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- 2009/11/11 掲載
IT投資の効果は?:CIOへのステップアップ財務・戦略講座(3)(2/2)
大塚商会の付加価値総額の推移からみるIT投資効果
これを踏まえて、実際の生産性について考えてみましょう。今回取り上げる企業は大塚商会です。大塚商会は、中小企業向けにリコーを中心とするコピー機の販売にはじまり、コピー用紙、トナー、オフィス用品、さらには、システム開発など幅広く手掛けています。図1に大塚商会の付加価値総額の推移を示していますが、2000~2008年度まで付加価値額は566.2億円から912.2億円(年平均成長率 5.4%)、営業利益の年平均成長率は18.4%、人件費は同様に3.1%成長、すなわち、人件費の伸び(3.1%)に比べて、営業利益の伸び(18.4%)が高く、減価償却費(同-0.8%)がほとんど変化ないことから、結果的に付加価値額が増えていると判断できます。
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これは図2のように従業員数および従業員一人当たり付加価値額推移からみても同じ傾向を読み取ることができます。つまり、2007~2008年度こそ従業員が増加しているものの、2000~2006年度にかけて従業員は大きな変化がないまま、一人当たりの付加価値額が増加=生産性が向上しています。
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この生産性向上の背景は、一言で表せば、戦略によるものです。同社は1990年代のバブルの後遺症に苦しみました。過剰な在庫、重複する業務、膨らむ有利子負債、こうした負の連鎖を断ち切るべく同社は起死回生の戦略「大戦略プロジェクト」を打ち出します。まずは、物流・購買など重複業務をセンターとして集約することで、コストを削減。そして、2001年から顧客管理システム「SPR(Sales Process Reengineering)」を導入します。筆者は何度か同社からSPRについてヒアリングの機会を頂きましたが、これをまとめれば、SPRとはITを活用した営業システムと言えます。
ITを活用したというのは、データに基づいているとも置き換えることができます。たとえば、ある企業にコピー機が設置されており、そろそろトナーが切れるタイミングであったとします。近年のコピー機はトナーがどれだけ残っているのかインターネット経由で確認できるようになっているので、トナー消耗時期を予想することができます。そして、そのデータに基づき、顧客にトナー交換およびプラスアルファを提案できれば、受注確度は高まります。ただし、これをいちいち人間が手作業で確認していては、途方もなく時間がかかるので、ITによってこうしたデータ収集をして、受注確度を上げる、これがSPRの考え方です。2003年以降、営業利益が大幅に上昇していますが、これがセンター化、SPRといった戦略が奏功し、生産性が大幅に向上しました。
最初の疑問にもどって、IT投資の効果とは何でしょうか?いままでの議論を踏まえれば、答えは明白です。セキュリティや規制対応など、どうしても必要なIT投資もありますが、基本的にIT投資の目的は生産性の向上だと筆者は考えています。これは冒頭に指摘したタビュレーティングマシン以来、変わらないコンセプトといえるでしょう。
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