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- 2009/11/16 掲載
【連載 第1回】これからの企業で働くための条件(組織編1)
名古屋商科大学大学院教授 アソシエイトディーン 伊藤武彦氏
エンゲージメントの重要性
過去史上最悪だった2002年を上回るリストラクチャリングの嵐が吹き荒れる現在、どうやって201X年の企業を作り上げていくかという課題は、これまでにない厳しい問いかけを経営者にしている。企業のサステイナビリティのかなりの部分は「人」にかかってくる。どんなに良い戦略や再生へのビジョンがあっても、そこに共感し、コミットするだけでなく、一緒にサステイナビリティを実現していくために行動を共にする社員で溢れさせなければ何も起こらない。コミットメントはある意味では短期的にも実現できるが、これを長期で実現させるような企業への盲目的な忠誠心とは異なる信頼・共感を具有するエンゲージメントが必要となる。ライトマネジメントの調査によれば、高いエンゲージメントが確保される集団は他と比べ生産性が50%、収益性は33%上昇し、カスタマーロイヤリティーは56%、そしてリテンション率は44%上昇していることがわかっている。
エンゲージメントが得られない
しかし今、このエンゲージメントが得られていない。正確には、従来エンゲージメントを得ることに成功した企業が、同じ手法を実行しても前回得られたそれが得られていないのである。企業は真剣に再生のための分析をし、戦略をつくり、それをコミュニケーションし社員を勇気付けようとしている。そして、中心人物の取り込みもしている。しかし、これが全く社員のエンゲージメントとして結びついていないのだ。なぜなのか。一つには従業員の体験的感覚・不信感に対する回答になっていないという事実がある。従業員にインタビューをすると、回答内容は概ね次の言葉に集約される。「前回の時に再生のシナリオとビジョンを聞き、共感し、少なくなる労働力、増えるタスクにも耐えてここまで来たが、結局、またリストラクチャリングをしなければいけなくなっている。あの時、聞いたものは何だったのだろう。何を信じれば良いか。どうすれば自分を守ることができるのかわからなくなった。とにかく、企業だけを頼りにはできないということはわかった」。
企業の再生・存続は個人の成長・繁栄・キャリアの発展には繋がっていなかったという体感的な事実が目の前に存在している。企業はこれからの経営・組織・人材育成を考える時に、この事実を正面から受け止める必要がある。企業の再生・存続を語るだけではだめなのである。
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(ライトマネジメント資料より) |
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