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- 2016/03/22 掲載
大塚家具のブランド戦略再構築 店舗のオープン化、リユース市場開拓がカギ
大塚家具が掲げたブランド戦略と3つのアクションプラン
2015年7月に発表されたこの新ブランドビジョン。大塚家具では、これを実現するために(1)店舗の大リニューアルプロジェクト、(2)お客さまとインテリアとの関わり方の改革、(3)会員制の改革の3つをアクションプランを打ち出した。
大塚家具の社長に復帰した大塚 久美子氏がまず取り組んだのは、1つめのアクションプランである店舗の刷新だ。久美子氏は、大塚家具創業者で前社長の大塚 勝久氏の、顧客の囲い込みと徹底したコンシェルジュ、結婚などの大幅な買い替え需要を見込んだ閉鎖的なサービスから脱却をはかった。2015年7月に新宿ショールームがリニューアルしたのを皮切りに、店舗に入りやすいオープンな店舗作りを進めている。
2つめのアクションプランは、具体的にはリユース市場の開拓だ。2015年7月、大塚家具で購入した家具に限らず現在使っている家具を最高10万円で下取りする「のりかえ特割」を期間限定で実施。買い取った家具は、同社の「IDC大塚家具 横浜アウトレット」で展示されており、価格は通常の同社価格から15%~60%引で販売されている。
3つめのアクションプランは、入会しなくても商品の購入が可能になる「IDCパートナーズ」という新たな会員制への変更だ。これまで大塚家具は、商品の販売を会員に限定する「会員制」を導入し、来店時の受付登録やマンツーマンでの接客対応を行ってきた。2015年10月からは従来の会員制を廃止し、入会金、年会費は無料で、購入金額に応じてポイントが付与されるほか、来店時や誕生日など買い物以外でもポイントが加算されるようになった。
ニトリ・イケアとの差別化要因はどこにあるのか
大塚家具のこうしたブランド戦略は、競合のニトリとイケアを大いに意識したものであることは想像に難くない。大塚家具はどのように差別化をはかろうとしているのか。イケアは大量生産と輸送の手間を大幅に省くデザインの工夫で生産コストを下げた。基本的にイケアの製品はデザイン性が高いように見え、同時に輸送コストを最小限にするように設計されている。重ねて運ぶこと、重ねて販売することを縦軸に、北欧ならではの洗練性を横軸に、低コストとデザイン性で売上を伸ばしてきた。
またニトリは、途上国での生産と日本による検品でコストと品質をバランスさせ、中流家庭から低所得家庭をターゲットにした商品を展開し売上を伸ばしてきた。これまで高所得者層だけの楽しみであったインテリアデザインというものを、一般社会に広く普及させることに成功した。
大塚家具がオープン化を行い、幅広い層を顧客のターゲットにするということは、当然ながらニトリとイケアと競合することになってしまう。そこで大塚家具がとった戦略が、「一定程度の品質と、そこそこの価格帯を両立した製品」である。
ニトリとイケアの製品は、生産コストを限界まで下げているため、耐久性がそれほどない。品質の面で差別化をはかり、ある程度長持ちして、かつ見栄えの良い家具を求める層を発掘しようとしているのが、久美子氏が進めるオープン化の真のねらいだ。
格差社会の進行によって、国民の経済状態が上流と下流に分かれつつある。創業者である勝久氏が追求していた戦略は、結婚などの家具買い替えの大幅需要を見越したクローズド空間での大量買いであり、ターゲットはこれまでは中流以上の層を狙っていた。
一方、従来の品質路線を受け継ぎながらも、マス層を狙って中流の上程度の経済的な恩恵を受けている層を顧客にする、これが久美子氏が考える差別化戦略といえる。ニトリとイケアと純粋に価格競争をしていては、大塚家具には未来はない。そこで日本独自の品質検査を保ちつつも、店構えをオープンにしていく。さらに、顧客とインテリアの関わり方として、ニトリやイケアが自社で行っていない「リユース」という新市場を開拓していく。これにより、ニトリとイケアが拾いきれないその層を、大塚家具は狙っているのだ。
【次ページ】黒字化の背景にある品質の維持とオープン化の両立
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