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  • 2019/10/16 掲載

【働き方改革】電通社員は毎朝「10種類の質問」を受けている

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近年、働き方改革に意欲的に取り組む電通。同社の取り組みを中心に、電通人事局 和田有子氏、組織論を研究する永山晋氏、ワーク・エンゲイジメントを研究する島津明人氏が日本最大級のチームリーダーカンファレンス「PxTX」に登壇し、働き方を軸に意見を交わした。モデレーターは予防医学研究者 石川善樹氏が務めた。
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セッションのグラフィックレコーディング。内容の詳細(一部抜粋)は下記


電通が着目したのは「バイタリティ」

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予防医学研究者 博士(医学)
石川 善樹氏
予防医学研究者 石川善樹氏(以下、石川氏):本日はチームや組織に関する研究をされている島津先生、永山先生と、実践の立場からの話を伺うために電通の和田さんにお越しいただいています。

電通 和田有子氏(以下、和田氏):最初に、私がここにいる理由をご説明させてください。電通では労働基準法違反で是正勧告を受けたことを背景に、2016年から労働環境改革を進めてきました。

 そうした動きの中で、「健康経営プロジェクト」が立ち上がり、さらに名称を生き生きと仕事をするための「バイタリティデザインプロジェクト」に改め、サステナブルにパフォーマンスを高めていける働き方を目指して引き続き意識改革に取り組んでいます。

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電通
人事局 HRM業務推進部長/バイタリティ・デザイン・プロジェクト
和田 有子氏

石川氏:健康とパフォーマンスの両立。島津先生、そもそもこの2つはトレードオフ構造のように捉えられることもあるんじゃないでしょうか。

慶應義塾大学 島津明人氏(以下、島津氏):本来パフォーマンスを上げるにはその原資としての健康も必要です。車の両輪のように、2つを同時に回していくことが大事です。

石川氏:電通では具体的に、どのような施策を行ったか説明いただけますか。

和田氏:「バイタリティノート」という仕組みをつくりました。毎朝社員が社内イントラにログインする際に、10個の設問の中から1問がランダムに出されます。社員は調子に応じて、6段階の顔絵文字で答えます。これにより、社員は自身のコンディションを記録していくことができ、自身の健康状態に気づいてもらえるという仕組みです。

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6段階の顔絵文字とバイタリティスコアのレーダーチャート・イメージ
(出典:電通 報道発表)

<バイタリティスコアを測定する 10 個の設問>
【睡眠】最近、睡眠状態はどうですか?
【笑顔】最近、笑っていますか?
【満足】最近、毎日の生活満足度は、どうですか?
【夢中】最近、仕事で夢中になることはありますか?
【思いやり】最近、職場で思いやりをもって接していますか?
【人間関係】最近、職場や仕事の人間関係は、どうですか?
【意義】最近、仕事のやりがいはありますか?
【成長実感】最近、仕事で自分の成長実感はありますか?
【責任達成】最近、仕事で自分の責任を果たせたと感じる機会はありますか?
【主体性】最近、自ら仕事を創り出していると思いますか?

島津氏:成果主義をとことん追求すると自分1人が目立つプレーヤーが現れがちです。質問の中に「思いやり」という利他的な行動を入れているのはすばらしいですね。

石川氏:さらに電通で行った全国調査では、ストレススコアと仕事のパフォーマンスとの関係も見ています。その結果、実はストレスの大小は仕事のパフォーマンスと高い相関はなかったといえます。一方で、「バイタリティノート」で測るバイタリティスコアが高いとパフォーマンスも高いことがわかった。ということは、「バイタリティノート」ではストレスチェックでは捉えきれていない何かを捉えられている可能性があります。

ストレスと創造性の関係、カギを握るのは上司

石川氏:ここで永山先生にお聞きしたいんですが、ストレスとクリエイティビティ(創造性)との関係については、専門家の間でどのようなことが言われていますか。

永山氏:2つあります。1つは皆さんも感じていらっしゃると思いますが、ストレスやプレッシャーはありすぎてもなさすぎてもだめだということ(ただし、実験的な活動に対する組織の理解や雰囲気が醸成されていることが条件 (注1) )。もう1つは、ストレスの原因となる現状の限界や制限をうまくクリエイティビティに転換できるかどうかは、リーダーがカギを握るということです。リーダーが現状の限界をゲームのようにポジティブな課題として捉え、チームに働きかけることが重要です(注2)。

注1:Baer, M., & Oldham, G. R. (2006). The curvilinear relation between experienced creative time pressure and creativity: Moderating effects of openness to experience and support for creativity. Journal of Applied Psychology, 91(4), 963–970.
注2:Rosso, B. D. (2014). Creativity and constraints: Exploring the role of constraints in the creative processes of research and development teams. Organization Studies, 35(4), 551–585.
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法政大学 経営学部 准教授
楽天ピープル&カルチャー研究所 アドバイザリーボードメンバー
永山 晋氏

石川氏:リーダーの強い意志や楽観性が関わってくるんですね。島津先生、ストレスとエンゲイジメント(仕事への没頭、会社への貢献心など)の研究からはいかがですか。

島津氏:最近は、ストレスの刺激を分類していこうという流れがあります。「チャレンジングな刺激」と人間関係の悪さなどの「妨害的な刺激」とを分けていく考え方ですね。チャレンジングな刺激はエンゲイジメントを高め、妨害的な刺激は逆に下げてしまいます。

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慶應義塾大学
総合政策学部 教授
島津 明人氏

石川氏:密接なつながりがあるんですね。改めて、和田さんにバイタリティノート導入後についてもお聞きしたいと思います。

和田氏:現在はバイタリティが何と相関しているのかを調べるため、データを蓄積している段階です。並行して、バイタリティが高いチームは何をしているのかをヒアリングによって明らかにしようとしています。

石川氏:ヒアリング結果はどうだったんですか。

和田氏:コミュニケーションの影響は相当大きいことがわかりました。上司に言われてうれしかったこと、嬉しかった一言をアンケート調査し、面白い意見を入口のエントランスホールに貼り出すという試みもしています。「よくやった」などの言葉をうれしかった言葉として挙げる人が多かったですね。

石川氏:これは永山先生のお話と共通していて、上司・リーダーとの関わりが大きいというのが面白いですね。

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