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  • 2017/01/27 掲載

副大統領マイク・ペンスとは誰か?LGBTを巡るアップル、セールスフォースとの「因縁」

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「トランプ政権」と聞くと、女性差別、Twitter、米国中心主義、白人至上主義などのキーワードが思いつく。しかし、米国では、これらとともにドナルド・トランプ政権と結びつけられる言葉がある。「反LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーといった性的少数者)」だ。これは、米国内で副大統領のマイク・ペンス氏が「反LGBT」の代表格ととらえられていることに起因する。それはなぜか。LGBTの権利をめぐるペンス氏とアップル CEO ティム・クック、そしてセールスフォース CEO マーク・ベニオフ氏ら経営者たちとの闘い、ペンス氏が支持する反LGBT思想、そして、米国で行われたLGBT当事者へのアンケート調査からトランプ政権を分析する。
ビジネス+IT編集部 佐藤 友理

ビジネス+IT編集部 佐藤 友理

photo
米国副大統領 マイク・ペンス氏
(写真:Gage Skidmoer



ホワイトハウスWebサイトから消えた「LGBTの権利」

 民主党オバマ政権から共和党トランプ政権への移行が終了し、いくつかの変化がすでに現れた。米国政府のWebサイトから、LGBTの権利に関するページが消えたのもその1つだ。米テッククランチによると、オバマ政権時代、ホワイトハウスのWebサイトには、LGBTに関わる立法上の主要な業績や勝訴の記録、政策の変更を特集したページが存在した。しかし、それがなくなったのだ。この変化は米国のLGBTコミュニティの不安に駆り立てている。

 では、米国大統領 ドナルド・トランプ氏はLGBTに対し、どのような立場をとっているのだろうか。米国最大の公民権団体Human Rights Campaign(以下、HRC)は、トランプ氏の立場を分かりやすくまとめている。

トランプ氏のLGBTに対する立場
同性結婚反対。理由は「自分は伝統的だから」。パートナーシップは支持していたが、後に反対だと述べる。
LGBTへの差別宗教や信条をもとにした行動に対し、米国政府が関与することを禁止する米国憲法修正第一項を支持。(筆者注:宗教、信条を理由としたLGBTへの差別を容認している、とも解釈できる)
トランスジェンダーの平等トランスジェンダーの権利を制限するノースカロライナ州の法案HB2に賛成を表明。
コンバージョンセラピー(筆者注:記事後半で解説)不明
LGBTカップルの養子縁組不明
LGBTに対するいじめの禁止不明
HRCの発表内容をもとに筆者が作成)

 トランプ氏は全体的にLGBTの権利拡大に反対している。

副大統領マイク・ペンスとアップル、セールスフォースの因縁

 一方、米国副大統領 マイク・ペンス氏は、どんな人物なのか。米国政府Webサイトでは、概ね以下のように紹介されている。

本名マイケル・R・ペンス。
1959年1月7日、インディアナ州コロンバスに生まれる。
ハノーバーカレッジにて歴史を専攻。
その後、インディアナ大学ロースクールに進学。
妻のカレン・ペンス氏に出会う。卒業後、弁護士として活動。
インディアナ・ポリシー・レビュー・ファウンデーションに参画。
ラジオ番組「マイク・ペンス・ショウ」放送開始。
3児をもうける。2000年、インディアナ州下院議員選挙に当選する。
2013年、インディアナ州知事就任。
2017年、ドナルド・トランプ大統領の下、副大統領に就任。

 同氏は、LGBTに対し、どんな立場をとっているのか。ペンス氏がインディアナ州知事を務めていたときのアップル CEO ティム・クック氏とセールスフォース CEOベニオフ氏との対決を振り返ると、その立場がよくわかる。

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 2015年3月、当時インディアナ州知事だったペンス氏が署名し、ある法律が成立した。「信教の自由回復法(Religious Freedom Restoration Act)」だ。この法律は、州が信教の自由に圧力をかけることを禁じる、という内容だ。この法律があれば、LGBTに対して差別を行っても、宗教を理由にすれば合法となる。雇用主が信教の自由を理由にLGBTの従業員を解雇することも可能になる。

 これに反対したのが、クック氏やベニオフ氏など、経営者たちだ。

 ベニオフ氏は、ツイッターで「ペンス知事によってインディアナ州にすばらしいダメージが与えられた」と皮肉を込めてペンス氏を攻撃した。さらに、希望する社員にインディアナ州外への移住を認め、会社としてサポートした。



 また、ツイッターで「差別に対抗するため、顧客/従業員にインディアナ州への旅を要するすべてのプログラムを今日キャンセルします」と発表した。



 自身もゲイであるクック氏は米ワシントンポストに寄稿し、「米国のビジネスコミュニティは、あらゆる形の差別はビジネスにとって有害だと大昔に認めた。アップルでは、我々は顧客の人生に力を与え、豊かにするビジネスに身を置いている。我々は公正で公平なビジネスに向かって歩いている。だから、アップルを代表して私は、どこから新法の波が現れようとも反対するために立ち上がった。より多くの人が反対活動に参加することを願って寄稿している」と発言した。

 そのほかにもYelpやゼネラル・エレクトリックなど有力企業が同調。さらに、セールスフォースはインディアナ州の有力企業8社とともに連盟でペンス氏に手紙を出すなどして、圧力をかけた。

 そして4月、ペンス氏は修正された信教の自由回復法に署名し、LGBTに対する差別をできなくする形で法律が成立した。ペンス氏は、「我々の州はビジネスを支持する環境としてまさしく賞賛されていて、我々は居心地の良い環境を提供し、寛大で、寛容で、親切だという国際的な評判を享受している。インディアナ州の人間にとって、居心地の良い環境づくりは、スローガンではなく、人生のあり方だ。これ(信教の自由法)はいまや過去のもの。この州を偉大にする礼儀と尊敬に向かってともに再出発しよう」と発言した。

【次ページ】米国では企業がLGBTの逃げ場になるのか?
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