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  • 2016/08/22 掲載

本田幸夫教授に聞く、なぜ日本では介護や福祉でのロボット導入が進まないのか

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日本がこれから迎える「超高齢社会」。介護や福祉などでさまざまな課題が浮き彫りになる中、いまその解決に向けた期待を一身に背負うのが「ロボット」や「AI」だ。自身の父親の介護の経験もあってロボット事業に身を投じ、現在は大阪工業大学 工学部ロボット工学科の教授として教壇に立ちながら、生活支援ロボット市場の創造を目指す「アルボット」の代表もつとめる本田幸夫氏に、ロボットが超高齢社会の課題を解決できるのかについて話を聞いた。
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大阪工業大学工学部ロボット工学科 教授
大阪大学医学系大学院 招聘教授
日本医療研究開発機構(AMED)プロジェクトスーパーバイザー
アルボット 代表取締役社長
本田 幸夫 氏

なぜ日本では超高齢化していてもロボット導入が進まないのか

 日本は世界で最も高齢化が進む「課題先進国」です。高齢社会白書によれば、2035年には3人に1人が65歳以上の高齢者になり、2060年には2.5人に1人が高齢者となります。また介護保険の総費用も急増し、2013年の9.4兆円が、2025年には21兆円になるものと予想されています。

 では日本の超高齢化問題の本質とは何でしょうか。それは高齢化よりも要介護者が急増している現状にあります。体を動かせば転倒するというリスクがあるため、介護側もできるだけベッドから動かさず、移動には車椅子を使う。そのため余計に寝たきりになってしまうという悪循環が起きています。

 しかし、厚生労働省の調査では、介護が必要になったとき、家族に依存せずに生活したいと希望する人が7割近くもいます。高齢者の就業率も低下しているが、65歳を超えても働きたいと希望する人も多いのです。社会の活性化のためにも「元気高齢者」を増やすことと社会参加への対応が急務でしょう。

 こうした日本社会最大の課題を解決のために期待されているのが「ロボット」です。日本政府も「ロボット新戦略」の推進や、ロボット革命イニシアチブ協議会を設立し、本腰をあげだしました。しかし高齢者問題ひとつ取っても、技術的な各論ばかりに終始しており、その本質が十分に議論されていないのが実情ではないでしょうか。中でも問題は2点あると感じています。

 1点目は、日本ではドラえもんのような、人型の「万能型ロボット」に期待が集まりがちなことです。世界をみればルンバのような単機能のお掃除ロボットが商品で成功しており、ある機能に限定したロボットは今後ますます活躍の場が広がると思われますが、こうした事業化への取り組みが日本は遅れています。

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現在のサービスロボットの多くは「単機能」だ

 私がプロジェクトスーパーバイザー(PS)をつとめる日本医療研究開発機構(AMED)では、ロボット介護機器開発・導入促進事業に予算を付けて支援していますが、まだまだ開発支援が中心で新産業創出への投資は足りないと思います。

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AMEDで行われているロボット介護機器開発・導入促進事業では2015年度に25.5億円の予算が付けられていた

 もう1つは一般の人たちがロボットに触れて価値を認識するショーケースがない点です。ロボットは無人自動車と同じで、実際に社会で使ってみないと、運用上の課題も浮き彫りになりません。国民意識の違いもあるでしょうが、日本では良いものができるまで待つという考え方が強いと思われます。

介護ロボットへの取り組みはデンマークを見習え

 一方、海外では幸福度ランキング1位のデンマークのように、大多数の国民が人の助けを借りず自立した生活ができることが幸せと考え、高齢者自らがロボット技術を積極的に活用している国もあります。このような考えがあれば、最先端技術が導入しやすく介助者の人手が減り医療費も削減できます。

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なぜデンマーク人は介護にロボット技術を使いたがるのか

 実は、いま中国でも高齢化の問題がクローズアップされており、トップダウンで介護ロボット施設を着々と建設中なのです。日本の先進的な活動を参考にしながら、日本が実用化に足踏みをしているロボット介護機器を世界に先駆けて実用化して高齢化対策とロボット新産業創出という一挙両得を狙っています。

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中国では、国の政策からトップダウンで介護ロボット施設を建設中という。吉林省・長春市のロボット介護施設(撮影:本田教授)

 こうした国々と対抗する必要はありませんが、日本ももっと「ロボット特区」のようなものを積極的に活用すべきです。ロボットと共存できる街やコミュニティの中で、アプリケーションや運用を含めたパッケージをビジネスにできれば、ハードウェアとしてのロボットのブランドは高められるはずです。

【次ページ】ショーケースとしての「ロボット共生タウン」
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