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  • 2019/04/25 掲載

東大卒僧侶が説く「部下が分かってくれないのは、あなたが分かっていないから」

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部下が思い通りに動いてくれない。パートナーが分かってくれない。子供が言うことを聞いてくれない――人間関係において、誰しもこのようないら立ちを感じたことがあるだろう。だが、「人は上からの判断を押しつけてくる相手に、心を開かない」と指摘するのは、中学を中退して家出、独学で大検を経て東京大学法学部を卒業後、政策シンクタンクで働いていたという異色の経歴の僧侶、草薙龍瞬(くさなぎ りゅうしゅん)氏だ。
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人間関係がうまくいく「アッパー型」コミュニケーション法とは?
(Photo/Getty Images)

悩んでいる人が最初に犯す意外な過ち

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 人との関係に思い悩んでいる人が、決まって陥っている“過ち”が、ひとつあります。それは、相手に向けている、自分の“判断”に気づいていないことです。

 判断とは、「自分はこう考える」「こうあるべき」といった物の見方や考え方のことです。仕事上の決まりやマナーなど「行動を決めるルール」(規範)もありますが、人との関係における判断とは“相手についての決めつけや思い込み”を意味します。

 たとえば、「あの人はいい人・悪い人」「あの人はこんな性格」「あの人は好き・嫌い」といった、その人への印象があります。「あなたはこうすべき」と、相手が従うことを求める判断や、「あの人とは付き合えない」と関わり方を決定する判断もあります。いずれも、「こうであるはずだ(それ以外は認めない)」という、決めつけ・思い込みを含んでいます。

 人はこうした判断を、当たり前のようにやっています。そのことで、多くの問題を引き起こしてもいます。たとえば、

  1. 親が、子どもの足りないところを見て、厳しく当たってしまう。
  2. 上司が、期待通りに動かない部下に、不満を募らせてしまう。
  3. 先生が、言うことを聞かない生徒を、力づくで従わせようとする。
  4. 男女が、わかってくれない相手に、物足りなさや淋しさを感じてしまう。

 こうした問題に共通するのは、判断が潜んでいることです。「相手のここが問題」「こう動くのが当然」「なのに従わない」「相手がおかしい」という判断です。

 一方的に判断している場合もあれば、互いに判断を向け合っていることもあります。判断する側は、ストレスを感じます。できることなら、うまくやりたいと思う。だが、どうすればいいか分からない。自分はこう思う。だが、相手は違うことを返してくる。不満。おかしい――そこで行き止まりです。

 他方、判断される側にも、ストレスが溜まります。分かってもらえていない。大事にされていない。こっちが問題であるかのように思われている。不満。おかしい――やっぱり行き止まりです。こうした行き止まりは、至るところで起きています。この膠着状態を打破するには、どうするか。

思い込みを解除する

 まず、相手を見ずに、自分を見ます。“自分の判断に気づく”ことから始めます。「相手のここが問題」「こうしなさい」「こうしてほしい」「なぜしないんだ?」「自分はこう考える」「これが正解に違いない」――こうした思い込み・決めつけがないか。自分が判断にとらわれていないかを、自問します。

 「これは、自分の判断かもしれない」と気づいたら、その思いから“離れる”ように努めます。「こうであるべき」という思い込みを、いったん解除するのです。

 もっとも、判断に慣れきった私たちは、「判断にとらわれた自分」に、なかなか気づけません。そこで「判断を自覚する」練習を行います。

  1. 日頃判断しすぎている――思い込みがある・決めつけている――かもしれないと自覚する。
  2. 事あるごとに「これは自分の側の判断ではないか?」と自問する。
  3. 日常の中でなにげなく下している判断の数々に気づく。ラベリングする。

 (3)は、判断を自覚する格好の練習になります。たとえば、お店でメニューを選ぶのも判断だし、青信号で進むのも判断です。そこで「メニューは、これがいいと判断します」、「青信号だから、進んでいいと判断します」と、言葉にしてみます。

 「~と判断します」とあえて言葉にすることで、ふだん無意識にやっている判断を掘り起こすのです。これが案外、判断を手放すことに効きます。「これは判断」と自覚できれば、別の考え方も可能になります。心が柔軟になるのです。

心は「判断されたくない!」

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うまくいかない&うまくいく人間関係
 次に努めるのは、判断の代わりに“相手を理解する”ことです。たとえば、

  1. 相手がしていることを、事実として理解する。
    「~している」(ふむ、分かった)

  2. 相手が語ることを、そのまま聞く。
    「あなたにとっては、そうなのですね」――そう感じているのですね・そう考えているのですね――と受け止める。

 こうして理解に努めることで、人間関係の根底が変わっていきます。

 というのも、心はそもそも“判断されることを望んでいない”からです。理解されることを求めています。心は、いろんなことを感じ、考えている。それを、誰かにわかってほしい。受け止めてほしい。その願いは、誰にとっても共通しています。

 その一方、心は判断されると苦痛を感じます。裁かれたり、評価されたり、押しつけられたりすると、心は、自由を否定された気がして、不快を覚えるのです。

 理解を求めるのは、心の性質です。ところが人は、自分の判断――自分はこう思う――で一杯です。判断することが当たり前だと思い込んでいます。

 だから、人のあり方もすぐ評価するし、批判するし、自分の判断に相手が従うのが当然だといわんばかりに、一方的に押しつけて、従わない相手に腹を立てます。これが、いかに一方的な、もっといえば暴力的なことか、人は気づくべきなのです。

 相手に向けている判断は、「自分が正しい」という“慢”(注1)に当たります。判断はときに必要ですが、それは目的に役立つ場合です。役に立たない判断を、ひとり正しいと判断するのは、自分に都合のいい判断でしかない。つまり、慢に当たるのです。

注1:仏教の世界で言う、承認欲がつくりだす、自分に都合のいい妄想のこと。傲慢、高慢、プライド、虚栄心、優越感、差別意識、油断、増長、独善など。

 一方には「理解されたい心」があって、他方には「判断したがる心」がある――この関係を続けるだけなら、「分かり合えない関係」に行き着くことも、自然です。そう思えてきませんか?

【次ページ】「上から目線」は最悪の判断
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