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- 2018/12/19 掲載
仕事の質が劇的向上、トヨタの社員が行っている「紙1枚」仕事法(2/2)
長すぎる物事は覚えていられない
なぜ私たちは、学んだことを忘れてしまうのか。 3つめの原因は、学んだ内容を「短く要約していない」から。私は普段、「紙1枚」書くだけの思考整理法やコミュニケーション法を、ビジネススキルとして広めています。「1枚」学習の初期に見られる現象の1つとして、思考整理の結果が、長すぎて、とても覚えられないということが起きてしまうのです。
たとえば以前、 1冊目の拙著『トヨタで学んだ「紙1枚!」にまとめる技術』(サンマーク出版)をテーマに、 1日完結のワークショップを開催しました。後日、受講された方が私に学習のまとめを共有してくれたのですが、あるメッセージに次のようなことが書かれていたのです。
●今回の学びをヒトコトでいうと?
「1枚」書くだけで、行動に移せるレベルの思考整理が日常的に量産でき、なおかつその内容を 3つ以内にまとめて周囲に説明できるようにもなるため、「自己完結・自己満足」型ではなく、「他者貢献」型の働き方が可能になる!
ご覧の通り、1文が長すぎて、「いつまでも覚えていられるレベル」からは程遠いまとめになっていました。そこでこの方に、「一言で言うと」というよりは、「一息で」言えるレベルにまで縮めるとどうなりますか? と質問してみたところ、最終的には、
「1枚」で、自己満足な働き方を改められる
という短さで、まとめることができました。このように、自分ではキレイに要約したつもりでも、傍から見るとまったく端的な表現になっていない。その結果、長すぎて記憶に留めることができず、あとで思い出すこともできなくなってしまう。そんな方がたくさんいるようなのです。あなた自身はどうでしょうか。端的な要約は得意ですか。
20字あれば、なんでも一言で言い表せる
これから少しずつ、「実践」モードにシフトしていきます。先ほど抽出した、「①目的の明確化」「②思考整理」「③端的な要約」という 3つのキーワードを使って、学んだ内容を忘れずに、「長く記憶に残せるようにインプットしていく学習法」を構築していきます。私は受講者の方々に、 1つ 1つの学びについて、できるだけ「20字前後」にまとめましょうと繰り返しアドバイスしています。
「20字前後のまとめ」とは、いったいどのようなものなのか。試しに、ここまでに示してきた具体例を、まとめてピックアップしてみます。
- 今となっては、何を学んだかほぼ忘れている(20字)
- 現在は、「学び」が「消費」になっている時代(21字)
- 学習を、「消費」として捉えているから(18字)
- 「消費」型の学習観から、「投資」型の学習観へ(22字)
- 「思考整理」しながら、学んでいないから(19字)
- 学んだ内容を、「短く要約していない」から(20字)
- 「1枚」で、自己満足な働き方を改められる(20字)
- できるだけ「20字前後」にまとめましょう(19字)
どれも一見して、要点がわかるものになっているのではないでしょうか。それにしても、いったいなぜ 20字なのか。その理由はヒトコト、「20字あれば、メッセージを表現できるから」です。たとえば「俳句」。周知の通り、俳句は「5・7・5」の17音で成立している言語表現の一形態ですが、 これにあえて句読点を加えれば、以下の通りとなります。
五、七、五。=(5+1)+(7+1)+(5+1)=20字
俳句自体は17音ですが、句読点を加えれば合計20字となります。また、原稿用紙の1行も20字です。あれは、なぜ20字なのでしょうか。「日本語というのは、20字あれば、伝えたい内容が表現できる言語なのだ」という世界観で眺めてみれば、多くの読者がその理由を納得できるのではないでしょうか。
あるいは学生時代、国語の入試問題を解く技術として、こんなことを学びました。「記述問題の字数制限が40字以内だったらポイントは2つ、60字以内だったらポイントは3つだと思え」というものです。この知見によって、本文からいくつポイントを見つければOKか見当がつくため、回答スピードや正答率を高められる。 そんな受験テクニックなのですが、この知見もまた、「1メッセージあたり20字」という世界観が前提になっています。
いったいどうすれば、20字要約ができるようになるのか?
私は、サラリーマン時代の大半をトヨタで過ごしました。2兆円を超えるような利益を、たった1年で出してしまう。そんな世界的企業の働き方に、いったいどんなヒミツがあるのか。色々な人が色々な観点で分析を行っていますが、私がフォーカスをあてたのは、「紙1枚にまとめて仕事をする」というワークスタイルでした。トヨタには、企画書・決裁書・稟議書・報告書・議事録・分析資料・検討資料・デ ィスカッションペーパーなどなど、とにかくあらゆる書類について、「A4 もしくはA3で1枚」にまとめていくという企業文化があります。別にルールとして明文化されているわけではなかったのですが、7万人の社員の大半が、淡々とこの基本動作を実践していました。
さて、ここで拙著『トヨタで学んだ「紙1枚!」にまとめる技術』で紹介した「紙1枚」資料の実例を、ここでも紹介しておきたいと思います。この資料には、次の「3つの制約」がかかっています。
- 制約①:「紙1枚」に収めなければいけない
- 制約②:「枠内」に収めなければいけない
- 制約③:「テーマ」から逸脱したことは書けない
1つめの「紙1枚」という制約については、すぐに理解可能だと思います。基本はA4用紙で。それが無理なら、なんとかA3サイズ1枚に収めることを目指す。「資料全体のレベル」でかけている制約、ということになります。
また、各資料には複数の「箱=枠=フレーム」がついています。加えて、各フレーム上部にあるのが、「何について書いてあるか=テーマ」です。資料を作成する際は、この枠をはみ出した分量で文章を書くことはできません。もちろん、枠の上部につけたテーマと関係ない内容は、カットする必要があります。
こうやって、「1枚」「枠」「テーマ」という3つの制約をかけた状態で、日々、資料を作成していると何が起きるか。想像に難くないと思いますが、「1枚」に、「枠」に、「テーマ」内に収める要約力が嫌でも身につきます。3つの制約に縛られながら膨大な枚数の資料を作成してきたという「量」が、要約力の「質」を高めてくれたのです。
もちろん、当初はまったくといっていいほどうまくできませんでした。資料をつくっては上司に見せ、真っ赤に添削してもらいます。それを踏まえて再度資料をつくり、また赤ペン添削を受ける。この繰り返しを通じて、少しずつ自力で、言葉を枠内に収めていけるようになっていきました。
ただ、こう書くと「赤ペン添削をしてくれるような上司が周囲にいなかったら、要約力は身につかないのか」と感じる人がいるかもしれません。「そんなことはない」というのが、私の結論です。
確かに、上司の添削によって、要約力を短期間で鍛えることができたのは間違いありません。とはいえ、短期間という時間的条件さえ外せば、「1枚」に、「枠」に、「テーマ」内に収めなければならないという制約を設けて資料をつくっていたことが、決定的な要因だったと考えています。
好き勝手にダラダラと文章が書けないよう、制約をかけた状態にしてしまう。この条件下でトレーニングを積んでいけば、要約が苦手な人でも、十分に能力アップが可能となります。このことは多くの読者・受講者の方々の実践によって立証済みです。興味のある方は、拙書『すべての知識を「20字」でまとめる 紙1枚!独学法』をご覧いただければと思います。
※本記事は『すべての知識を「20字」でまとめる 紙1枚!独学法』の内容を一部再構成したものです。
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