• 2014/02/06 掲載

事例:菊正宗酒造「明日増税になっても対応できる」7年後も使えるシステムづくり

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万治2年(1659年)創業の菊正宗酒造は、品質第一を理念に本醸造化など品質を上げる努力を重ねてきた。伝統と革新による価値創造をビジョンとし、将来の変化を見据えたシステム刷新を実施。菊正宗酒造株式会社 システム室 課長代理の池田邦広氏に、ビジネス環境の変化にも柔軟に対応できる帳票出力基盤を短期間で構築した成功事例について聞いた。
執筆:大山 貴弘

企業で稼働しているシステムを見直すタイミングは少ない


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事例企業の概要
企業名:菊正宗酒造株式会社
創業:1659年(万治二年)
所在地:神戸市東灘区
事業内容:清酒「菊正宗」をはじめ、焼酎・リキュール・食品や化粧品の製造・販売、清酒関連文化事業などを事業として展開
URL: http://www.kikumasamune.co.jp/

 菊正宗酒造株式会社では、2010年4月より約1年半をかけてメインフレームで運用していた基幹業務システムの全面的なオープン化を実施している。2012年5月にマイグレーションしたシステムが本番稼働すると、次いで基幹業務システムとネットショップの帳票出力基盤の共通化に着手した。帳票基盤にはウイングアークのSVF/RDEを採用し、2013年2月から3月までの約1ヶ月間を開発期間とし、4月よりシステムが本番稼働しているという。池田氏に、同社の帳票システムの刷新事例を、(1)SVFの設計前に検討したこと、(2)SVFの具体的な設定内容、(3)SVFの本番稼働後、という3つにテーマを分けて語ってもらった。

 まず、SVFの設計前について池田氏は、「企業で稼働しているシステムを見直すタイミングは意外と少ないです。また、そのタイミングで出会っていない、紹介されていないソフトウェアはどんなに優れていても、選択肢からは除外されてしまいます。今回、このタイミングで出会っていたSVFが、帳票作成ソフトの中で最も優れていたのです」と語る。そして、SVFの採用にあたって、「帳票作成ソフトの見直しと同時に、出力関係も見直すことにしました」として、伝票の種類とプリンタの種類について見直しを実施したという。

 従来、菊正宗酒造では6枚綴りの専用伝票を使っており、ドットインパクトプリンタを使用することで6枚の伝票を一回の印字動作で印刷していたという。この6枚綴りの専用伝票を、ミシン目が入ったB4の既製用紙に変更することで用紙のコストを抑えることを池田氏は検討した。池田氏の試算によると、6枚綴りの専用伝票は1組あたり約8.2円で、年間では98万4000円のコストが発生する。一方、B4の既製用紙は1枚あたり約3.8円で、年間では年間で91万2000円の用紙代となる。伝票をB4の既製用紙に変更することで、7万2000円のコスト削減が見込める計算だ。

 また、ドットインパクトプリンタとページプリンタを混在して使用している現在の構成では、82万円の初期コストがかかっているが、伝票をB4の既製用紙を使いドットインパクトプリンタをすべてページプリンタに置き換えることで、コストは56万円になるという。一度限りの初期コストだが、26万円の削減が可能になる計算になる。

 数字だけを比較すれば、現在の構成をB4の既製用紙とページプリンタに変更すれば、初期費用も年間費用も安く抑えられることがわかった。しかし、池田氏が伝票を利用している現場に確認を行ったところ、「従来の伝票の仕組みを変更することで、現場ではこれまで以上に伝票の仕分け処理に手間がかかり、トラブルが発生することによる出戻りも増える可能性がありました」という。結果、菊正宗酒造では伝票種類・プリンタ構成は従来のものを踏襲することになった。

SVF の3つのこだわりであらゆる部門の満足度向上を実現

 SVFの具体的な設定内容では、池田氏は「“カド”にこだわる」「“違わない”にこだわる」「“タイミング”にこだわる」という3つのこだわりがあったという。

 「“カド”にこだわる」では、SVFを採用したネットショップ用の帳票は、角を丸めたり、影をつけたりすることによって、少し柔らかい印象に調整したという。一方で「“違わない”にこだわる」では、基幹業務システムの帳票の請求書と新しいシステムでの請求書はまったく同じレイアウトを採用し、お得意先や社内の経理部門でも処理の変更を不要にしている。「新しく採用するソフトや設計方法が変わっても既存のレイアウトとまったく同じ内容で再現できます。これがSVFを採用した理由であり、強みなのです」と池田氏は言う。

 さらに、「“タイミング”にこだわる」では、これまで無条件にプリンタで印刷していた帳票の出力先に、PDFで保存するという選択肢を用意した。これにより、全体の7割がPDF保存となり、3割が印刷になった。PDFで保存することで、Adobe Readerなどでファイルを開いて文字検索ができ、プリンタに紙詰まりなどのトラブルが発生した場合に続きのページから簡単に印刷が可能になるといったメリットがあったという。ネットショップでは出力先をPDFとし、明細書など顧客の個人情報が記載されている帳票に関しては、社外社内にかかわらず関連するメンバーだけが閲覧できるようにパスワードを付与し、閲覧期限も追加設定して運用している。

 この、「“カド”にこだわる」「“違わない”にこだわる」「“タイミング”にこだわる」という3つのこだわりによって、「お得意先、個人消費者、社内の関連部署、システム部門、あらゆる部門の満足度向上につながりました」と池田氏はその成果を語った。

消費税の変更にも柔軟に対応できる7年後も使えるシステムを構築

 SVFの本番稼働後では、「1年後、2年後、7年後も使えるシステム」として、変化に柔軟に対応できる同社の帳票システムを紹介。

 池田氏は、2014年4月に消費税が8%へ、さらに2015年10月には10%へ引き上げられる予定であることに触れ、「最終的にどのようになるかわかりませんが、システム部門はあらゆることを想定しておかなければなりません」と消費税の変更にスムーズに対応できるシステムである必要性を強調した。今回のSVF導入で菊正宗酒造は、CSVデータにあらかじめ消費税額を設定し、帳票に反映させる方法を採用している。この理由を池田氏は、「今後の修正の手間や確認作業にある。今後、一部で言われている軽減税率が導入された場合、弊社では日本酒以外にも食品や化粧品を扱っているので、税率が10%、8%、5%と商品ごとに税率が変わる可能性がある。そういうことを想定し、データとして盛り込める内容はすべてCSVに盛り込むことにしました」と説明する。こうすることで、消費税の変更に柔軟に対応でき、さらに修正後のデータがあっているかという確認もCSVファイル上で簡単に確認できるという。

 池田氏は、SVFによる帳票が完成した際、現場から「レイアウトは変わっているか」「印刷スピードは早くなったか」という質問があったと明かした上で、「レイアウトも印刷速度も、これまでとほとんど変わらない。しかし、視点を未来に向けると回答が変わる。SVFを採用したことによって明日増税になっても対応できるほど、柔軟かつスピードアップして対応できるようになったのです」と導入の効果を強調する。

 またハード面でも、7年後も安心して使用できるシステムにするため、他のツール群との連携も考えているという。例えば、SVFを中心に帳票のレイアウトを作成する「SVFX-Designer」、帳票レイアウトとCSVデータを合体させて出力をコントロールする「Universal Connect/X」、出力先のプリンタ登録や出力後のジョブ管理を行う「Report Director Enterprise(RDE)」、出力データをPDFに変換する「SVF for PDF」。また、導入を検討している、タブレット端末に表示された伝票にメモを書き込むことができる「Tablet Paper for RDE」、BIツールとして導入している「Dr.Sum EA」との連携も行っていきたいと説明した。

 池田氏は、SVF導入のメリットを「帳票だけでなく、周辺機器も見直ることができます。“おもてなし”の心遣いを帳票に盛り込めます。そして、クイック・レスポンスを目指せるのです」とまとめ、「IT分野においては変化の流れが非常に早いですが、それに対応できるシステムをご検討ください」と、導入検討企業へのメッセージを語った。

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