work with Pride(ワークウィズプライド) 2016 レポート
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欧米企業では、「LGBT対応」はすでに当たり前のものとなっている。LGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーといった性的少数者のことだ。任意団体work with Pride(ワークウィズプライド)は、企業がLGBTに対し適切な施策を講じているか評価する指標「PRIDE指標」を策定した。10月26日、日本航空、日本電信電話、日本アイ・ビー・エムは同指標で最高評価の「ゴールド」を達成。その3社が日本企業の現状を鑑み、世界が日本に迫るLGBT支援と東京オリンピックの行く末を議論した。
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世界の中で日本はLGBTに寛容か?
いまLGBTに対する意識はどうなっているのだろうか? 国立社会保障・人口問題研究の釜野さおり氏は、「ようやく最近になって、LGBTに関しての研究環境が変わり、企業の意識も変化し始めました」と指摘する。同氏は「そもそも、なぜ職場でLGBT施策が必要なのか?」という点について、人口の側面から解説した。
「少子高齢化により、日本の生産人口の減少は必至です。これから15年後には6割を切り、2060年には半分以下になってしまいます。当然すべての働き手が重要になってくるのですが、それはLGBTについても例外ではありません。そこで働く環境を、もっと改善していく必要があるのです」(釜野氏)
現在、LGBTの割合はどれくらいを占めるのだろうか? いろいろな統計データがあるが、釜野氏によれば、日本では少くともLGBTは全体の2~6%内に入っている。この数字をみる限り、LGBTは身の回りのどこかにいてもおかしくない。しかし、LGBTへの理解は進んでいるのだろうか?
「1980年から始まった調査によれば、世界33ヵ国での同性愛に対する寛容度は、日本では中レベル程度というところです。欧米と比べると非寛容ですが、アジアのなかでは寛容な方に入ります」(釜野氏)
また全国の意識調査では、同性や両性に恋愛感情を抱くことや性別を変えることに対し、「おかしくない」という答えが過半数になった。性別では6割の女性が受け入れていると答え(男性は4割)、年齢別にみると30代までの若い世代では7~8割が受け入れている。
同僚がLGBTであった場合も、同様に若い世代では7~8割が受け入れている。一方、年代別では50代を境に肯定的な意見が減り、70代では肯定派が20%を割っている状況だ。仕事の種別では変化はないが、管理者になると肯定的な答えは4割に満たない。
「この結果から、やはり管理側に対しては、より啓発が必要だと感じます。また年代別の中高年では、当時者が周りにいる場合6割以上が受け入れるという結果が出ています。つまり当事者の交流は、年代に関わらず有効になることを示しています」(釜野氏)
LGBT対応施策で採用コスト削減
では実際に組織においてLGBT施策を施したときに効果はどうだろうか? 釜野氏は、これまで公開されている33の研究成果をまとめたレビューを使って説明した。
まず注目すべきは、LGBTの施策を実施しているLGBTにフレンドリーな職場では、LGBT雇用者の生産性が明らかに向上しているという結果だ。
「当事者の差別を受ける経験が減少することで、LGBTをオープンにする傾向も高まります。LGBTに対するコミットメントが向上し、同僚・上司との関係性が改善されます。これによって、仕事の満足度が上がり、健康状態が改善されたり、仕事や組織の生産性もアップするのです」(釜野氏)
同氏は各国におけるLGBTの職場でのカミングアウト状況についても紹介した。
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