• 会員限定
  • 2015/09/30 掲載

為末 大氏が説く、成功体験と短期的思考にとらわれない禅的変革

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
成功し続けるためには、目的を見据えて手段を変革し続けることが必要だ――。「Adobe Digital Marketing Symposium」の基調講演には、元プロ陸上選手で世界陸上選手権銅メダリストの為末 大氏が登壇。スポーツから得られた教訓や、変革を妨げる成功体験、自らが影響を受けた禅の考え方について語った。
photo
元プロ陸上選手 為末 大氏

変革を妨げる、成功体験と短期的思考

 「『変化』は全ての人に訪れるが『変革』というと、確固たる成功や実現した人が、次のステージに向かう時に使う言葉ではないだろうか」と切り出した為末氏。同氏は「成功と変革」をテーマに、企業や個人がさらなる成功を収めるための変革のポイントについて、スポーツから得られる教訓を語った。

 変革をするときに何がネックになるのか? 為末氏は、成功体験こそが変革を妨げる罠になるケースがあるという。

 スポーツの世界では、成功したからこそ陥りやすい罠がある。例えば、若いときの自分のイメージを捨てられず、同じトレーニングを続けて故障したり、何が成功をもたらすかという因果検証の難しさから、必ずしも効果的でない手法が“常識”として通用してしまうといったことだ。

「前半に身体のピークを迎え、それ以降は老いていく。20代前半はトレーニングを増やしていても、25、6歳を境に身体が回復しなくなったり、身体を痛めたことで練習できないメニューが出てくる。毎日身体が変化していくのだから、若いころと同じトレーニングが出来なくなる、ということに気付かないと、けがをしたり失敗をするのだ」(為末氏)

 環境や技術など、スポーツを取り巻く環境は常に変化している。スポーツ選手自身の肉体も加齢とともに必ず変化する。為末氏によれば、環境や条件が変化する田中で、いつまでも過去の自分のやり方に固執していては生き残っていけないと語った。

選手にとって、成功体験は強烈だ。成功したときは“必ず良いことを行っていた”と思いがちだが、そうではないのだと為末氏は次のように指摘した。

「成功したから成功の原因を探る、失敗したから失敗の原因を探る。しかし、成功したときに行っていた成績に関係ないことや良くないことがあるかもしれない。失敗したときにその逆をやっていた可能性もある。これを考えないようになると、本来は関係ない『ジンクス』のような誤学習が起こり、衰退していってしまうこともある」(為末氏)

 変革のためには、何が原因で何が結果なのか、その因果関係を分析する必要があるが、実際これを行うとなると難しい。為末氏は、ラットに行った研究を例に挙げた。

 3分に1回、エサが出てくるしかけとラットを用意する。エサが出てきたタイミングで、首をかしげていたり、檻を噛んでいたラットは、この動作をしていたからエサが出てきたと錯覚して学習するのだ。ラットはエサを食べるために、こうした動作をとり続け、誤りの学習が深まっていくのだという。

「これはスポーツの現場でも同じようなことが起こる。日本でいえば、(練習中に)水を飲むな、といったもの(指導)だ。また、アメリカでとったデータだが、(一定の)成績を残した選手がスポーツ紙の表紙を飾ると、翌月その選手のパフォーマンスが必ず下がるので、その雑誌に出たくないという選手が続出したという話があった。選手のパフォーマンスは当然上下するわけで、上にあったとき(調子の良いとき)に表紙を飾ることが多い。翌日、パフォーマンスが平均に回帰すれば、それは成績が落ちるように見える」

【次ページ】「禅的な要素」が変革のカギを握る

関連タグ

関連コンテンツ

オンライン

~人的資本の最適配置をどう実現するのか?~ サイバーエージェントの人員計画を大解剖

サイバーエージェントの人員計画の作り方を徹底解剖 ・このような方におすすめ ・サイバーエージェントの人員計画に興味のある方 ・人員計画の作り方について、他社事例を学びたい方 ・サイバーエージェントの抜擢人事の極意を知りたい方 ABEMAをはじめとするB to C領域での存在感も高め、破竹の勢いで成長するサイバーエージェント社。 同社が次の時代を捉えた戦略的な積極投資で事業領域を広げていることは周知の事実です。 ?しかし、同社の躍進はカルチャーの浸透を軸に、事業計画に連動する適材適所の人員計画と人事制度なしには語れません。 人的資本開示が義務化されて初の決算を終えた今、改めて最先端をいく同社の人員計画の作り方や人的資本に関する取り組みを解剖するセミナーを開催いたします。 ?今回はサイバーエージェント社を初期から支え、CHOとして同社の人事領域を形作られてきた曽山氏をお招きし、同社の人員計画の極意に迫ります。 ?当日のテーマは以下です。 ・良い人員計画と悪い人員計画 ・サイバーエージェント社の人員計画の作り方のポイント ・抜擢人事の極意 ?人員計画に関わる全ての人事の皆さま、そして事業計画との最適化を経営目線で見る経営企画の皆さまにとって学びのある60分を提供いたします。 ぜひご参加ください。

オンライン

~P&G・マクドナルド・レノボ出身のFP&Aアドバイザーが語る~ 自社に合ったFP&Aの始め方

明日から取り掛かる、FP&Aの始め方 このような方におすすめ ・P&G/マクドナルド/レノボ出身のFP&Aプロフェッショナルによる事例解説に興味のある方 ・明日から取りかかれるFP&Aの始め方を知りたい方 ・グローバル基準のFP&Aを自社に合った方法で取り入れたい方 ・直近5年間で、日本企業においてもFP&Aや経営管理体制の構築の重要性についての理解が深まっています。 一方でその実行となると、「全社を巻き込むのが難しい」「どこから取り組めばよいか分からない」「取り組み事例を知りたい」といったお声を多く頂戴しており、ロールモデルに対するニーズが高まってるのが現状です。 そこで、今回はP&G・マクドナルド・レノボといったFP&A先進企業で日本子会社のCFO・FP&Aをつとめ、現在はFP&Aアドバイザーとして数多くの日本企業のFP&A実装に尽力されている池側氏をお招きし、事例をベースに「明日から何に取り組めばよいか」をご理解いただけるセミナーを開催いたします。 当日のテーマは以下です。 ・P&Gなど先進欧米グローバル企業のFP&Aとは ・FP&Aを実装している日本企業の事例 ・自社に合った形でFP&Aを始めるには 他社のFP&Aのお取り組みを知りたい方、FP&Aの高度化を推進したいマネージャー・経営層の方にぜひご参加いただけますと幸いです。

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます