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  • 2017/09/26 掲載

竹中平蔵氏×出口治明氏がホンネで語る「人生100年時代の”仕事”」

<後編>

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人生100年時代、いま、日本人の働き方は大きい転換点を迎えている。にもかかわらず、多くの企業は、まだ積極的に変わろうとはしていないように見える。新卒一括採用や終身雇用、年功序列、定年制の是非、兼業とシェアリング・エコノミー、そして人間にとっての幸せとか何かまで、竹中 平蔵氏と出口 治明氏が「人生100年時代の働き方」を語りつくした。
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出口 治明氏(左)と竹中 平蔵氏(右)


前編はこちら

「咲ける場所を探しなさい」

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竹中 平蔵氏
1951年、和歌山生まれ。一橋大学経済学部卒業後、日本開発銀行入行。大阪大学経済学部助教授、ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学総合政策学部教授などを経て、2001年より経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、総務大臣、郵政民営化担当大臣などを歴任。現在、東洋大学国際地域学部教授、慶應義塾大学名誉教授。ほか、公益社団法人日本経済研究センター研究顧問、アカデミーヒルズ理事長、(株)パソナグループ取締役会長、オリックス(株)社外取締役、SBIホールディングス(株)社外取締役、世界経済フォーラム(ダボス会議)理事などを兼職

──少し話は戻るのですが、雇用の流動化というと、クビにされやすくなるのではないかという懸念も感じます。「会社が嫌だ」とか「うちの会社はブラック企業だ」と言いながらも勤めているのは、働き口がなくなることへの不安が大きいように思います。

出口氏:『置かれた場所で咲きなさい』(渡辺和子著 幻冬舎)という本がベストセラーになりましたが、必ずしも、置かれた場所で咲くことが正しいとは思っていません。

 もちろん、置かれた場所で咲くことができればベストです。そこで全力を尽くせばいい。でも、全力を尽くしても咲けないと思ったら咲ける場所を探したほうがいい。

 日本興業銀行で働いていたとき、上司と一緒にある業界の大手企業に出向いてその業界の動向について教えてもらったことがありました。担当してくださったのは、企業の資料室の方なのですが、本当に詳しくてたくさんのことを学びました。帰りがけに、「なんであの人はあんなに詳しいんでしょうね」と上司に聞いてみると、「あの人は東大を出てとても優秀な人なんだけれど、派閥争いに負けてあそこにいるんだ」と言うのです。会社を飛び出せば、その知識も経験も今よりもっと生かせるかもしれないのに、もったいないことだと感じた記憶があります。

 人間にとって何が幸せかといえば、僕は、元気なときに自分のやりたいことができることだと思うんです。やりたい仕事がやれず、窓際に追いやられ、年老いていくとしたら、それは不幸せです。

 置かれた場所で咲けなければ、別の場所を探せばいい。そして社会は、それを応援すべきだと思います。

竹中氏::「咲ける場所を探しなさい」のほうがいいわけですね(笑)。

出口氏:そうです(笑)。それに、小さなラーメン店を経営していて、お客様が来なかったら、アルバイトに辞めてもらうのは当然のことですよね。でも切られるほうにとっても、言いたいことはあると思うんです。

 だから、雇用契約の中に、解雇のルールを最初から入れておけばいいですよね。

竹中氏::笑い話のような話ですが、「契約社員」という言葉に該当する英語はないんです。

出口氏:全員、何らかの契約をしていますからね(笑)。

竹中氏::そうです。どんな雇用形態であろうと、すべて労働契約があるはずですから。

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竹中 平蔵氏と出口 治明氏が日本の未来を縦横無尽に語り合った『人生100年時代のお金の不安がなくなる話』
──解雇というと、自分が不要な人間であるかのような意識を持つ方もいるかもしれませんが、別のもっと必要とされているところに行けばいい、という発想は納得がいきます。そもそも「ブラック企業だ」と言う前に、自分から動くということを考えればいいわけですよね。

竹中氏::民主党政権の初期に、社民党が連立政権に入っていたこともあって、「終身雇用、年功序列こそが正しい働き方である」という概念のもとで、いろいろな制度がつくられました。でも、正しい働き方というのは、自分自身が決めればいいわけです。

 「とにかく頑張って働いてお金を儲けたい。残業が多くてもかまわない」と言う人も、「終身雇用、年功序列でやりたい」と言う人も、「子どものことを考えて、1日5時間だけ働きたい」と言う人もいて、働き方は人それぞれです。

 けれど、今の社会保険の制度は、「終身雇用、年功序列が正しい働き方である」という前提の上にできあがっています。

 どんな働き方も正しいのですから、多様な働き方を認めたうえで、それぞれの働き方の間に不平等がないような制度をつくらなければいけませんよね。

出口氏:日本は国を挙げて労働の自由化、流動化を進めるべきだと思いますが、ではどうすれば労働の流動化が進むかといえば、すでに述べた社会保険の適用拡大だと思います。まずはセーフティネットを整備しなければなりません。

兼業は究極のシェアリング・エコノミー

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出口 治明氏
ライフネット生命創業者。1948年、三重県生まれ。京都大学を卒業後、日本生命に入社。企画部などで経営企画を担当するとともに、生命保険協会の初代財務企画専門委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事する。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、同社を退職。2008年にライフネット生命保険株式会社を開業した

出口氏:僕は、自分の仕事をきちんとやっているのなら、兼業(副業)をしてもいいと思っています。

竹中氏::私もそう思います。兼業で問題があるとしたら、利益相反と守秘義務の問題だけですよね。

 多くの企業が兼業を禁止していますが、少し理屈っぽく言うと、兼業はシェアリング・エコノミーの究極なんです。要するに、人材のシェアリングです。ひとつの場所に縛りつけておく必要はありませんよね。シェアリングをすると所得が増えるだけでなく、人生の幅が広がることにもなるので、すごくいいことだと思います。

出口氏:デメリットはまったくないですよね。ライフネット生命は小さなベンチャー企業ですが、本業に支障がなければ、兼業はOKです。

 ただし、どこで仕事をしているのかわからないと責任が持てないので、届出制にしています。もちろん、「○○生命のセールスをします」というのはちょっとマズイかな、と思いますけれど(笑)。

 動物が大人になるということは、自分で自分の餌をとってくる、ということです。だから僕は、兼業に限らず、やりたいことはすべてやってみればいいと思うのです。もちろん一定のルールは守らなければいけませんが。

【次ページ】人生100歳時代の「仕事」について。1940年体制下の人事・雇用システムから脱却しよう
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