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- 2013/09/03 掲載
JTB代表取締役社長 田川博己氏が語る、観光立国の実現に向けて日本がなすべき3つの提言とは
世界中から観光客を呼び込むJTBのDMC戦略
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観光立国の実現に向け、観光客を日本に呼び込む仕組みづくりを
ツーリズムによる経済的波及効果と雇用創出効果は非常に大きいものがある。グローバルな統計で見ると、経済波及効果は約6.3兆ドルほどあり、世界全体のGDPの9.1%を占める大きな産業だ。当然そこに従事する人も多くなり、2億5500万人の雇用創出効果がある。
「日本国内の経済波及効果はGDPの5.5%相当にあたる49.4兆円。雇用についても総就業者数の6.6%相当に上る424万人であり、日本のツーリズム産業はまだ伸びしろがある」(田川氏)という。
平成24年版の観光白書によれば、日本の海外旅行数は世界第10位の約1545万人(2009年、1位はドイツ)、逆に日本に訪れる外国人旅行者数は世界30位の約861万人(2010年、1位はフランス)という数字だ。この状況からインバウンドとアウトバウンドで約700万人の差があることがわかる。2010年の国際観光収支を見ると、これを裏付けるような結果が出ており、日本は約147億ドルの赤字となっている。田川氏は「今後、産業構造が変化していく中で、新たな外貨獲得手段として観光立国政策の推進は極めて重要な課題になる」と説明する。
では現在、日本の観光を取り巻くマクロ的な環境はどのようになっているのだろうか? 田川氏は「経済」「社会」「技術」「政治」という主要因から説明した。経済的には新興国が成長してアジアの人の流れが急拡大しており、最近の円安の動きも追い風になっている。社会的には、震災復興支援などに見られるように旅行ニーズも多様化しており、旅の価値観も変化してきた。また技術的には情報通信インフラの進化によって、ネットからの旅行予約やSNSの口コミの影響も大きくなっている。一方で政治的には、観光を国の重要な成長戦略の1つとして位置づける動きが加速しており、観光関連の規制緩和も進んでいる。実際、政府は今年3月に観光立国閣僚会議を開催し、2016年までに外国人旅行者を1800万人とする目標を実現すべく、アクションプランを取りまとめた。
政府の動きだけでなく、民間の動きも活発になっている。2012年4月に東京・仙台で開催されたWTTC(World Travel and Tourism Council:世界旅行ツーリズム協議会)グローバルサミットでは、世界から見た日本のツーリズムの可能性について提言された。WTTCは世界の主要ツーリズム関連企業のトップ約100名で構成される非営利団体で、田川氏はWTTCの理事に就任している。日本は、世界的な投資対象として魅力があり、インフラ・設備・サービスも充実し、素晴らしい観光素材が数多くある。「しかし、その一方で地方都市の発信力は弱く、受け入れ整備に未だ改善の余地が残る。さらに地域の魅力を掘り起こし、それを磨き上げて情報を発信していかなければならない。まさにいま、東北復興を含めてツーリズムの力が求められている。日本のふるさとを守る、あるいは醸成するツーリズムの考え方が芽生えつつある」(田川氏)。
また、WTTCの席に登場したフレンツェル代表(TUI AG CEO)は、ツーリズムに関する3つのメガトレンドを挙げた。まず始めに、観光の中心が欧米からロシア・中国・インドなどに移行している「グローバルシフト」がある。いかに日本も他国に負けずに観光客を呼び込むべきか、その仕組みづくりが求められる。2番目が「デジタルシフト」だ。SNSは顧客の消費の形や行動を変えた。いまやSNSは情報源だけなく、レコメンデーションとしての機能も持っている。3つ目は「エクスペリエンス」だ。これは、いくらデジタル化やバーチャルな世界が進もうとも、観光によるリアルな世界の体験には代えられないということ。旅行という実体験は、将来のステータスシンボルになるものであり、それを提供するのがツーリズム業界だという認識と自負がある。
【次ページ】日本のふるさとを活性化する発着連動のDMC戦略とは
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