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企業内のコミュニケーションはいったい何のためにあるのか。それは言うまでもなく社内外の人たちと効果的な意思疎通を行うことによって、ビジネスの成果を最大化するためである。一方で、7~8割近くの企業が、会議やメールの数をもっと減らしたいと考えている。今はまさに、社内コミュニケーションの在り方そのものを再点検する時期に来ている。その方法について、ガートナー リサーチ部門リサーチ ディレクターである池田 武史氏が解説する。
7~8割近くの企業が会議やメールの数を減らしたいと考えている
コミュニケーションとは、自分の意思を言語や文字、身振りなどで伝えることだといえるが、そのタイプは大きく3つに分類することができる。
1つめが、時間と空間を共有する方法で、直接会って話すやり方だ。これはつまり、会議である。2つめが、時間だけ共有する方法で、ここで使われるのが電話やビデオ会議、テキストチャットなどだ。そして3つめが、時間も空間も共有しない方法で、ここでは電子メールやドキュメントが利用される。
実は論理的にはもう1つ、空間だけ共有して、時間は共有しないという方法もある。今ではほとんど使われていないが、たとえば駅の伝言板で、最近ならインターネット上のソーシャルメディアもこのタイプに分類していいかもしれない。ただしここでは先の3つのタイプに絞って考えていく。
それでは現在、企業ではどのようなコミュニケーションツールが使われているのだろうか。
2016年2月にガートナーが国内企業を対象に実施した調査の結果では、多いのはやはり電子メール、会議、構内電話で、この3つの合計で全体の8割近くを占めている。これに続くのが、スマートフォン、ガラケー、テレビ会議、ソフトフォンなどとなる。
一方、7~8割近くの企業が、会議やメールの数をもっと減らしたいと考えていることも明らかになった。多くの企業が社内コミュニケーションの現状には満足していないのだ。
社内コミュニケーションにはビジネスの成果を最大化するという目的がある。そのためには、コミュニケーションの3つタイプそれぞれの特性に応じたツールを選択する必要がある。社内コミュニケーションの在り方そのものを再点検すべき時期に来ているといえる。
会議に頼り過ぎず、電子メールに頼り過ぎず
ではコミュニケーションツールにはどのようなものがあり、どんな特徴があるのか。
先の3分類に沿って見ていくと、まず時間と空間を共有する会議は、あらゆる知覚を駆使して直接会話することができる有効な手段だ。今後も会議がなくなることはないだろうし、会議をいかにうまく進めるかという時間の使い方がポイントになる。
次に時間だけ共有する電話会議やテレビ会議、Web会議を使えば、外出先から、あるいは緊急時には自宅から、参加者がどこにいても会議に参加することができる。
特に100年以上使われ続けている電話は、非常に慣れ親しんだテクノロジーといえる。遠く離れた場所にいる人と会話できるという基本的な仕組みは変わっていないが、今では携帯電話やスマートフォンに加えて、Skypeなどインターネットを介した音声通話やIP電話などが登場している。コミュニケーションの新機軸を策定していく中では、改めてきちんと評価し、活用していかなければならないツールだ。
そして電話(時間だけ共有する方法)と電子メール(時間も空間も共有しない方法)の中間に位置するのが、チャットやインスタントメッセージだ。なぜ中間かというと、これらは電話の特徴、つまり即時性を備えているからだ。
4~5年前には日本ではテキストを打つ文化があまりないので、チャットやインスタントメッセージは馴染まないと見られていたが、今ではコンシューマの間で広く使われている。
ここでのポイントは、コミュニケーションのスタイルが大きく変わってきていることだ。口語体が使われ、やり取りされるのも比較的短い言葉だ。丁寧に会話をしようとするとテキストを打つのが悩ましく、ここに「電子メールのしきたり」をそのまま持ち込むのは難しい。
またいきなり電話するのとは違い、チャットやインスタントメッセージは相手の状況を考慮しつつ、行儀のよい“割り込み”をコーディネートしてくれるというメリットもある。
まずはこれらのツールで“今話せますか?”というメッセージを送り、相手が対応可能なら電話をかけるという具合だ。社内コミュニケーションでは、こうしたツールをうまく活用していきたい。
そして電子メールだが、これは時間も場所も拘束されずにコミュニケーションを取ることができるので非常に便利だ。しかし先にも述べたように企業ではメールが多過ぎて機能不全が発生している。
そもそも即時性が薄いし、またきちんと見ていなかったというように確実性も低い。さらにメールが2~3回も往復すると、今までやり取りしていた文脈がだんだん分からなくなってくるし、自分の中での優先順位と相手の優先順位との「ズレ」も生まれてくる。議論には向かない。
会議は1つの場所に集まらなければならないし、電話は相手の様子が不明のまま呼び出してしまう。電子メールには即時性がない。こうした現状の社内コミュニケーション手段の弱点を克服する必要がある。会議に頼り過ぎず、あるいは電子メールに頼り過ぎず、ということを考えていかなければならない。
【次ページ】社内コミュニケーションの新機軸を策定する
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