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  • 2011/03/11 掲載

「日本は重要な決断をしなければならない時」経済同友会代表幹事 桜井正光氏

閉塞感打開に向けた日本再生のビジョン

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日本の政治情勢は混迷を極めている。先進国史上最悪に迫りつつある債務残高を抱えながら、新年度予算の財源は党利党略により一向に進む気配はない。山積する課題を前に、有効な打開策を見い出せずにいる政界に対し経済界は苛立ち、独自の打開策を明らかにしている。「日本再生のビジョン――閉塞感打破に必要な政策とは」(経済同友会・日本経済研究センター共催)から、今、経済界の識者は日本再生のために何が必要だと考え、政治に何を求めているのかを探る。
執筆:丸山 隆平

日本は重要な決断をしなければならない時を迎えている

photo
経済同友会
代表幹事
(リコー会長)
桜井正光氏
 経済同友会代表幹事の桜井正光氏(リコー会長)は、基調講演でまず、「日本は今、成長か衰退かの分水嶺にある」との認識を示した。「新しい制度を構築し活力に満ち溢れた国として再生できるのか、もしくは自己変革に躊躇し衰退の一途をたどるのか、今、まさに決断の時だ。時間は限られている。今こそ政治がその役割を厳しく認識して、決断し、行動しなければ明るい未来はない」(桜井氏)。

 「急速な人口減少と高齢化」および「グローバリゼーションの進展」――この二点を桜井氏は日本が直面する大きな課題として指摘する。日本の人口は2007年に約1億2800万人のピークに達した後、減少に転じ、2055年に約9000万人になると予測されている。約50年かけて3800万人増加した人口は再び50年かけて3800万人減少するという急激な人口減少社会を迎えることになる。

 また、高齢化も深刻だ。日本の生産年齢人口と老齢人口の対比を見ると、1970年ごろは10人の現役世代で1人の高齢者を支えていたが、1990年ごろに5人で1人を、現在ではほぼ3人で1人を支える社会構造となっている。将来、つまり2025年ごろには、2人の現役世代が1人の高齢者を、そして2050年ごろには1人が1人を支える社会が想定されている。

 このような人口動態を見ると、人口増加と潤沢な就業人口を前提に築き上げられてきた制度は、「既に機能不全に陥っていることは明らか」であり、「現役世代だけに重い負担を課すのではなく、世代を超えて広く大きの国民で社会を支える制度の構築は不可欠だ」(桜井氏)との認識を示した。

 一方、「グローバリゼーションの進展」については、富の源泉である企業の活性化や活力ある企業の誘致促進を図るための魅力ある環境や制度を整備するための「競争の激化を意味する」(桜井氏)。具体的は菅内閣の打ち出した約35%という法人課税は欧州各国の30%、東アジアの25%という水準に比べ「決して魅力ある水準とは言えない」と述べた。また、企業が活動拠点を選別する要因は法人税課税の問題だけではなく、社会保障の法人負担分、企業結合なども大きな課題であり、「企業活動を規定するさまざまな分野において国際間での制度整備の競争が激化しつつある」(桜井氏)という。

 さらに、桜井氏は経済連携協定(EPA)の締結が企業の競争環境を左右し始めていることを指摘。自由貿易協定(FTA)は世界に180件以上存在するが、これらの半数以上はこの10年間に締結されたもので、EPAは2国間、地域間協定から地域横断的な広がりを持った協定に拡大しつつある。現在、日本では環太平洋戦略経済連携協定(TPP)への参加が大きな論議を呼んでいるが、日本企業の行動にとって今後、日本がどのようなEPAを締結するかが「国際競争上の大きな課題となる」(桜井氏)と語った。

 このように、現在、日本は将来に向かって重要な決断をしなければならない時を迎えている。政治は衆参ねじれ現象を超えて「超党派合意形成のあり方を確立しなければならない。国民は日程闘争や失言・スキャンダルを巡る“政局”に背を向けている」(桜井氏)とし、その上で、(1)税制の抜本改革と財政再建 (2)社会保障制度改革 (3)経済連携協定戦略――の3分野について超党派議員と民間有識者による検討委員会を発足させ、「早急に結論を得ることを強く望む」と述べた。

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