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  • 2016/08/15 掲載

シックスシグマとは何か? 事例や図解で解説する、GEらを成功に導いた経営手法の基礎

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アマゾン、フォード、シーメンス、ダイソン、ボルボ、ソニー……世界的な成功を収めているこれらの企業に共通することは何だと思いますか?その答えは「シックスシグマ(Six Sigma)」によって卓越した企業力を得てきたことです。シックスシグマとは、製品やサービスのクオリティを高く一定に保つことで顧客満足度を高めるためのフレームワークです。体系立った経営手法であり、分析などに使われるツールも多岐にわたります。近年ではシックスシグマから進化した「リーンシックスシグマ」が脚光を浴びていますが、本記事ではまず基本であるシックスシグマについて、そのエッセンスを紹介します。

photo
GEで「伝説の経営者」と呼ばれたジャック・ウェルチ氏
(Photo by Hamilton83,13 May 2012,Wikipedia


シックスシグマとは
シックスシグマとは、1980年代にモトローラによって開発された「品質管理のためのフレームワーク」です。その後、当時GEのCEOだったジャック・ウェルチの推進により大成功を収め、その有効性が世界に知れ渡りました。シックスシグマの目的は、業務プロセスを改善し、製品やサービスの品質のばらつきを抑えること。統計学を用いた定量的な分析をしながらデータドリブンでプロジェクトが進められます。特徴としては、顧客の声(VOC)を活動起点とすること、経営層からのトップダウンであること、得られたリターンを明確に数値化することなどが挙げられるでしょう。


シックスシグマ命名の理由、支えるのは統計学

 統計学では、世の中の出来事のうち、誤差を伴う事象に関しては、多くの場合正規分布に従いばらつきをもって発生すると考えられています。データの散らばり具合を表す数値を標準偏差と呼び、シグマ(σ)と表記します。データが正規分布している場合、±1σの中に全体の68.26%、±2σの中に全体の95.44%、±3σの中に全体の99.73%のデータが収まることになります。

画像
シックスシグマと命名された背景には統計学がある

 平均値±σ、平均値±2σ、平均値±3σ…から外れる場合をエラーとして100万回作業を行ったとき、エラー件数は下記のようになります。シックスシグマの名称は、開発元であるモトローラが、100万回作業を行ってもエラーの発生を3.4回に抑えること、つまり6σを目指したということに由来します。(この表の値は、現実世界では平均値自体が1.5σほど変動することを考慮した値なので、上で示した正規分布の確率とはズレがあります。)

シグマレベル100万回あたりのエラー件数
1690,000
2308,537
366,807
46,210
5233
63.4

 ちなみに、どの会社でもシックスシグマの値を目標とする訳ではありません。顧客の声に基づいて自社に適したシグマレベルを設定し、競合他社との比較に用いたり、自社プロセス向上の目安にしたりすることが大切です。

参考例:オンラインショップ

 あるショップにおいて、顧客が注文してから商品が配送されるまでの日数を調べました。その結果、配送には1日から7日間かかっていて、4日で配送されるケースが最も多いことが分かりました。

 顧客アンケートによると、たいていの顧客は4日以内で配送されれば満足、それ以上かかると不満に感じることが判明したため、配送に5日以上かかる場合をすべてサービスの欠陥(エラー)として定義しました。

photo

 この会社で100万回の注文を受けたとき、配送まで5日以上かかる回数を3.4回に抑えるのがシックスシグマです。この例からもシックスシグマで理想としている品質レベルが相当高いということがお分かりいただけたと思います。


シックスシグマ・プロジェクトの取り組み方

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シックスシグマはDMAICに沿って取り組む
 シックスシグマ・プロジェクトの活動サイクルにはDMAICやDMADVと呼ばれるものがあります。DMAICは既存プロセスの改善、DMADVは新規プロセスや新製品に向けた取り組みに適したサイクルです。ここではシックスシグマの基本であるDMAICを取り上げます。

 DMAICプロジェクトは、定義(Define)、測定(Measure)、分析(Analyze)、改善(Improve)、管理(Control)の5フェーズで構成されます。それでは、各フェーズについて順に説明していきます。

1.Define(定義)

シックスシグマ・プロジェクトは顧客の声(VOC)を起点としてスタートします。顧客が不満を感じている点を探り、それらを製品やサービスの欠陥とみなします。例えば「コールセンターの待ち時間が長すぎる」など目に見えない事柄も欠陥として扱われます。 ここでは、取り組むべき課題を明確にし、数字で目標を定めることが重要です。

2.Measure(測定)

まずは現状を正確に把握します。現状と自分の認識とは異なっていることが多いため、十分な数のデータを取得し、またそのデータが正しいものであるか見極めることが必要です。プロセスマップを作ることも有効です。具体的なフローを把握すると、何が問題となっているかを明確にすることができます。

3.Analyze(分析)

シックスシグマでは、一気に改善策策定へジャンプしてしまうことはありません。上記フェーズで発見した問題が「なぜ」発生しているか、まずは根本原因を探ることが重要です。分析には、フィッシュボーンダイアグラム、プロセスフローダイアグラム、SIPOC、MSA(Measurement System Analysis)、SPC(Statistical Process Control)など、さまざまなツールが使われます。

4.Improve(改善)

次に改善策の考案に入ります。複数の案を出し、上記M(測定)・A(分析)フェーズで得られたデータや分析結果から費用対効果を計算し、どの案が一番優れているか検討します。また、改善策を反映した新プロセスを試験的に導入し、本当に課題を解決できるのか検証します。

5.Control(管理)

シックスシグマ・プロジェクトチームから実際にそのプロセスを行っている業務チームに、新プロセスとその導入方法を伝えます。新プロセス導入後、最初にD(定義)フェーズで課題とされていたことが解決できたか確認します。プロジェクトチームが解散した後も業務チーム独自に継続的に測定を行い、再び欠陥が多くなればまたDMAICサイクルを回して業務の改善に努めます。

【次ページ】シックスシグマの導入で1.4億円の利益改善
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