- 2014/02/06 掲載
事例:メガネスーパー「顧客になっていただくためのBI活用を」社内浸透はスピード勝負、その取り組みとは
顧客になっていただくためのBI 数字がわかると行動が変わる
企業名:株式会社メガネスーパー
創業:1980年
所在地:本部/神奈川県小田原市
店舗/317店舗(2013年12月末現在)
事業内容:眼鏡、コンタクトレンズ・補聴器および用品の販売
URL: http://www.meganesuper.co.jp/
メガネ市場は、一時期は7,000億円の市場規模を誇ったが、現在は4,000億円に低迷している。市場が低迷している大きな要因が価格の下落であるが、「一つの商品の単価を上げるのではなく、カウンセリングを中心としたコンサルティングサービスを行うことで、一人のお客様から様々な時間軸の中でサービスを提供する、付加価値型のビジネスを目指したいと考えています」と、株式会社メガネスーパー 取締役執行役員 束原俊哉氏は語る。
その上で、束原氏は「BIが重要になるのは、集客と顧客化です。いかに費用対効果の高い集客施策を打ち、お客様の新規来店や再来店を促し、顧客となっていただくか。顧客となっていただくことでキャッシュが得られ、また入店促進の施策にお金を使えるようになります。このフローの真ん中に、顧客のデータベースを置いてやっていきたいのです」と語り、同社のビジネスにおけるBIの位置づけに言及した。
一般的な小売業の場合、顧客データの収集には苦労をするケースが多いが、メガネ店の場合は検査の時などに顧客の住所や氏名、年齢をカルテに記入してもらうことができる。しかし、メガネスーパーでは従来、こうした顧客情報を個別の店舗で管理しており、チェーン全体で活用するということはあまり行っていなかったという。BIツールを導入し、今後はこうした顧客データベースの活用も検討している。
また束原氏は、「データを活用していく上で、ITの活用は欠かせません」と語り、メルマガやFacebook、LINEといった顧客にダイレクトにアクセスできる媒体をどんどん活用していく考えを語った。毎日の生活で用途に合っていないメガネのせいで目が疲労してしまう「疲れメガネ」を訴求したキャンペーンでは、Webと店舗で積極的に展開し、Facebookの「いいね!」を一週間で1万件も集める成果を収めたという。またメガネスーパーでは、顧客と対話型の検査サービスや、作ったメガネの度数を6ヶ月以内なら何度でも変更ができる保証サービス、クリーニングサービスなどを行っている。サービス付加価値を高めていくことで、加齢にともなって目の調節力が下がってくる「老視」といわれる状態になるシニアを主なターゲットにサービスを展開しているのだ。
束原氏は、同社がBIに取り組む上で前提となる背景を説明した上で、「まだ道半ばではありますが、BIを入れたことで、こういった取り組みの成果や学びが見える化できたのは間違いありません。しかしBIの導入は、それほど簡単なことではありません。きれいごとではなく、新しい考え方でデータを見ていく必要性を従業員一人ひとりに理解してもらうには相当、時間と工夫が必要になります」と語った。
BIの社内浸透はスピードが勝負、飽きられたら負け
同社 事業推進室 マネージャーの斎藤 満氏には、BI導入によるKPIマネジメントによって、売上重視から収益重視への転換を果たしたメガネスーパーの取り組みについて聞いた。「従来は、やみくもに売上目標だけを追いかけており、掛け声だけで行動が伴っていませんでした。アクションに直結する商品、顧客、社員を軸とした利益重視のきめ細やかな情報提供が必要で、さらにはタイムリーでスピーディな施策効果の管理や、数百万件におよぶ顧客情報活用の活性化が不可欠だった」と導入前の課題をあげた。
そこで同社では、実績やアクションを見える化するKPIマネジメントの仕組みの構築を目的に、メガネスーパーの4名とウイングアークの4名の計8名からなるBIの導入プロジェクトチームを発足。ウイングアークのBIコンサルティングサービスを活用し、Dr.Sum EAの導入を行った。その結果、「KPIの状況をさまざまな角度からチェックが可能になった上、充実した集計表やグラフ機能により、直感的に状況把握ができるようになりました。また、自由に項目や集計内容、期間を組み替えることにより、さまざまなリクエストに対して対応ができるようになりました」と斎藤氏は語る。
また斎藤氏は、「一般的企業において営業改革によるBI活用の定着化には約2年かかると言われていますが、当社は、全国317店舗(2013年12月末現在)を運営しており、いかにBIの定着を短縮化できるかが鍵でした」と、同社におけるBIの定着施策について説明した。メガネスーパーでは、BI浸透のための取り組みとして、(1)経営層向け、マネージャー向け、ブロック長向け、店長向けに操作マニュアルや活用マニュアルを配信、(2)レポート画面に現場の意見を取り入れるための店舗に対するアンケート、(3)パソコンを使用した集合勉強会の実施、(4)ログの解析によるメニューの整理、を実施した。また、「自発的に意思を持って活用しないと意味がない」という理由から、強制的にBIを使わせるという締め付けは行わなかったという。
斎藤氏は、メガネスーパーにおける一日あたりのBIの閲覧画面数の推移を示し、「マニュアルの配信や勉強会の実施だけでは、なかなか閲覧頻度は上がってきません。現場の声を反映させた新たなメニューを投入したり、役職や部門で縛りを入れていた閲覧制限を撤廃したり、最終的には社長の全店向け放送で「毎日BIで店舗の数字をチェックしているぞ!」と、げきを飛ばしてもらいました。(ログを解析したところ、実際に社長も使用していたとのこと)BI浸透はスピードが勝負で、飽きられたら負けです。自発的に見てもらえるよう2の矢、3の矢を繰り出しました」と取り組みを説明した。
さらに斎藤氏は、利用頻度の高い店舗と低い店舗における売上前年比とBIのアクセス画面数の推移を示したグラフを紹介し、「BIの利用頻度と売上には、どうやら相関関係がありそうです。見ると良くなるのか、良くなるから見るのかはわかりませんが、見ないと悪くなることは確かでしょう」と述べた。その上で、「アクセス頻度が伸びる一方で、使用する個人が頭打ちになっている状況です」と同社の現状に触れ、「BIの定着化には、不断の努力が必要です。数字の見せ方で行動が変わる、行動が変われば売上が変わるということは間違いありません。これからもっと浸透させていきたいと考えています」と語気を強めた。
317店舗、社外用ノートPC42台、本社70台のパソコンからBI閲覧可能に
同社 情報管理グループ マネージャーの山口泰司氏は、情報システム部門の立場から、BI導入後の効果について説明した。メガネスーパーには現在、317店舗にあるパソコンと、SD(ストアディレクター)42名が持ち歩くノートPC、さらに本社にある70台のパソコンから、BIがいつでも閲覧できる環境を構築している。BIの導入以前は詳細なデータ分析を行う仕組みがなかったため、本社営業部や商品部、SD、店舗から、多種多様なデータ抽出依頼がある度にシステム部門が基幹システムからデータを抽出し、集計していた。
BI導入後は、本社営業部や商品部などの担当者が自らBIシステムを使用してデータを閲覧、抽出、加工を行うことが可能となり、その担当者自身のデータ処理スキルも向上したという。「システム部門はデータ処理依頼が劇的に減少し、本来のシステム部門の作業に集中することができるようになりました」と、BIの導入はシステム部門にもメリットをもたらしたと語った。
ウイングアークのサービスについては、要件定義、システム設計、開発、システムテストの段階での、さまざまな要求に対応したレポート設計を高く評価しているほか、システム品質、安定稼働、アプリケーション保守、BIレポート作成の教育についても満足だという。
最後に束原氏は、「BIの導入で、店舗に対して数値コントロールをしていくことができるようになりました。まだまだ導入途上ですが、今後は顧客データベースと連携させて、CRMやSFAを実現したいと考えています」と今後の方向性を語った。
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