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人財(個人の能力)を最大限に活用するのが人財マネジメントである。しかし、通常はどの企業や組織でも個人の能力に応じて業務を割り振ろうとしているが、実態は個人の能力とかけ離れた仕事を仕方なくやらされる場合が多い。その理由は、採用の不完全さ、機械的な仕事、個人能力の不透明さ、業務の変化、教育研修の不備等々多々が考えられる。本稿で問題とするのは、このようなケースではなく、一見うまくいっており、適財適所がなされていると思われる場合での人財マネジメントである。なぜならば、個人の能力を組織の個や部分で使って、効果が上がる場合とそうでない場合が生じるからである。
「個の合算は、全体最適にならない。」
例を挙げよう。一つは部門最適を徹底しても、当然ながら部門間の業績の差は出る。それは、部門にいる人の能力の差があったり、リーダーシップが異なったり、仕組みが違ったり、また部門に対する需要の大きさ等に依存するからである。
二つ目は、時間の流れと共にある業務での改善・改革を、通常は部門機能に対して行なうための不効率さである。機能と言うことは、企業全体から見ると縦の組織機能となり、事業毎の部門や部門内の課・係ごとに専門家が集まって業務を行なう。ある意味では仕事の専門家の集まりであり、成果は出せるが、あるところで壁に突き当たる。なぜならば、縦の改善は効率的に進むが、その部門だけで完全に独立した業務はなく、通常は業務プロセスの流れの中では、事前の部門と事後の部門と連携して初めて製品やサービスの品質が向上するからである。言い換えれば、縦をつなぐ部分(機能と機能の間)に不効率が隠されているからである。つまり横に改革のヒントがある。
壁を突き破る為には、プロセス志向で考えて、部門を超えた抜本的な改革を行なわなければならない。全体のコスト削減やTotal Qualityを向上するためには、全体を考えなければならない。この二つ目の理由が、「個の合算は、全体最適にならない」という意味である。
(1)機能とプロセス思考
したがって、まずは詳細ではなく、大きく全体の最適をどこに持って行くかを考える「全体最適のマネジメント」を実行することが必要となる。機能のつながりが全体であるとすれば、機能を最適にするのではなく、機能を横断するやり方を最適にすることになる。言うまでもなく、機能自体が満足のいくレベルでなければならない。
このことを、ピータ・F・ドラッカーは、彼の著書『マネジメント』でダムを事例で説明している。図では各堤防として表されている縦の機能組織である部門が一生懸命に改善を行ない効果を上げても、種々の理由によってある部門の効果が上がらなければ(図では低い堤防から洪水が発生する)、全体としての成果は得られない。全体が関係している企業組織では、最も改善の遅れている部署が、全体の改善レベルになる。つまり、部分最適が全体最適にならない例だ。
さて、全体最適を達成する時の主たる成功要因の一つは、個人の適財適所と全体思考によるプロセスマネジメントである。そこで、ベースとなる「個人」について考えてみたい。
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