロ、ロシアのワルシャワにキャンパスが置かれている。東京でも、2019年11月19日に「Google for Startups Campus」を、同日本本社が入る「渋谷ストリーム」内に開設した。

 ドイツでもグーグルは2014年にベルリンのミッテ区でファクトリーを開設している。ファクトリーとはコワーキングスペースやミーティングルームを備えた起業家のためのサロンで、そこで「製造」しているのはスタートアップ企業だ。ミッテ区はベルリン中部に位置し、かつては東ドイツの中心だった地域だが、古くからの住民がほとんどいないという点で、クロイツベルクとは異なる。

 さて、じつはクロイツベルクの反対派が怒ったのは、不動産価格の高騰だけではなかった。グーグルをはじめとするGAFAは、才能ある人々を次々と取り込んで巨大化し、ユーザーの個人情報を使って莫大な利益を上げる一方で、タックスヘイブンへの資金移動などのテクニックを駆使し、自国への納税を回避している、と非難したのである。

 2019年1月、フランスのデータ保護機関CNIL(情報処理と自由に関する国家委員会)が、個人データの収集についてEU(欧州連合)の法律であるGDPR(一般データ保護規則、2018年施行)に違反したという理由で、グーグルに5000万ユーロ(約62億円)の制裁金の支払いを命じた。民衆のグーグルへの反発が、このクロイツベルクには渦巻いていたのである。

なぜSXSWは急に内省的になったのか

 毎年3月にアメリカはテキサス州のオースティンで開催されるSXSWは、ITや音楽、映像、ゲームに関する巨大イベントであり、ツイッターがブレイクするきっかけになったことでも知られる。

 私も毎年SXSWを訪れ、新たに生まれる先端サービスの情報を仕入れながら、トレンドの変化を感じてきたが、2019年に開催されたSXSWの雰囲気は、いつもとはずいぶん異なっていた。

 まず開幕初日、米民主党議員で2020年大統領選の候補指名争いに加わるエリザベス・ウォーレン上院議員が登壇。「GAFA解体」を公約に掲げ、巨大テック企業による寡占を問題視する彼女が、テクノロジーの祭典であるSXSWに乗り込んだのだ。

 数年前であれば、ウォーレン氏のようなテクノロジー企業の敵と目される人物を開幕初日にSXSWが呼ぶことは、想像し難かった。さらに開催期間中、フェイスブックの関係者が登壇してスピーチしようとすると、セッションの参加者から「フェイスブックのせいで、うちの娘がイジメに遭っている!」「時価総額を上げることばかり熱心だが、フェイクニュースを何とかしろ!」という批判の声が上がったという話を参加した知人から聞いた。そうした批判の声が上がるたび、観客たちは拍手喝采し、会場が盛り上がったという。 

 私が参加したセッションでは、イングランド銀行などを顧客にもつイギリスのデジタル・エージェンシー「サイバー・ダック」のダニー・ブルーストーンCEO(最高経営責任者)が、暗にフェイスブックを念頭に置きながら、「デジタル時代の信頼は壊れている」というテーマで、これからの企業ブランドのあり方は「信頼ベース」をめざすべきだと強調した。

 その他のAI(人工知能)やブロックチェーンに関するセッションでもブルーストーン氏と同様、「信頼」「倫理」などの言葉が見られた。テクノロジー楽観主義に満ちたSXSWが、急に内省的になったかのようだった。

【次ページ】アマゾンもフェイスブックも嫌われる
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