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  • 2014/02/03 掲載

喜連川優氏・板倉弁護士・佐々木俊尚氏らが語る、ビッグデータの可能性と現実

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Japan Identity&Cloud Summit 2014において、「ビッグデータの可能性と現実」をテーマにしたパネルディスカッションが行われた。作家でジャーナリストの佐々木俊尚氏がモデレーターを務め、情報学の研究分野からは国立情報学研究所 所長で東京大学 教授の喜連川優氏、法曹界からは弁護士でひかり総合法律事務所の板倉陽一郎氏、産業界からはソフトバンクテレコム 国際ネットワーク・サービス開発部 ネットワークサービス開発課 課長の吉井英樹氏が参加し、ビッグデータ活用時における課題とその対策、今後の展望などについて熱い議論を交わした。

ビッグデータ活用のためには“名寄せ”や“同意取得”などの問題をクリアすべき

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作家・ジャーナリスト
佐々木 俊尚 氏
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国立情報学研究所長
喜連川 優 氏
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弁護士・ひかり総合法律事務所
板倉 陽一郎 氏
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ソフトバンクテレコム
国際ネットワーク・サービス開発部
ネットワークサービス開発課 課長
吉井 英樹 氏
 モデレーターを務めた佐々木氏は議論の始めに、様々なモノがインターネットに繋がり、相互に情報をやり取りするInternet of Things(IoT:モノのインターネット)の世界について言及し、「今後はIoTの中に、我々の発信するコメントや行動履歴が飲み込まれるといういい方もできるかもしれない」と指摘、「人間の発言や行動、センサーによる様々な情報が全てビッグデータとして集約され、そこから何らかのフィードバックが行われるという姿は明らかな未来像になってきている」との見解を示した。

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 それではこうした状況が、日本にとってどのようなイノベーションに繋がっていくのか。

「この先一体どんな構造のビジネスモデルが見えてきて、それを実現するためにはどんな課題を、どう突破していけばいいのかを語り合わなければならない」(佐々木氏)

 この問題提起を受け、国立情報学研究所 所長の喜連川氏は、「人間の情報にモノからの情報を融合することで、一歩先の付加価値が生まれてくることは、多くの人が感じていること」と前置きした上で、「しかし融合された人間のデータはもうパーソナルデータとはいえない。データのオーナーシップ、つまりこのデータは誰の所有物なのか、はっきりしないことが実は非常に多い」という課題を提示した。

 喜連川氏はこうした状況が、データを活用する際のマイナス要因として働いているのではないかと語り、「この問題を乗り越えることが、非常に重要ではないかと考えている。新しい波の中ではなかなか難しいが、やはりきちんと議論する場を作ることから始める必要がある」と強調した。

 続いてソフトバンクテレコの吉井氏は、企業がビッグデータを活用して便利なサービスを提供していくためには、ネット上に点在するユーザのパーソナルデータを1つのIDに集約して整理する“名寄せ”は進まざると得ないとの考えを示した。

「現在名寄せについては社内外で慎重論が多いが、それでは物事がなかなか前に進まない。だから私は、プライバシーに関する様々な問題に判断基準を提供してくれるプライバシーコミッショナーのような第三者機関が必要だと考えている。既にEUなどでは始まっているが、こうした組織が主導して、制度面の整備だけでなく、名寄せをするためのプログラムの構造までをチェックしていい悪いまでを決めてもらえれば、社会的な信頼も得やすいし、名寄せのための技術も進歩すると思う」(吉井氏)

 またかつて消費者庁に出向し、個人情報保護推進室という組織に所属した経歴も持つ弁護士の板倉氏は、「制度面からはパーソナルデータの利用には基本的にユーザの同意が必須だが、そのために事業者は、Webページの最後に利用規約を小さい文字で書き、それで済ますということをやっている。後々問題を引き起こす原因だ」と指摘した。

「パーソナルデータの利用に当たって、事業者はやはり透明性を確保することが重要だ。利用規約の同意を形式的にクリックさせるだけで採るのではなく、このサービスではどういう目的で、こうしたデータの使い方をしますということをきちんと説明し、本当に理解してもらわなければならない」(板倉氏)

【次ページ】今後、プライバシーの問題をクリアしていく方法とは?
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