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- 2019/09/18 掲載
アマゾン、アップル、グーグルがヘルスケア参入で激突、勝負の「決め手」は何か?
アマゾン、アップル、アルファベットのヘルスケア進出動向
「巨大IT企業とヘルスケア」と聞くと、イーロン・マスク氏が立ち上げたニューラリンク(Neuralink) のような最新テクノロジーを使った未来の医療をイメージがあるかもしれない。確かにそうした取り組みを行っている企業は皆無ではないが、ここではデバイスを使ったヘルスケアアプリの提供、従業員に対する健康保険やウェルネスプログラムの提供など、より幅広い意味でのヘルスケアを指す。たとえばアマゾンの場合、下記のような動きを見せている。
- カーディナル・ヘルス社と提携し、全米43の州で医療サプライのディストリビューションビジネスを展開。
- JPモルガンチェース、バークシャー・ハサウェイとのパートナーシップにより、自社の従業員に対する独自の健康保険プログラムを提供。
- アマゾンX(元はラボ1492という名称)という研究施設を持ち、ガン治療の研究に取り組む。
- ピルパックというオンライン薬局のスタートアップを買収。
- 治療を容易にするためのEHR(エレクトリック・ヘルス・レコード、電子カルテ)に直結するAIソフトウェアの販売を計画。
- 従業員のためのヘルスクリニックをパイロットプログラムとして実施。
アップルはこのような取り組みをしている。
- アップル・ヘルス・スタディなどの名目で以前から医療機関、大学などと連携してヘルスケアへのリサーチを行ってきた。
- iPhoneで利用出来るアップル・ヘルス・アプリでは全米39の病院と連携し医療記録を表示させることができる。
- アップル・ウォッチのECG(エレクトロ・カーディオ・グラム、心電図)機能はFDAの認可を受けている。
- 従業員に対する社内ヘルスクリニックの実施。
- 米退役軍人局と提携し、退役軍人に対するiPhoneでのEHRアクセスを検討中。
またアルファベット(グーグル)の場合はこうだ。
- 老齢化の問題に取り組む遺伝子研究チームの立ち上げ。
- アンドロイド、ウェアOSデバイス向けにグーグル・フィットというエコシステムを提供。
- ヘルス関連のイニシアチブを統括するため、デビッド・フェインバーグ氏をCEOとして雇用。
- Senosisというスタートアップを買収、グーグル傘下のネストによってデジタル・ヘルス・デバイスの可能性を追求。
- NLP(Neuro-Linguistic Programming、神経言語プログラミング)を用いたメディカル・デジタル・アシストの実現を、グーグル・ブレインという部門で研究中。
3社の強みと弱みとは?
ビジネスインサイダーによる比較によると、アマゾンの強みはAWS(Amazon Web Services)、アレクサ、サプライ・デリバリーにあり、アップルはiPhoneのコンシューマーベース、Apple Watch、またアップルストアの展開に強みがあり、そしてアルファベットはGCP(グーグルクラウドプラットホーム)、AI、クラウドインフラ、ライフサイエンスの実績などに強さを持つ。一方で弱点として、アマゾンは医療現場での実績の不足、ヘルスシステムとの関係性の弱さ、アップルはiOSに限定されたサービス、デバイスの効果についての実証不足、そしてアルファベットは事業が多岐にわたりヘルスケアとして統一されていない、プラットホームの効果についての実証不足、などが挙げられる。
しかし今後、3社共に個人的なヘルスケアアシスト、遠隔地の患者などのモニタリング、カスタマイズ健康保険の提供など、多様な可能性があるとも指摘されている。
【次ページ】米国でも進む高齢化社会
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