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  • 2012/05/31 掲載

【辻本力氏インタビュー】「生活」の面白さを前面に出したインディペンデント・マガジンの魅力を探る──『生活考察』編集発行人が語る雑誌文化

『生活考察』編集発行人 辻本力氏インタビュー

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『生活考察』は、魅力的な執筆陣を擁し、文字通り「生活」についてさまざまな角度から「考察」するインディペンデント・マガジンだ。通販や一部書店で取り扱われ、多くのファンを持っている。この個性的な媒体の編集発行人を務める辻本力氏に、3号まで刊行したこれまでについて振り返っていただいた上で、現在の雑誌文化についても触れていただいた。

生活の「面白さ=豊かさ」

──『生活考察』はユニークかつ内容の濃い雑誌ですよね。まず創刊のきっかけをお教えいただけますか?

 辻本力氏(以下、辻本氏)■前の職場(水戸芸術館。茨城県の総合文化施設)で責任編集を務めていた『WALK』という機関誌がありまして。もともとは演劇誌だったのですが、私が担当するようになってから徐々に文芸・カルチャー誌っぽい内容になっていきました。本来、私の主業務は芝居の制作だったんですが、自分の中で編集の仕事の面白さが勝ってしまい、その雑誌の休刊をきっかけとして退職しました。

 で、齢30を目前にして上京&転職という無謀な選択をしたわけですが、ご想像の通り非常にしんどいことになり、いやがおうにも自分の「生活」というものに向き合わざるを得なくなったんです(苦笑)。

──あ、それで「生活」がテーマに!?

photo

『生活考察』Vol.03

 辻本氏■はい、きっかけの1つですね。あとは、その『WALK』の最終号として「日記──あるいは偏執狂的日記特集」という特集を組んだことも大きかったです。これは総勢22人+1グループによる約1か月間の日記をひたすら収録したもので、さらに前書きと編集後記が私の編集日記になっており、前書きは企画を思いついたところから日記執筆の依頼を完了させるまで、編集後記は日記原稿が届き始めてから印刷会社に入稿するまでの記録になっているんです。他にはエッセイも評論も一切なし。つまり、どこを開いても日記しか載っていない日記特集号を作ろうと考えたんです。「何故?」と問われたら、「なんか面白そうだったから……」としか答えようがないんですけども(笑)。

──あの特集はインパクトがありました。

 辻本氏■特集では、日記という「形式」に重点を置いていましたが、作ってみて改めて感じたのが、そこに描かれている内実、つまり「生活」自体の面白さだったんです。その面白さは、「豊かさ」と言い換えてもいいかもしれません。それはメディアが推奨する「理想の生活」や、その結果としての「豊かさ」ともちょっと違っていて、もっと多様というか、いろいろな形がある。どんなに破綻していても、他人が見たら「あり得ない!」と思うような生活であっても、それを生きている当人にとっては「日常の生活」なわけで、そういったものも含めて「生活」なんじゃないかな、と。

 また、例えば「お金がない」といったポジティブとは言いがたい内容であっても、貧乏くさくならず、それどころかむしろある種の「豊かさ」を感じてしまうのが不思議というか面白く、これはどういうことなんだろう?と考えたとき、生活における「想像力」の存在に行き当たったんです。「想像力」を衣・食・住と同じくらい重要な要素として捉え直すことで、「生活、けっこう面白いですよ、まだまだ楽しめますよ」ということが言えるのではないか、またそのための視点や発想を提案できるのではないか、そんなことを考えたんですね。

──『生活考察』は特集を設けないというのも、大きな特徴ですよね。

 辻本氏■そうですね、その辺は意図的にそうしています。雑誌全体を通して、シンプルに「生活」というテーマがあるのみです。今の自分にとって、特集を組むことはむしろ不自由になってしまうかなって。特集主義の雑誌として、例えば『ユリイカ』という大きな存在もありますし、年1~2冊の刊行ペースで毎号特集を組む必然性を感じなかったんです。とはいえ、タイミング次第で何かやるかもしれないので、「絶対にしません!」とは申しませんが。実際、最近ちょっとやってみたいことも出てきてますしね。その辺の自由さも、インディペンデント・マガジンならではかなと。

 そして、もう1つコンセプト的なところでお話をすると、メインコンテンツがエッセイである、ということがあります。雑誌の記事と記事の合間にちょこちょこ載っている生活エッセイってあるじゃないですか? ああいうのがそもそもすごく好きなんですけど、1冊の雑誌において、そういうパートのパーセンテージってあまり大きくないですよね。それに対する欲求不満みたいなものがあり、誌面の大半をエッセイで構成してしまう、という今の形が生まれました。『クウネル』(マガジンハウス)の巻末エッセイみたいなのだけで雑誌1冊作れてしまったら愉快だなと、そんなことを考えていました。

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