- 2025/04/23 掲載
製造業“復活”のチャンス、「フィジカルAI時代」を迎える日本の可能性と落とし穴
篠﨑教授のインフォメーション・エコノミー(第181回)
一段と加速するAIの技術革新
前回触れたように、1月に開催されたASSA(Allied Social Science Association)の年次総会ではAIを巡る議論が活発で、intelligence explosion(知能爆発)やAIエージェントについての発言も相次いだ。論者によってその実現時期はまちまちだが、AIの技術進歩が今後一段と加速するとの見通しでは一致しており、早ければ2025年にも完全自律型のAIエージェントが労働市場に登場するとの予測も一部で示された。
実際、今年に入ってから、OpenAIのDeep Researchや中華AIスタートアップ企業のManusなど実用化に向けたAIエージェントが次々とリリースされて世界に衝撃を与えている。
この他にも、エコノミストの議論ではフィジカルAIに関するさまざまな発言が興味深かった。ロボティクスなど機械工学とAIとの結びつきが経済活動を通じて社会にどう影響するかというテーマだ。これは、日本の競争力にも深く関わるとみられる。
バーチャルからフィジカルへ
連載の第153回で解説したように、デジタル化の新たな進展によって、IoT、ロボット、バイオ、環境、エネルギーなど、物理的な領域にもICTの可能性が広がっている。ネット空間とリアル空間の連携によるCPS(Cyber Physical System)はその1つだ。これは、リアル空間のデータを収集(センシング)し、それをネット空間で解析(コンピューティング)したうえで、リアル空間の物理的な装置や機器類を制御(フィードバック)する仕組みだ。グーグル(アルファベット)系のWaymoがサンフランシスコなどで商用化している自動運転タクシーはその象徴といえるだろう。
ICTが威力を発揮する舞台が、バーチャル空間からフィジカル空間に広がってきたのは2010年代からだ。コンピューター内でのシミュレーションに重きを置くドライラボだけでなく、物理的な装置や化学品などリアルな物質を使用した実験・分析を得意とするウェットラボの領域でもイノベーションが次々に生まれている。 【次ページ】フィジカルAIは「製造業復活」のチャンス?
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