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- 2017/11/30 掲載
2017国際ロボット展の詳報、トヨタや川崎重工などの注目14製品を一挙に紹介する
レポート前編
トヨタ、川重、THKなど、進化したヒューマノイドロボットをお披露目
トヨタ自動車は、トランペット、バイオリン演奏に次ぐ、第3世代のヒューマノイドロボット「T-HR3」を開発し、展示ブースでお披露目していた。これまでは、楽器の運指などの精密な位置決め動作を追及していた同社だが、今回は全身の力(トルク)を自在に制御することを狙ったという。ポイントは、高感度・高剛性の薄膜トルクセンサーを開発したこと。これをギア・モータと組み合わせてモジュール化し、ロボットの各関節などに配置した。これにより何かに接触しても柔軟に力を受け流せる安全性を確保。家事・介護・建設など多様な利用シーンを想定しているが、いろいろな姿勢を取る際に周囲の接触で生じる外力に対し、全身を使ってバランスを取れる制御も実現した。
実際のデモでは、遠隔(隣)からマスター操縦システムを使い、操縦者の動作に同期する形でT-HR3を、遅延なく、しなやかに動かしていた。ボールを使ったり、カップを重ねることも難なくこなしていた。自動車メーカーのトヨタが本気を出した「テレイグジスタント・ロボット」といえるだろう。
ちょっと変わったアプローチでデモを行っていたのが、THKとSEED Solutionsがデモ展示していた「能ロボット」だ。これはTHKからスピンアウトしたSEED Solutionsのブースで行われていたもの。THKの機械要素部品とスマートアクチュエータシステム「SEED Solutions」を組み合わせることで、等身大のヒューマノイドロボットを実現できる。
このロボットを使って実演していたのが前述の能ロボットだ。能をロボットで表現するのは非常に難しい。これまで演劇を行うロボットはあったが、能は初めて。顔の傾け方で表情を演出するので、簡単には再現できないからだ。デモは12月2日午後にも実演される予定だ。重要無形文化財総合指定保持者にの勝海登氏が能の監修を行っているという。
各コンポーネントは、同社が長年にわたり開発してきた産業用ロボットのノウハウを引き継ぎ、実績のある高信頼性なパーツを使用している。人間の作業を代わりするロボットを目指しているが、デモでも四つん這い歩行から懸垂をするなど、人間並みの運動能力を発揮していた。
テムザックの電動車いすロボットなど、NEDOブースも見どころ満点
NEDOのブースでは、ものづくり、サービス、インフラ災害対応、ジュニア、AIの5つの分野に関連する計12点のロボットを展示。これらが結節点となる「Robots &AI for Happiness」というテーマを掲げていた。ジョイスティックで簡単に操作でき、スマートフォンでの遠隔操作も可能。ベッドの近くまで本体を引き寄せられる。前方はフリースペースで作業しやすく、ドアをスムーズに開閉できる。時速は最高6㎞だが、実スピードは速く感じる。11月に商品化したばかりで、定価は98万円ほど。リースで月5000円から使えるため、かなりお手頃感もある。
テムザック 代表取締役 CEOの高本陽一氏は「屋外用の電動車イスも開発中だ。これをバイクシェアとつなげていく。使ったぶんだけスマーホフォンで課金するようなモデルを構築し、オンデマンドのステーションに自動運転で戻れるようにしたい」という。
今回のプロトタイプは、腰に2つ、ひざに2つ、計4つのサーボモーターを使用。ただし、ひざ用モーター2つは将来的にコストダウン化し、ダンパーかブレーキになる予定。現在は、人の感性にあったトルク出力を研究しており、ディープラーニングも利用する予定。また転んでもケガをしない安全性も配慮した。
これらの技術により、歩行速度を変えずに上りで最大17%、下りで16%の筋電位がダウンしたことが分かった。ちなみに筋電位とは、筋細胞が収縮活動する際に出される活動電位のこと。つまり筋電位がダウンしたということは、それだけ筋肉にかかる負荷が軽減されたことを意味する。
この林業用パワーアシストスーツを使うことで、総合的に作業効率がアップし、造林コストも抑えられる。試算では1haあたり23万円の人件費が浮く(20%の効率化を想定)。価格は1台あたり約100万円だが、人件費を勘案すれば十分に元を取れる計算だ。
インフラ点検・検査系ロボットも多数展示
このほか社会基盤を整備するためのロボットとして、富士フイルムとイクシスリサーチが共同開発した「橋梁近接目視点検ロボット」や、朝日航洋の「水中点検フロートロボット」、プロドローンの「インフラ点検・検査ドローン」なども目についた。橋梁近接目視点検ロボットは、高所の橋梁裏に持ち上げ、X-Yテーブルのように自在に移動しながら画像を撮影し、近接目視点検の代替として働く。2眼カメラと画像処理により、ヒビ割れと、その幅を検出。支援ソフトも開発し、後処理の点検業務や調書の作成もサポートする。
水中点検フロートロボットは、ドローンなどの航空測量と併用することを想定している。航空測量では河川の全体点検できないことがあるため、このロボットを使ってソナーを発信して、水中部も含めた河川全体の3次元地形を調査するものだ。
またインフラ点検・検査ドローンは、複数のレーザーシステムを搭載し、トンネルや倉庫内など、GPSが使えない環境で自動飛行しながらの点検を可能にした。
【次ページ】堅牢な災害対応ロボットや農作業を助ける農業ロボット
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